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第1話「異世界にようこそ」


「反応してよ!!」


大きな声で俺は目を開いた。

しかし、見えたのは部屋の天井ではなく真っ白の体。

なんでだろう、自分の体が見える。

しかも傍では母親が涙を流しているのだ。


「あなたっ!今すぐ救急車呼んで」


なぜ自分の体が見えているのか、そしてその傍らで母親が泣いているのか

結論にたどり着くためには十分な材料だった。


俺は死んだ。

何が原因かもわからず、死んだのだ。

18歳。

近所の人たちからはいろいろな憶測をされてしまう年齢だろう。

しかし、死んだと悟ってしまった以上何もできない。


俺の人生、静かでつまらなかったな。


そう思った瞬間、

見える景色すべてが黒色に染まった。

もう何も浮かばない、考えられない。


それからは一瞬のことだったのかもしれない。

気づくとそこは、先ほどまでの悲しい光景ではなく、

ろうそく1本で照らされた薄暗く狭い部屋だった。

一体何が起きたんだ。


部屋には木製と思われる椅子と机、小さな窓のある扉が一つあるだけ。

正直、牢獄といってもおかしくはないほど何もない。

とりあえず座っていても仕方がない、この部屋から出よう。


その小さな窓から外を覗くと、岩肌がむき出しになっている真っ暗な廊下が奥に続いているだけに見える。


「ここはどこなんだ?俺は死んだんじゃないのか」


思わず独り言をこぼしてしまった。

何してるんだ、死んだとかここはどことか今気にしても仕方がないだろ。

早く出よう。


扉に手を伸ばしたその時。


「あの女が来るぞ!!早く逃げろ!」


廊下の奥から声が聞こえた。

それもかなり大きな声で。

声というより、叫び声に近いかもしれない。


伸ばした手を引き、再び窓から廊下の奥を見てみるとそこには、

目を疑うものが見えた。


目は青く光り、

体から赤色のオーラを放ち、頭の上には魔法陣のようなものを浮かべて、

誰が見ても異質と思える風貌の赤髪の女性が立っていた。


「弱すぎる。」

「これで王国防衛とはよく言ったものだな」


女性にしては低めと感じる声。

あまりにも情報量が多く困惑していると、


「ん?」


やばい。

目が合ってしまった。


先ほどまでは恐れのような感情はあまりわいていなかったはず。

でも、目が合った瞬間感じた。


「殺される」


足音がこちらにゆっくりと近づいてくる。

カタッ、カタッとその音は確実に近くなってくる。


体が動かない。

動け。早く動け。

殺される。


「中に誰かいるのか?」


いる。

でも反応なんかできるわけない。

このままやり過ごそう。


「もしいるなら少し扉から離れろ。死ぬぞ」


俺は無言でその声に従うしかなかった。


扉から距離をとってまもなく、

爆音とともに辺り一面真っ赤になった。


あまりに規模の大きい光と音に驚き、

その場に目を瞑り、しゃがみ込むことしか出来なかった。



5分ほど経っただろうか。

音も静まり、目を閉じていても光は感じなくなった。


よし、やり過ごした。

俺は完全に安心していた。

何も警戒することなく目を大きくあけた。


すると、そこには先ほどまで殺気溢れる女性だったはずの赤髪の女性が立っていた。

でもなぜだろう。

心が落ち着いてくる。


その女性は声を出せずにいる俺を見てニヤリと笑い、

耳元に近づき、ただ一言囁いた。


「異世界にようこそ」と。



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