第8話 新たな一歩
事件が終わり、氷川光一警部は警察署の自室で資料を見つめ返していた。数々の証拠と証言が、事件の真実を浮き彫りにしていたが、その背後にある人間関係の複雑さもまた明らかになった。捜査の疲れが彼の顔に現れていたが、達成感も同時に感じられた。
そこに中原淳一警部が雑誌を手にやってきた。「氷川さん、これを見てください。南山さんの店『南の島』が新しいスタートを切ったようです。」雑誌には、新店長として佐野恭大が紹介されており、新メニューの「佐野チキンシチュー」が特集されていた。
「新メニューですか。興味深いですね。」氷川は雑誌を手に取り、記事を読み始めた。
「行ってみましょうよ。」田宮晶子刑事が明るい声で提案した。「事件も解決しましたし、みんなでリフレッシュしましょう。」
「そうですね。行きましょう。」氷川は微笑み、皆に賛同の意を示した。
数日後、氷川たちは「南の島」を訪れた。店に入ると、佐野と高岡が温かく出迎えてくれた。
「氷川警部、ようこそいらっしゃいました。」佐野が深くお辞儀をした。「南山さんの意思を継ぎ、この店を立派に経営していきます。そして、新メニューもぜひご賞味ください。」
「ありがとうございます。楽しみにしています。」氷川は微笑み返した。
高岡も笑顔で話しかけた。「南山さんから教わったことを胸に、これからも精進していきます。未熟な料理人を良い料理人に育てることが私の目標です。」
席に着いた氷川たちは、早速新メニューを注文した。しばらくすると、佐野自らがチキンシチューを運んできた。シチューの香りが立ち込め、食欲をそそる。
「これは素晴らしいですね。」中原が感嘆の声を上げた。「鶏肉とシチューの組み合わせが絶妙です。」
「本当に美味しいです。」田宮も笑顔で続けた。「南山さんの精神がここに生き続けている感じがします。」
氷川も一口シチューを味わい、深く頷いた。「確かに。佐野さん、高岡さん、あなたたちの努力が実を結んでいますね。南山さんもきっと喜んでいることでしょう。」
佐野と高岡は感謝の意を込めて微笑んだ。「ありがとうございます。これからも精進してまいります。」
食事を楽しみながら、氷川たちは次の捜査についても話し合った。「さて、次はどこの料理店を調査することになるのか、楽しみですね。」氷川が言うと、皆が笑顔で頷いた。
事件は解決したが、新たな挑戦が彼らを待っている。南山の教えを胸に、氷川たちは次の捜査へと意気込んでいた。