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第5話 フライパンの真実

氷川光一警部とその部下、中原淳一警部と田宮晶子刑事は、南山宗吾の死の真相を探るため、まず水原鉄鋼という会社に向かった。水原鉄鋼は、南山が毎年特注で頼んでいたフライパンを製作していることで知られていた。


到着すると、彼らは工場の中にあるオフィスに通された。出迎えたのは、工場長の水原浩三だった。水原は落ち着いた表情で彼らを迎え、丁寧に話を始めた。


「水原さん、南山さんが特注で頼んでいたフライパンについてお聞きしたいのですが」と氷川が切り出す。


「南山さんは毎年一回、特別なフライパンを注文されていました。そのフライパンには彼の店のマークが刻まれていて、我々が一年に一度作るものです。彼が指定するデザインと素材で、非常に高品質なものでした」と水原は説明した。


「そのフライパンには特別な意味があるのでしょうか?」と田宮が尋ねた。


「それについては知りません。ただ、毎回丁寧に作らせていただいているだけです」と水原は首を振った。


工場での聞き込みが終わると、氷川たちは南山が経営していたレストラン「南の島」に向かった。到着すると、店内は賑わっており、客たちが食事を楽しんでいる様子だった。彼らは店内の雰囲気を感じ取りつつ、未熟な料理人たちに話を聞くことにした。


まず、厨房で働く若い料理人たちに南山の特注フライパンについて尋ねたが、誰もその特別な意味については知らなかった。話を聞く中で、南山が弟子たちに厳しくも愛情深く指導していたことが伺えた。


「これでは十分な情報が得られませんね」と中原が不満そうに言った。


「せっかくだから南山さんの料理を味わってみよう。何か手がかりが得られるかもしれない」と田宮が提案した。


氷川たちは南山の代表作であるカレーオムライスを注文した。料理が運ばれてくると、その香りと見た目だけで一流の技が感じられた。


「これは絶品だ」と氷川は感嘆の声を上げた。「南山さんが一流と呼ばれる理由がよくわかる。」


その時、店内が少しざわつき始めた。入り口を見ると、一人の男性が入店してきた。彼は佐野恭大、南山の一番弟子で、背中には特注のフライパンを背負っていた。


氷川は佐野に近づき、丁寧に挨拶をしてから質問を始めた。「佐野さん、このフライパンについてお聞きしたいのですが。」


佐野は一瞬戸惑った表情を見せたが、すぐに落ち着きを取り戻し話し始めた。「このフライパンは、一人前になった証として南山さんが弟子に贈るものです。毎年最も成長した弟子にこのフライパンが贈れるんです。」


「それで、今年は誰に渡す予定だったのでしょうか?」と田宮が尋ねた。

「えっと、確か....」

「南山さんからのメールには、今年は邦方竜紀に渡す予定だったと書かれていました」と佐野は答えた。


「邦方竜紀…」氷川はその名前を聞いて何かが繋がる感覚を覚えた。「なるほど、これは重要な手がかりだ。」


佐野に礼を言い、氷川たちは店を後にした。フライパンの意味と、それを邦方竜紀に渡す予定だったという情報は、事件の核心に迫る重要な手がかりとなるだろう。


「次は邦方竜紀に聞き込みをする必要がありますね」と中原が言った。


「そうだな」と氷川は頷いた。「この手がかりをもとに、さらに捜査を進めよう。」


氷川たちは再び捜査本部に戻り、今回得た情報をもとに次の捜査計画を立てるための準備を始めた。事件の真相に一歩近づいたことで、彼らの士気はさらに高まっていた。

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