5にゃ
吾輩はレベッカたちの家に着くとようやく食事にありつけた。
と言っても、野菜の葉っぱがちょぴっとだけ入ったスープだった。
もちろん、ネギのようなものは入っていないのは確認済みである。
正直、いつもの吾輩ではとても満足出来るものではなかった。
だが、空腹の吾輩にはたまらなくうまかった。
食事の後は、その借りを返すためレベッカと遊んでやった。
「一宿一飯の恩義」というからな、吾輩は恩知らずではないのだ。
いつもの公園の子どもと遊ぶように体をモフモフさせてやった。
サービスで尻尾パシパシもしてあげたのである。
しばらくレベッカは吾輩に夢中になっていた。
しかし、吾輩のぬくもりのせいか、途中からまぶたが閉じ始めた。
その数分後には、そのまま床に眠ってしまった。
「レベッカ?」
隣の部屋にいたダニエルがこちらにやってきた。
「なんだ、寝てしまったのか。仕方がないな」
そういってダニエルは床で寝ているレベッカを静かに持ち上げた。
そして、そのままレベッカの寝床らしき所に運んで行った。
「それにしてもこいつは何だろうな?」
ダニエルは吾輩を見つめながらつぶやく。
「まあいい、お前の寝床も用意した。そこのカゴを使え」
ダニエルは部屋の端にあるカゴを指さしながら言った。
吾輩は指示されたカゴに近づき、そのままそのカゴに入った。
そのカゴの底には布が敷いてあり、なかなか悪くない状態だった。
意外と気が利くな、ダニエル。褒めてやろう。
吾輩はダニエルに賞賛のニャーをかけてやった。
「意外と賢いんだな、まあいい、レベッカを起こすなよ」
そういってダニエルは元の部屋に戻っていった。
一人になった吾輩は改めて今の状況について考えてみた。
そしてこの吾輩の天才的な頭脳が導き出した可能性は以下の3つである。
・瞬間移動
・タイムスリップ
・異世界転移
1つ目はあの箱に入ったことにより別の場所に移動したという可能性である。
あんな金色の実がなる木など聞いたことがないが、世界は広い。
吾輩が知らないだけで、世界的には珍しいものではないのかもしれない。
2つ目のタイムスリップとは、ここが過去の「コシガヤ」である可能性だ。
吾輩の時代では森ではなかったが、昔は森だったのかもしれない。
さすがの吾輩も「コシガヤ」の歴史にはあまり詳しくないのである。
ただ、昔の「コシガヤ」にレベッカといった名前の人間がいたかは疑わしい。
そして3つ目の異世界転移とは、ここが別の世界であるということだ。
吾輩もそれほど詳しくがないが、別の世界に行くのは珍しくないらしい。
死んだ際に別の世界に生まれ変わったり、突然別の世界に呼び出されたりする。
そういう経験をしている人間は少なくないらしい。
と言っても公園にいた子どもの話なので、信憑性は高くないのだが。
とにかく今の吾輩の一番の問題は、情報が足りていないことである。
この天才的頭脳があっても、情報が少なければ考えられることは限られてしまう。
まず明日は情報を集めてみるか。
そう思い、次の日に備えるため吾輩はそのままカゴの中で眠りについた。