39にゃ
吾輩の体がぶつかった水晶は台座から落ちて、床にぶつかり粉々に割れた。
「バカな!!魔水晶が!!」
「隙だらけだ!」
男は落下した水晶に意識を向けた結果、ランドから目をそらしてしまう。
その瞬間、ランドが男の杖を大剣で真っ二つに切る。
「しまった!わ、吾輩の杖が!」
「これで終わりだ!」
ランドはもう一度、大剣を振りかぶり、男の左腕を切り落とす。
「ぎゃあー!吾輩の腕が!」
左腕を斬られた男は床にのたうち回る。
「こいつで黙ってな!」
床でもがいていた男の腹をランドは思いっきり殴りつける。
男はその痛みと衝撃で気を失って、そのまま床の上に倒れた。
「いやー、さすがクロマル。オレのやりたいことがよくわかったな」
吾輩は胸を張り、ニャーと返事をする。
まあ、あんなに分かりやすい演技であれば、当然であるな!
「本当に助かったぜ。危うく狼に食い殺されるとこだった」
まあ、ランドもかなり強かったのである。
その大剣は伊達ではなかったな。
「さてと、こいつをどうするかな?」
ランドは男も見てそうつぶやく。
『学院』から水晶を盗んだ泥棒である。
この世界には指名手配や賞金首などのルールはないのであろうか?
「まあ、とりあえず冒険者ギルドに連れていくか」
そう言って、ランドは切り落とされた男の左腕を拾う。
そして、その指から指輪を引き抜くと、自分の懐にしまう。
ランド、今こっそりと指輪をくすねたのである!
吾輩はランドをじっと見つめる。
「ん?ああ、せっかく苦労したんだ。ご褒美をもらってもいいだろう?」
ランドは悪びれることもなくそう言った。
……確かにそうであるな!
そもそも吾輩は財宝を探しに来たのであった。
吾輩も価値があるものがないか探すと、近くに割れた水晶のかけらがあった。
これもなかなか価値が高そうである。
そう思い、吾輩は水晶のかけらを口にくわえ、ランドのところに持っていく。
「おっ、確かにそれも高く売れるかもな!」
ランドはにやりと笑う。
吾輩もつられてにやりと笑う。
そうして吾輩とランドは倉庫から金になりそうなものをカバンには詰め込んだ。
そして、気絶した男とともに冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドに着いた吾輩たちは事の顛末を先日の受付嬢に伝えた。
すると、受付嬢は血相を変え、すぐにギルドマスターと連絡を取った。
そして、その者が来るまで、吾輩たちはギルドの応接室でくつろいでいた。
なかなかこのイスはいいであるな。ふかふかである。
吾輩はイスで飛び跳ねて遊び、ランドは出された茶をのんびりと飲んでいた。
すると、部屋にハゲたおっさんが入ってきた。
「よう、ランド!お手柄だったな」
「おう。そう思うんだったら、報酬は弾んでくれよな。ダニエル!」
「はっはっはっ、今回に関してはたっぷり弾んでやるさ!」
どうやらこのおっさんがギルドマスターであるようだな。
どうやら名前はダニエルらしい。吾輩は面倒なので覚えないが。
気のよさそうなおっさんだが、確かにガタイはいいであるな。
「まじかよ!冗談で言ってみただけなんだが……」
「あやつは『学院』から手配書も出ていたなかなかの悪党だったらしい」
「あぁ、『悪魔召喚』を企んでいたみたいだからな」
「『悪魔召喚』だと!あんな男にできるわけが……」
「腕は大したことがなかったが、持っている道具がやばかったな」
その言葉を聞き、ギルドマスターが思い出したように言う。
「そうだった、ランド。指輪2つと魔水晶を出せ」
「しまった!口を滑らせたぜ。だが、タダでは渡せないぜ」
「わかっておる。報酬はきちんと上乗せしよう」
「まあ、ならいいか。ちょっと待ってな」
ランドは懐から指輪2個とカバンから魔水晶のかけらを出す。
「これだよ。水晶の方は割れてるけどな」
「まぁ、しょうがない。水晶と指輪は『学院』から盗まれたものらしい」
「指輪もか!見た目のわりになかなかの大泥棒だな」
ギルドマスターはそれらを受け取ると、少し考え込む。
……どうしたのであろうか?
「なあ、ランド。戦ったお前から見てあの男は強かったか?」
「いや。水晶が厄介だったが、さっきも言った通り、やつ自体はそうではない」
「だとすると、やはりおかしいな?」
「何がおかしいんだ?」
「あの程度の男があの『学院』から魔水晶や指輪を盗めるはずがない」
続きます。




