16にゃ
吾輩は長老の誘いに対して、少し悩んだ後、首を横に振った。
「やはりそうか。なんとなく断られると思っていたわい」
長老は吾輩の返答に、予想通りと言った反応をした。
「おぬしは自由が好きそうな顔をしているからのぉ」
どんな顔であろうか?
だが、吾輩が自由を好むこと自体は間違ってはいない。
実は吾輩はこう言った誘いを受けること自体は初めてではない。
かわいくて天才であるがゆえ、人間から誘われることは少なくなかった。
しかし、吾輩は飼われたことは一度もない。
吾輩が自由でいたいことに深い理由はない。
なにか悲しい過去などがあるわけでもない。
しいて言うのであれば、吾輩は様々な体験をすることを望んでいるからである。
いろいろな場所に行き、いろいろなものを見て、いろいろなものを食べる。
吾輩の生まれ持った何かがそれを求めているのである。
吾輩はこの異世界に来たことを不運だと思っていない。
むしろ、最大の幸運ではないかと思い始めている。
前の世界にはなかった魔法やいなかった魔物がこの世界には存在するのである。
だとすれば、吾輩がやるべきことは1つ。
世界中を旅することである。
そしてそこでいろいろなものを見て、いろいろなものを食べるのである。
それこそが吾輩がこの世界に来た意味ではなかろうか!
そうであるに違いない!!
吾輩が自分の世界から戻ってくると、長老が優しい目で吾輩を見ていた。
「気持ちはどうやら固いようじゃの。」
長老が確認するように尋ね、吾輩は肯定のニャーを返す。
「あいわかった。ではおぬしに代わりの礼をしようではないか」
長老の言葉に吾輩は首をかしげる。
「2・3日以内に行商人がこの村に来ることは知っておるかの?」
ダニエルからその情報は得ていたので、首を縦に振る。
吾輩の作戦はその行商人の荷物にまぎれこむというものだからな。
「さすがじゃの。では、わしが帰りの行商人の荷物におぬしを紛れ込ませよう」
吾輩は長老の言葉を聞いて驚く。
そんなことしても大丈夫なのであろうか?
「ただ、わしができるのはそこまでじゃ。あとはおぬしで何とかするのじゃよ」
その後、吾輩は長老と当日の作戦の話し合いを終え、レベッカの家に戻った。
そして、安っぽい野菜スープを食べ、レベッカと遊んでやり、そして寝た。
食って、遊んで、寝てとそんな日々を何日か過ごす。
そしてついに、待望の行商人がやってくる日が来た。
しかしそれは同時に吾輩とレベッカの別れの日でもあった。
次話は12/19の21:00に更新予定です。