15にゃ
「おぬしはレベッカの恩人を売る気か!このアホが!」
長老がダニエルをしかりつける。
「いやだなぁ、冗談ですよ、冗談」
ダニエルが笑ってごまかそうとする。
こやつは本当に油断ならないな。
「まあ、おそらくだがそんなに高くは売れんよ」
長老は一応、ダニエルの質問に答える。
「なんでだ?珍しいなら高く売れるんじゃないか?」
吾輩も同じことを考える。
売られるのは嫌だが、高く売れないと言われるのもなんか嫌である。
「魔力がないということは、単純に弱いということだ」
そして、長老は吾輩に対して衝撃の言葉をかける。
「こんな弱い魔物みたいなものを買ってどうすると言うんじゃ」
吾輩はショックを受ける。こんなよぼよぼのじじいに弱いといわれるとは、、、
「でもこいつはフォレストウルフと戦って生き残ったんだぜ!」
そうだ、そのとおりである!言ってやれ、ダニエル!
「それはフォレストウルフがこやつを食う気がなかっただけであろう」
どういうことであろうか?
「どういうことだ、長老?」
ダニエルも同じ疑問を持ったのか、長老に尋ねる。
「フォレストウルフは生き物を食らい、その生き物の魔力を自分のものとする」
長老がダニエルの質問に答える。
「魔力が高いものを好んで食らい、逆に魔力が低いものは好まない」
吾輩は嫌な予感がした。
「そして相手の魔力の高さを鼻にある独自の器官で感じ取るそうじゃ」
「さすが長老、長生きなだけあって物知りだな」
「はるか昔に『学院』で習った知識じゃよ。話の腰を折るんでない」
吾輩は長老の次の言葉を聞いたとき、ショックで鳴き声も出なかった。
「じゃから、こやつは何の味もしない栄養もないエサのように感じたのだろう」
吾輩の勇気は一体何だったのか、、、
ただ普通に逃げるだけでよかったのではないか!
「はっはっはっ!よかったな、まずそうなエサに見られて!」
ダニエルが吾輩を見て、大声で笑う。
こやつ、今度という今度は絶対に許さん!
吾輩はダニエルに怒りを込めた体当たりをする。
「なんだ、なんだ、遊んでほしいのか?」
しかし、吾輩の渾身の体当たりはあっさりとダニエルに受け止められる。
「ダニエル!お前がおると本題に入れん。家に戻っておれ」
長老がダニエルにそう告げる。
「はいはい。わかりましたよ。まあ、レベッカの世話もあるしな」
ダニエルはあっさりとそれを受け入れる。
「お前のメシの用意もしておいてやるよ!あの薄いスープだけどな」
そう言い残してダニエルはこの場を去っていった。
「決して悪い奴ではないのじゃがなぁ」
長老は独り言のようにつぶやく。
悪い奴かどうかは知らんが、少なくとも頭は悪いやつだな。
吾輩はダニエルをそう評価した。
「さて本題に入りたいと思うが、良いじゃろうか?」
長老が尋ねてきたので、ニャーと肯定の返事をする。
「まずは礼じゃ。レベッカを助けてくれて本当に感謝しておる」
長老は吾輩に対して深々と頭を下げる。
「この礼はたやすく返せるものではないとわしは思っている」
吾輩としてはうまいメシでもごちそうしてくれれば十分なんだが。
「そこで感謝のしるしとして、わしから一つ提案があるのじゃ」
吾輩は提案の内容が想像できず、首をかしげる。
「おぬしさえ良ければ、この村で我々と暮らさないか?」
次話は12/19の19:00に更新予定です。