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黒猫クロマルの異世界さんぽ  作者: さちかわ
クロマルと村の幼女レベッカ
12/72

12にゃ

吾輩は天才である。

だからこそ勝ち目がない戦いはしないようにしてきた。

戦うときは相手のことをきちんと調べ、弱点を見つけ、そこを狙った。

人間が言う「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」である。多分。


しかし今はこの「犬」の名前ぐらいしかわからない。

やつが吾輩の力がわからないように、また吾輩も奴の力がわからない。

そんな状況でこの作戦を行うのは非常に危険である。

吾輩の天才的な脳も成功の確率は低いと言っている。


この作戦を成功させるのに必要なのは、あとは勇気だけである。

おそらくこの世界は異世界なのであろう。

そして、なぜか知らないが吾輩は異世界に来てしまった。

帰る方法はわからない。帰れるかもわからない。


であれば、こやつら「魔物」がいるこの世界で生き延びなければならないのだ。

ならばこそ、この作戦を成功できれば吾輩は魔物と戦った「経験」が得られる。

それはこれから吾輩が生きていくうえで大きな武器になるであろう。



吾輩は恐怖を理性で押さえつけ、勇気を奮い立たせる。

そして覚悟を決め、「犬」をにらみつける。

一方、犬は困惑したような表情で吾輩を見ている。

おそらく、吾輩を見くびっているのであろう。しかし、これこそ好機である。


吾輩は少しずつ「犬」の正面に近づく。

「犬」はそれをじっとただ見ている。

吾輩は一気にスピードを上げ、そしてそのままやつの前足に突撃しようとする。


しかしそのときであった。

やつは突然前足を振り上げたかと思うと、そのまま吾輩の体を払いのけた。

吾輩は近くの茂みに吹き飛ばされた。


なんという力だ。話にならないではないか。

吾輩は茂みの中に埋もれながら改めて力の差を感じた。

あの足の力では走って逃げたとても逃げ切れないだろう。

吾輩の命もここまでだったか、、、




しかし「犬」はいつまでたっても吾輩にとどめを刺しに来なかった。

それどころか吾輩の姿を完全に見失っているようだった。


なんだかよくわからんが、今が千載一遇のチャンスである。

そう判断した吾輩は静かに茂みの中から抜け出す。

そして、足音を立てぬようにゆっくりとやつから遠ざかった。



吾輩はやつが見えぬところまで移動した後、ようやく一息つく。

助かったのか、、、?しかし、よくわからんやつだったな。

吾輩はやつの好みには合わなかったのだろうか?

まあ、確かに吾輩は食べてもおいしそうではないからな。

まあ、とにかく吾輩は無事生き残ったのだ!

さすが吾輩!!勇気があって運もある天才猫だな!!



さらに歩き続けると、とある場所にたどり着く。

それはあのくそまずい金色リンゴがなっている巨木である。

吾輩が辺りを見回すと、吾輩が昨日かじった金色リンゴが転がっていた。


ここからであれば、村への道がわかるかもしれないな。

吾輩は昨日の記憶をなんとか引っ張り出す。

そして、その記憶をもとに、吾輩の天才的な頭脳で考える。

おそらくこっちにまっすぐ行けばいいはずだ!

そう判断し、吾輩は辺りを警戒しながら歩みを進めた。



吾輩がレベッカと出会った小川に着くころにはすでに朝になっていた。

吾輩は小川を見つけると、前と同じように全速力で走る。

そして、その勢いで小川に顔を突っ込んだ。


生き返るであるな!

吾輩は生き残れたことを改めて実感した。

そして小川から顔を上げ、顔の水しぶきを飛ばし、目を開けると、


泣きそうな顔をしたレベッカがいた。

あとついでにダニエルもいた。

次話は12/17の17:00に更新予定です。

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