天才少年
扉の奥は薄暗くさらに奥へと長い廊下が続いている。扉をこえると廊下が動き出した。わし、おばあさん(たえ)マナベル、レイモンド、黒スーツの3人組は動く廊下でどこかへと運ばれていく。
少し進むと薄暗かったとこから全面ガラス張りに変わった。その廊下は宙に浮いており、目線は下にある機械や人に奪われた。そこは大きな工場……いや、働いている人のほとんどは白衣を着ているから研究員?ということは実験や研究を行う部屋ということか。
「ありゃ下では何を?」
見たこともない機械で何をしているか気になったわしはマナベルにあそこで何をしているか聞いた。わしが聞いて分かるのかは別として……
「あそこでは極秘レベルの研究を……まぁ簡単に言うとドラ○もんに出てくるような道具を作ろうって感じです。国家レベルで!」
「ド、ドラ……!?」
は?開いた口がふさがらない。わしはマナベルと下の機械を交互に見る。そんなことはお構いなく自動で動く床は止まることなくわしらを運ぶ。そしてガラス張りで部屋の天井近くを通っていた廊下はその部屋を通過すると普通の廊下になった。壁や各部屋の扉は近未来的なんだが、さっきのとこと比べると普通に近いということじゃ。
「さぁ、着きました。ここです。」
動く廊下が止まり、マナベルについて少し歩くと目の前にはLFJと大きく書かれた扉があった。
「では中へどうぞ。」
扉が開き、中へ入るとそこはまるでエヴァン○リオンのN○RV本部や宇宙戦艦○マトのメインブリッジを彷彿とさせるような空間が広がっていた。
「すっご~い!」
その光景におばあさん(たえ)が声を上げる。
「そうですか?まぁだいたい私が内装を考えたんですけどね!」
マナベルは嬉しそうにニヤニヤと上がる口角を必死に抑えようとしていた。全然抑えられてないけどな。それよりも部屋に入った時から感じる視線が気になる。この部屋にいる全ての人がわしら2人を見ながらヒソヒソと小声で話している。なんか文句でもあるのか?
「わああああああ!」
大声で叫びながらぶかぶかの白衣を着た小さい子供が突っ込んで来た。ちょうどその子供の頭がわしのみぞおちにすごい勢いで頭突きを食らわす。突然の不意打ちに「うっ!」と顔がゆがむ。突っ込んできた子はわしに抱き着いたまんま顔を上げて、キラキラした目で見てくる。
「長生きしてますか?」
その子は満面の笑みで話しかけてきた。
「してるよ。」
その屈託のない、悪意も感じられない笑顔にわしは素直に答えた。
「いっぱい?普通の人よりいっぱい?」
「そうじゃな。普通の人よりはいっぱい長生きしてるかな。」
「わああああ!」
その子はわしから離れて飛び跳ねながら喜んでいる。何がそんなに嬉しいのだろうか?
「聞きたい事は山ほどあるだろうが、後にしてもらえるか?ベント。」
マナベルがその子供を制止する。その子の名前はベントと言うらしい。ベントはマナベルに元気よく返事をし、飛び跳ねるのをやめた。でもすごくソワソワしながらわしとおばあさん(たえ)を交互に見ている。ベント?そういえばどっかで聞いたことある気がする。
「その子どこかで……?」
「でしょうね。彼はベント。13歳にしてLFJの技術開発局局長をしてもらっています。11歳で大学を卒業した超天才児と当時は言われていまして……テレビなんかで見てご存じかと……。」
そうだ。テレビで話題になっていた。おばあさん(たえ)とテレビを見ながら、今でもすごい子供はいるもんだとか話していた気がする。
「彼の論文を読む機会がありましてね。私がスカウトしてきたんです。」
最近テレビなどでもパタリと見なくなっていた。どんな大人に成長するか楽しみだったんじゃが、見れないのかと思っていたが、こんなところにいたとは。
「じゃあまた後でね〜!」
そう言ってベントはわしらに手を振って、振り返る。近くの机の上に置いてあった誰かのチョコレートを食べながらスキップで立ち去っていった。