目的地
わしらはレイモンドの指さす先を見る。
「ほら!あの1番高いやつ!」
わしらから見えるのは車窓を流れるビル群。その中で1番高いっていうと……
「1番高い……ってスカイタワー!?」
おばあさん(たえ)は目についた1番高い建物の名前を挙げた。そう。わしらから見える1番高い建物といえばこの国のシンボルスカイタワーである。おばあさん(たえ)の答えにレイモンドはニヤリと笑った。
これで分かった。3人を乗せたリムジンはスカイタワーへと向かっていた。
「あなた達、スカイタワーは知ってるわね?」
何を言っているんじゃ?この国で知らないものなどいるはずがないじゃろ!
完成当初は毎日のようにテレビで特集されていたし、その後はスカイタワー周辺にはショッピングモールなどいろいろとでき、その地区は観光客も増えてスカイタワーができる前とは比べ物にならないくらい発展していた。
「いろいろ出来て便利なとこよね!あたしも重宝させてもらってるの!」
確かに便利だし、今や家族で遊びに行くにも若者のデートスポットとしてもスカイタワーへ行く人が増えている。今一番人が集まる場所と言っても過言ではない。しかしそんな人が多いところへわしらを連れて行って何をするつもりなんじゃ?余計に何されるか分からん。そんなことを考えているとレイモンドは不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
「なんであなた達そんな顔してるの?」
「それは……ねぇ……」
「率直に聞く!わしらをどうするつもりなんじゃ?不老不死と知り、わしらで人体実験でもするつもりなんじゃろ!」
わしの直観もあてにならんな。わしは冷や汗をかきながらもレイモンドを睨みつけた。
「そんな怖い顔しないでよぉ!そんな人体実験とか取って食ったりしないわよぉ!そんなこと考えてたなんて逆に怖いわ!あぁ~怖い!」
レイモンドは両腕で自分を抱き、震えた。じゃあなんだ?スカイタワー周辺で買い物でもするわけじゃないだろうし……
「じゃあスカイタワーになんか連れてきて何するつもりじゃ?」
「それは着いてからのお・た・の・し・み♡」
え?キャラが濃すぎてウザい。おばあさん(たえ)なんて、イライラして舌打ちしている。おばあさん(たえ)ってそんな短気じゃったかの?あんまり怒らせないようにしよう。
そんなこんなでスカイタワー周辺に着いていた。
「もう着くわよ。」
レイモンドがそういうと車はスカイタワーの地下駐車場へと入って行った。駐車場をグルっと周り奥の方に向かっていく。そしてさらに奥にいくと、一つだけ駐車スペースにがあった。車止めもあるからバックで入れるのかと思いきや、そのままリムジンは頭から入り止まった。目の前はただの壁である。ついたのかと思い、降りようとするとレイモンドに止められた。
「着いたんじゃないのか?」
「まぁ黙って見てなさい。」
レイモンドは気にすることなくシャンパンを飲んでいる。わしらはこんなとこに連れてこられて落ち着かない。
すると車の前方の壁が突然左右に割れる。これは壁ではなく扉だ。さらに二枚扉で奥では上下に開いている。それぞれの扉は重厚で見た感じ厚さは30cmずつぐらいありそうだ。扉が開くと、車止めも下がったのか乗っているリムジンがその扉の中へと進んで行く。
「な、なんじゃこりゃ!?」
わしが目を見開いて驚いていると、その様子を見てレイモンドが笑いをこらえているのが分かった。
扉の中は乗っているリムジンが一台入るぐらいの大きさの部屋となっていた。その部屋の中央で再度リムジンは止まった。するとなんかその部屋自体が動き出した気がする。これは巨大なエレベーターか?なんか下に下がって行っている気がする。わしらは何がなんだか分からず、焦るばかりだった。
「こ、これは!?」
わしがあたふたしているとレイモンドが喋りだす。
「フフフ……ここまで着いて来てくれた事、感謝するわ!いまから行くところはスカイタワーの地下よ!」
「地下って……スカイタワーの地下には地下鉄が……」
「それのさ・ら・に地下!そこがあたし達、LFJの総本部よ!」
レイモンドは超自慢気にドヤ顔を披露している。そんなものがあるなんて……わしは口をあけたまま停止していた。