おじいさんとおばあさん
【第一章:脅かされる平和な世界】はじまり
むかしむかしおじいさんとおばあさんがいました。
……そして現在、おじいさんとおばあさんは元気に生きていました。
高層ビルが建ち並び、携帯電話が普及し、もうすぐ空飛ぶ車が自由に行き来するであろう時代がやってきていた。
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わしは行きつけのカジノでいつものように遊んでいた。
「わっはっはっはっ!また、わしの勝ちじゃな!」
わしは日本一有名なおじいさんと言っても過言ではないだろう。みんな知っているけど誰も知らない……
名前は山本 源蔵。歳は・・・忘れた。最近の趣味はギャンブルじゃな。
いつだったか、光る竹を割った時にたまたま見つけた女の子。「かぐや」と名づけてそれは大事に大事に育て上げた。実は月に帰らねばならないと告げられ、その時に『不老不死の薬』というのをもらったんじゃ。
現在に語り継がれている物語では飲んでいないと伝えられているが、実はばあさんと2人飲んじゃった。
だから58歳の時の姿でこの時代まで生き続けている。不老っていってももう大分老けているがな……
「おらっ!これでどうじゃ!?またわしの勝ちじゃろ!わっはっはっはっ!」
「っ!このじじぃ強すぎる!」
なんでわしがこんなにギャンブルに強いかというと、元々持っていたのか長年生きてきて身に付いたのか分からないが、直観力?第六感ってやつが普通のやつより鋭かったんじゃ。それに昔から……
「へっへっへ。次は俺が勝たせてもらうぜ!じぃさん!(これを入れ替えていまえば……)」
「ごるあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
「いたっ。いたたたた!何すんだじじぃ!?」
わしは勝負していた相手の男の腕をつかみ、かなり強く握って締め上げていた。
「そりゃこっちのセリフじゃ!お天道様が見逃してもワシは絶対に見逃さんぞ!」
締め上げている男の胸ぐらをつかみ、身体を揺らすとその男の服からイカサマに使用しようとしていたモノがバタバタと落ちてきた。
「なんじゃこれは?あぁ!!」
「ちっ!知らねえよ!」
しらばっくれる男にイラっときたわしは締め上げてた腕にさらに力を加えた。
「い、いたい!痛いって!」
男に抵抗を許さず、近くにいた警備員に突き出した。
わしは昔から腕っぷしは強かった。まぁ昔は遊びと言ったら相撲ばっかりしてたし、ケンカなんて日常茶飯事じゃったからな。それにイカサマを見破れたのは直観力があったからではない。目がかなり良かったんじゃ。なのでカジノではかなりの有名人。ギャンブルが強いのはもちろん、イカサマを見抜く力で経営側からも重宝されている。この前も勝負しようとしていた相手がイカサマをしようとしたから捕まえたら、それが大きなイカサマグループだったらしくてなんか感謝された。
今も連行される男が騒ぐから奥からオーナーが出てきた。そして男を連行している警備員に何かを言ってこっちに歩いてくる。
「源蔵さん、今日もありがとうございました。」
「いいって、いいって!」
イカサマを捕まえていたら、いつの間にかオーナーと仲良くなっていた。でも男には興味ないし、両脇にいるコンパニオンのカワイイ女の子に好かれるほうが今は大事だ。
「ねぇ今の見た?僕、強いでしょ?かっこいいでしょ?ねっ?ねっ?」
「いつも通りかっこよかったわ!げんちゃん!チュッ♡」
右の子が頬にキスをしてきた。
「悪者やっつけたご褒美。チュッ♡」
左の子も反対の頬にキスをしてきた。
「わーい!わーい!僕、君たちの為にもっとがんばりゅ!」
カワイイ子の前だと赤ちゃん言葉になっちゃう。オーナーがなんか引いてるけど関係ない。だって好きなんだもん。女の子。
その頃おばあさんは川へ洗濯に……
ではなく、川を越えた先にある大きな美容整形外科病院にきていた。
「次はどこをします?」
わたしは次の整形場所の相談を行きつけの美容外科のイケメン先生にしていた。
「もう全身しちゃってますから、整形する場所なんてどこにもないですよ。」
さわやかな見た目で男性アイドルにいそうな顔のイケメン先生は困ったようにひきつった笑顔でそう言ってきた。
わたしは日本一有名なおばあさんと言っても過言ではないだろう。誰にもおばあさんとは言わせない。
名前は山本 たえ。歳は……忘れたわ。趣味は整形。誰だっていくつになっても若くいたいじゃない。わたしはかぐやからもらった『不老不死の薬』を飲み、今の時代まで生きてきたの。
それに昔、村を襲っていた鬼達を退治した息子の桃太郎がその住処から持ち帰った金銀財宝と、おじいさんのギャンブルで稼いだお金で整形……若さを手にいれたわ。見た目はまだまだナンパもされるくらいだから20代っていってもおかしくないわ。
「先生の目はどこについてるんですか!?これは節穴ですか?」
わたしは衝動的に先生の目に2本の指をたてた。
「ノアァオォォ〜!!!!」
先生は声にならない声で悶絶していた。
「よく見なさいよ!こことか、こことか、まだまだいろいろあるじゃない!それにまたアップデートもしていかなきゃいけないし。」
わたしは身体や顔を指さしながら、イケメン先生に詰め寄った。
「そんな事言ってもですね。たえさん……」
涙と汗をぬぐいながら、イケメン先生はわたしの地雷を踏んだ。さっきの2本の指を今度はイケメン先生の鼻の穴に突っ込んだ。
「っ!」
「せ・ん・せ・い!いつも言ってますわよねっ!」
指をイケメン先生の鼻の穴に突っ込んだまま再度詰め寄った。
「ふ、ふぁい……」
イケメン先生はわたしの迫力に気圧されたのか目に涙が浮かんでる。
「わたしのことはレイカちゃんって呼んでって!」
なんで「レイカちゃん」って呼んでほしいかって?そんなの可愛いからに決まってるじゃない。わたしはイケメン先生の鼻から指を抜いた。
「でもねレ、レイカさん……この前、整形したばっかりじゃないですか!な、何と言われようともうしませんからね!」
逆に今度はイケメン先生が鼻を抑えながら、わたしに詰め寄ってきた。
「なんですって!?」
わたしも負けじと詰め寄って、額がぶつかった。お互いにらみ合いながらもイケメン先生は内線の受話器を取った。
「は、早く、引き取ってもらって!」
すると2人がいる診察室の扉が開き数人のがたいの良い男達が入ってきた。
「な、何よ!あんた達!」
いきなりの事だったのでわたしは少しびっくりして、声がひきつっていた。
「失礼します。」
そう言って男達はわたしの腕をつかんで、持ち上げた。
「あっ、男性のぬくもり♡……じゃなくて!あんた達!ちょ、ちょっと離しなさいよ!ま、まって。ね?お願いだから!ちょ、ちょっとぉぉ〜〜!!!」
わたしはそのまま診察室から連れ出されて、病院の外へと放り投げられた。
「何よ!この……イケメンやろぉぉ!!」
わたしは病院に向かって叫んだ。
「お前それ悪口か?」
後ろから聞こえたその声はいつも聞いている人の声だった。振り返るとそこにはギャンブル帰りのおじいさんが、少し引いた目でこっちを見て立っていた。
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