タイムマシーン・ジャック
わしはベントに手を引かれ部屋を出た。そのまま廊下を歩きエレベーターで下へ降り、タイムマシーン・ジャックのある部屋へとやってきた。そこでは数十人の研究員らしい白衣を着た人と作業着を着た人たちが忙しそうに何かをしている。
「こっちだよ!ゲンさん!」
手を引くベントはその勢いのままわしを部屋の中央へと連れていかれる。
「これかぁ」
わしの目の前には戦闘機っぽい、でも一回り小さいサイズの飛行機タイプの乗り物がある。戦闘機に乗るなんて男の子の夢だよなぁって、戦闘機ができたころからずっとわしはじいさんだったわ。でも一度は乗ってみたい気持ちもある。
ベントはタイムマシーン・ジャックに目を奪われて立ち尽くしているわしをいったんその場に置いて、近くの作業着を着ていた人物に話しかけて戻ってきた。
「いいって!それじゃ説明するから、乗って!」
今度はベントがわしを後ろから押してくる。そのままコックピットへつながる階段を駆け上って戦闘機に乗り込んだ。
「おぉぉぉ。」
これが飛行機か。たくさんスイッチがある。たくさんボタンがある。レバーがある。かっこいい。広さ的には少し大きめのトイレぐらいのサイズじゃな。自分の座っているシートの後ろにもう一つシートがあり、2人乗りだということが分かる。
後ろの席からベントが顔を出す。
「かっこいいでしょ~!」
ベントはすごい笑顔で見てくる。
「そのレバーは引っ張ったら上に、押したら下に行く。飛んでないと意味ないよ。」
ジェスチャーを交えて説明をしてくれるが、シートの背もたれに足がガンガン当たって、すこしうるさいが、命にかかわることなどでベントの説明を黙って聞く。
「エンジンはここのスイッチを全部上げて、全体に電気を通してからこのボタンを押すの。」
「なるほど。」
「まだエンジンはかけないで。でもそのスイッチは全部上げていいよ。」
わしは言われた通りベントが指さす先にある4つ並んだスイッチをすべて上にあげる。すると備え付けられているコンピューターが動き出し、わしの目線の高さにあるモニターも起動する。
「そしたらその前にある……そのケース!そのボタン押して。」
わしの目の前、操縦席の中央に半球の何も入っていないケースがある。その半球のちょっと下にスイッチがある。それを押せということなどで、わしはそのボタンを恐る恐る押す。するとケースがパカッと開いた。
「そこに行きたい時代のものを入れたら、行けるようになるの!」
なるほど。ということはこのケースに入る大きさのモノじゃないといけないということか。
「それで、ここに行きたい場所の座標を入力するの。」
わしは一通りベントから説明を受けた。まだ自信はないが動かすことは可能だろう。ちなみに後ろのシートの周りに操縦に関するスイッチなどは何もついてないらしい。
説明が終わるとベントはどこから出したか分からないタブレットを持っていた。その画面に向かって話しかけている。
「マナリン!マナリン!こちらベント!」