有名な息子
「ところでたえさん?」
「はい?」
わたしはベントに手を引かれていくおじいさん(源蔵)を見送り、部屋に残る。そこにはわたしとマナベル、レイモンドがいる。少し離れたところに黒スーツの3人が黙って立っている。
「息子さんの事なんですが、どんな人なんですか?」
マナベルが私たちの子について聞いてきた。レイモンドも興味があるのかわたしを見ている。
「わたしたちには長いこと子供ができなくてね。血の繋がった子じゃないんですけど……あれは神様が私たちに与えてくれた奇跡だったんだと思うわ。マナベルさんもレイちゃんも知ってると思うけど……。」
「え?私も知ってる?」
マナベルは驚いた顔をした。確かに今日初めてあった不老不死の夫婦の子供を知ってるっていわれても心当たりなんて絶対ないものね。でも日本にいたら誰もがしっていると思う。それ程息子は有名であった。
「知りません?桃太郎?」
「桃太郎?……って私が知ってるのは子供の時に絵本で読んだ、桃から生まれた桃太郎ぐらいしか……」
マナベルは頭をかきながら鼻で笑い答えた。レイモンドは顎に手をあてて他の桃太郎を思い浮かべようとしている。
「そう。その桃太郎!」
マナベルとレイモンドは2人ともわたしを見て驚愕している。
「桃太郎ってあの桃太郎よね!?」
「えっ?桃太郎って実在したんですか!?」
「えぇ。初めての子供でしたのでそれは大事に大事に育てました。まだあれは不老不死になる前でしたけどね。」
わたしはおじいさん(源蔵)と桃太郎と過ごした日々を思い出す。あの頃は楽しかった。
「私たちが見てきた中ではあの子が1番強かったわ。」
わたしはその当時のことをマナベルとレイモンドに話した。
「そんなことが……では絵本に描いてあるのは……」
「あながち間違ってはいないわね。」
「もう驚く事ばっかり!」
そんな話をしているとモニターからマナベルを呼ぶ声が聞こえた。