時間跳躍装置
「それであなたがたが出会った中で強い人はいませんでしたか?例えば緑色の化け物に変身する科学者やパワードスーツを作り出す実業家……神を失格になった男とか!」
映画のアベン○ャーズに影響され過ぎじゃろ。あんなのはフィクションで現実にいたらすでに超有名人だろうに。
「いや、いないなぁ。」
長年生きてきたけど、そんな人間離れした超人を見たことがない。
「そうですか……。」
マナベルは明らかに落胆し、肩を落としている。
「あっ!いや、でも……。」
そんな中、源蔵は1人だけ頭に浮かんだ。
「いるんですね?」
一段とマナベルの目が輝いてわしに近づいてくる。
「誰かいた?」
心当たりがなさそうなおばあさん(たえ)にわしは答える。
「ほら!わしらの息子。」
「あ、あの子!確かにあの子は強かったわねぇ。」
「息子さんですか?そんに強かったんですか?」
「あぁ。わしの知る中で1番強いと思う。じゃが、それも昔の話だからな……。」
そう。強いといってもすでにこの世にはいない。だから力になってほしくても無理だ。確かにあの子がいたらどうにかしてくれたかもしれないが……。
「過去に実在したんですね!それならどうにかなります!ベント、アレを!」
「はーい。」
どうにかなるとはどういうことじゃ?ベントはマナベルから指示を受けると目の前のパソコンをいじり始めた。
「みなさ~ん!前のモニターをご覧ください!みんなのがんばりでとうとう完成しました!」
モニターには何やら工場のような場所が映っている。そこには戦闘機のような飛行機が映し出された。
「見て、聞いて驚かないでよ!完成したのは……デデデデッデデーン!タイムマシーン!」
施設内から歓声があがった。
「ホントに完成したのね!」
レイモンドは目を見開いて開いた口がふさがらないようだ。
「時間跳躍装置完備。ステルス機能付き2人乗り戦闘機。ジャックだ!」
マナベルはどうだと言わんばかりに胸をはり、ドヤ顔が止まらない。
「「「「ジャック?」」」」
いや、なんでレイモンドや開発に携わっていたはずのベントまで名前にピンときてないんじゃ?ジャックシステムとかそういうのを使ったんじゃないのか?知らんけど。
「名前は今付けた!適当に!」
いや適当かい!そりゃ誰もピンとこないはずじゃ。それに総司令官のいうことだから、これで決定なんだろう。タイムマシーン・ジャック。それは周りで作業している作業員や研究員と比べるとテレビで見ていた戦闘機よりコンパクトな感じがした。
「時間跳躍装置。いわゆるタイムマシーンです。これを使えば過去から人を連れてくることが出来るんですよ。」
マナベルは笑いが止まらないのか、ずっとニヤニヤしている。確かにこんなもの完成したらわしでもニヤニヤが止まらないだろう。
「タイムマシーンなら未来へ行って結果を見てくればいいじゃない!」
確かにそうじゃ。誰か結果を見てきたらいい。いい結果なら万々歳だし、悪い結果ならどこかでその未来を変える動きをしたらいい。するとベントがそのタイムマシーンの説明を始める。
「それは無理!行きたい時代のモノを媒介にして、それを元に時間跳躍するんだ。未来のモノは今の時代に存在しないから未来に行く事は出来ないんだよ。」
「え~っと……。」
おばあさん(たえ)はあまり理解できていないようだ。
「要するに過去へは行けるが、今現在より先の未来にはいけないということです。」
マナベルが簡単に説明する。
「なるほど……。」
わしは理解したが、おばあさん(たえ)はまだしっかりと理解していないのかうぅ~んとうなっている。
「それではさっそくですが、源蔵さん!」
マナベルは真剣な顔でわしに迫ってくる。
「な、なにか!?」
「あなたには過去へ行ってお子さんを連れてきてほしいのです!」
「なんでワシが!?」
そんなことわしじゃなくてもできるだろ!タイムマシーンに興味はあるが、まだ恐怖の方が勝っている。
「お子さんの顔を知っているのはココではあなたとたえさんだけなんです。ですがたえさんは女性ですし、なんせジャックの事をよく分かっていないようなので危険です。なので源蔵さんに!」
マナベルがすごい形相で迫ってくる。確かにわしらしかあの子の顔をしらない。絵本の顔とは全然違うしな。わしが行かなかったら、代わりになるのはおばあさん(たえ)。おばあさん(たえ)にそんな危険なことはさせられない。
「分かった。じゃあもう1人!2人乗りなんだから、もう1人行けるでしょ!」
「無理です。帰りは2人なんですよ!こっちから2人で行ったら、どっちか1人その時代に置き去りですよ!」
うっ、確かに。そう言われると何も反論できん。
「し、仕方ない。分かった……。」
わしはしぶしぶ了承した。
「それでは操縦の仕方はベントから。」
「ゲンさん!こっち、こっち!」
え、待って。もう?わしは心の準備ができないままベントに手を引かれ、タイムマシーン・ジャックのある部屋へと連れていかれる。
おばさん(たえ)はその様子をモニターで見守るしかなかった。