呼ばれた理由 2
「それでなぜワシらに?」
そこが疑問だ。こんな国家レベルの危機的状況に老夫婦の家を訪ねるなんて。確実に頼る相手を間違っているだろう。
「それなんですが、まず最初に見てもらった映像。これから分かる事が2つあります。まず人間ではない可能性が高い。」
確かに映像を見た印象では映っていた3人は見た目は人間ぽかったが、口調から人間に恨みのある妖怪とかになるのか?まさかな。こんだけ生きてきた中で一度も見たことないし。
「飛行機を墜落させたり、船を沈めるなんて人間にできるとは思えない。」
「自爆テロって可能性も……。」
「今セキュリティはかなりのものになっています。爆発物を持って潜入する事は不可能でしょう。それにどちらも外からの衝撃で破壊されている。」
「じゃあミサイルとか?」
「それもないでしょう。ミサイルならレーダーで観測できる。しかし、調べた結果何も観測されずに爆破事故は起こっていた。観測されないほど小さいもので観測されないほど速いものとなる・・・」
そんなものは現実にはない。と思うが、裏では分からない。日本でさえこんな施設があるのだ。大国と呼ばれる国にはそんな武器があってもおかしくはないんじゃないか?
「だから今は平和協定で……そんな事したら全ての国を敵に回す事になるわ。」
確かに他国が全世界を敵に回してまで、日本にこんなことをするメリットがない。それに同時爆破事故は全世界でニュースになり、各国から連絡があり日本政府はその対応に追われているらしい。全世界で犯人探しをしているようだが下手なことは言えない。せっかく平和協定を結んだのに、全世界で戦争が始まってしまうだろう。だからあの映像もまだ総理の元に送られてきただけで他の国には知られていない。今のところ公開するつもりもないようだ。
「それにミサイルなら残骸が残っているはずなんですが、それもなかったと報告を受けています。」
重苦しい空気が流れる。みんな黙ってしまい、遠くでキーボードをカタカタと打っている音が聞こえる。そんな沈黙を破ったのもマナベルであった。
「それから次に分かる事なのですが、大昔に人間に何かをされ、恨みを晴らすためにこんなことを行っているという事。」
そう。それが一番の問題である。誰かへの個人的な恨みであれば、その対象を排除したらこのテロのようなことは終わるだろう。しかし、対象が全人類ということは人間が絶滅するまで続く可能性がある。
「何十年前か、何百年前か……それは私にも分かりません。」
「それでワシらをここに……」
「えっ?どういうこと?」
おばあさん(たえ)はまだ、なぜ自分たちがここに呼ばれたのか分かっていない様子だ。
「お2人ならどこかで見たことがあるかと思いまして。普通の人間より長生きしているあなた達でしたら……」
「あっ、そういうことね。でも私は見覚えないわ。ゲンちゃんは?」
「わしも……わしより記憶力のいいばあさんが覚えてないなら……力になれなくてすまんな。」
「そうですか。」
マナベルは後ろを振り返り、大きくため息をついた。
「もう一つ。お2人にお聞きしたい事が……。」
マナベルは上の方を見上げ背中でそう言った。言いにくいのかこちらを振り返らずに続ける。
「誰が1番強かったですか!?」
「「はい?」」
マナベルがこちらを振り向く。その目はキラキラ輝いている。隣にはいつのまにか同じく目を輝かせて2人を見ているベントがいた。
「いやね、こちらとしても1年後までただ待っとくだけではつまら……じゃなくて、たのし……でもなく、えぇっと、まぁ……と、とにかくアレなんで、こっちからも強い人材を集めてやつらを迎え撃とうって感じなんですよ!今!」
「それこそ、自衛隊とか警察に任せては?」
そうじゃ。そうじゃ。わしらに頼ったところで、普通のあんちゃんよろちょっとケンカが強いくらいじゃぞ。そんな飛行機や船を破壊するような奴ら相手に太刀打ちできるはずがない。
「表では自衛隊はない事になってますし、飛行機と船を誰にも気づかれずに破壊してくる相手ですよ?警察のような一般人に敵う相手ではありません。」
確かに……って、わしらも一般人なんじゃが。そんな危ないことさせようとするなら早く返してほしいのだが……。