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最恐?治癒魔術師が自重しない。  作者: 大熊 猫
領都ベラルーシからガイド街へ
8/21

第八話 過去と今、そして

4回にわたって毎週水曜日の12時更新してきましたが、書き溜めが続きませんでしたorz


なので、今回を投稿してまた書き溜めします。どこまでかけるか分からないけど。

レストさんから差し出された少し厚い本。

そこには見慣れた文字が書かれている。


「ふむ。これを読めるというのか。君はやっぱり何者だね。」


確かにこれは今世界の言語ではない。

前世界での言語だから、見慣れているし、読める。

今世界では読める人がいなかったのだろう。かなり埃っぽ感じ。

そんなレストさんの問いかけを無視して、本の中身を確認する。


書いてある内容は、日記であった。急いで内容を流し読みで把握する。

どうやら以前に自分以外で、この世界へ移ってきた人間がいたようだ。


=======================================


初めは右も左も分からず、気が付いた時には森の奥底にいて、

魔物に襲われ続けて生死の狭間を何度も彷徨った。


そんな森の奥底で必死で逃げ回っている最中に、ある魔術師に出会った。

その魔術師は「おぬしは魔法の力が溢れている。少しここで学んで練習していくといい。」

といい、魔法と魔術の教えを乞うこととなった。


その後、魔物相手に攻撃魔法を放ちつつ、怪我を負うたびに自分へ治癒魔法をかけ続けた。

そんな生活を続けている中で、教えを乞えた魔術師と魔法の出し方に違いを感じた。

そんな発見を魔術師に問うと。「なるほど。おぬしとイメージの過程が違うのだろう。」と言われた。


そこで魔術師と魔法を繰り出しながら、研究を重ねた。

特に治癒魔法はこの世界では考えられない方法だったらしく、

「おぬしは特異的な思考の持ち主だな。これは大発見じゃよ。」

と魔術師は言い、その魔術師に連れられて一番近くの街へ連れていかれた。


連れていかれた街は、荒廃していた。というよりも戦火の跡が凄まじかった。

魔術師は「今、この世界は戦争の真っただ中だ。犠牲者は数多くて死んでいくものは数知れない。」

といい、自分を教会へ連れていく。


教会には、戦争で傷ついた人々が多くいた。

特に重症者と思われる人はそこらかしこにいて、数人のシスターと思わしき人が

重症者の間を駆け回っている。


魔術師はその中をぐんぐんと進み、もっとも奥にいた老シスターの許へ向かう。

魔術師と老シスターは親しげに話すと、こちらを向きなにやら話始める。


話をしてた魔術師が、

「じゃあ、少し働いて貰おうかの。こっちじゃ。」

といい、老シスターと一緒に歩きだす。


それについて行くと、重傷者が多数いるところだった。

魔術師が「あぬしの治癒魔法でこの人を治癒してみぃ。」と言ってくる。


目の前の人は、前世界であっても重傷者の分類に漏れなく入るし、

むしろ生きていることの方が不思議なレベルの重傷具合だった。


腹部からの出血はひどくかなり血が流れた様子。

顔面に血の気がない状況が見て分かった。


自分のイメージでの治癒魔法を展開する。

今世界と違って、前世界はそれなりに医療は発展しているし、

応急救護とか蘇生法とかは簡単に知ることができたわけだから、

それらを参考に治していくイメージをかけていく。


この治癒魔法が今世界では特異的だった様子で、

魔術師も老シスターも驚愕の表情を浮かべていた。

まあ魔術師は一度見ているから、老シスターほどではなかったが。


そんなこんなで、重傷者に治癒魔法をかけて回らされた。

回っている間に気づいたのが、一般人つまり非戦闘要員や街の人々の

治癒というか治療に回らされていた。


魔術師曰く「戦闘員自体にやってしまうと、パワーバランスが崩れるからな。」

とのことで、この街が属する国側が極端に強くなりすぎる。

そうすると自重がなくなり、国の崩壊へと進んでしまうとのことだ。


まあ戦争とかない前世界出身だから、その編はよくわからない。

とりあえず言われるがままに治癒魔法を放ちまくっていた。


そのうちに戦争も終わりに近づき、停戦協定が結ばれる頃。

魔術師と自分はお城に呼ばれた。


お城では、かなりの好待遇で迎えられ、パーティーも開かれた。

そして叙爵となり、伯爵位を授けられ、トモ=フォン=ウィラーと名乗ることになった。


======================================


この後は、領主となり政治経済や戦争への関わりを絶った話が永遠と続いていた。


「ダイ君、だいぶ熱心に読み込んでいたけども、何が書いてあるんだい?」

レストさんが本から顔を上げた自分に声をかけてきた。


「レストさん、これって?」

手に取った本をかざしながら質問してみる。


これを差し出したということは、何かしら内容が分からないにしても

この本のことで知っている情報があるということに他ならない。


この本の内容から考えれば、確かに前に転移してきた人間がいて、

その人間がこの世界で何らかの影響を及ぼしたわけだ。

その影響のあった人間についている”ウィラー”と

自分に付いた”ウィラー”に 何らかの繋がりがあるはずである。


それにこれがここにあるということは、この出てくる登場人物やら

お城やら出てくる場所は、想像しているというか、思っていることと相違ないはず。


「ふむ。伝え聞いた話はあながち間違っていなかったということか。」

レストさんは本と自分を見比べながら呟いた。


「どういうことです?間違ってなかったって?」

レストさんの呟きに、そう返す。


しかしその返事に対してのレストさんの返事はなく、考えこむ様子が見て取れた。

そのまましばらく沈黙が続いたのち、レストさんが徐ろに口を開いた。


「それはこの国、オリンピアの言い伝えにある伝記なんだ。」


この本は今世界のオリンピア公国の成り立ちに関わる伝記として、

かなりの間、王都の魔法師団にて管理されていた。


そして本と一緒に言い伝えられてきたのが、

「ウィラーの名を関するものが現れた際には、これをその者に手渡す。」

とのことであった。


つまり今回、自分が転移してきて「ウィラー」を冠することで、

この伝記書と言い伝えに基づいてここにこうして現れたわけだ。


しかしだ、疑問が浮かび上がる。

まず王都の魔法師団で管理されていたものがなぜここにある。

次に2日前に早馬で王都へ報告があがったはずである。返事は早くても明日か明後日である。


その疑問をレストさんへ投げつけると、


「ふむ。頭の回転が速いようで。では、その疑問に答えよう。」

と笑いながら、レストさんは答え始める。


「ここが王都の魔法師団の本部だからだよ。」


続けて、


「そして、ここはすべての交易の中心地。情報は必ずここに集まる。」


とレストさんは1枚の布紙を取り出す。


そこには、

「ウィラーを冠するものが現れたこと。」

「魔法師団は伝記書を用意し、その者へ接触すること。」

「その者と伝記書の接触後、ただちに状況を報告すること。」


と書いてあった。


「レストさん、これって僕が見ていいものなのです?」


あからさまに見せているけど、国の重要文章だろうし、

普通に見せていいものではないと思うのだけど。


「構わないよ。許可は取ってある。」

レストさんはそういうと、


「じゃあ、これも持って帰ってくれるかい。」


といい、さきほどの伝記書と同じくらい古びて埃っぽい本が3冊手渡された。


「こ、これは。」


かなりの重さがある。当然に厚みもある。

少しよろけつつ一旦、アイテムボックスへ入れて聞く。


「さっきのと合わせて4冊が伝記書として伝えられている。」


といい、レストさんはカウンターを拭き始める。


「まったく長い年月保管するから、埃にまみれてるし、カウンターも汚れるよ。」

と何事もなかったかのように話始める。


その直後にお店のドアが開く。


入ってきたのは、どこから見ても魔法使いって感じの女性。

その女性を見たレストさんは、


「あら、モーアじゃないの。お久しぶりね。」


とその女性との会話に入ってしまった。


どうやらレストさんが張っていた結界は外された様子なので、

多分、用事は済んだのだろう。


そう思い、お店から出ていくことにした。


======================================


「ダイ君は出ていったかな。」

レストは外を眺めながら、モーアに話しかける。


「ええ。彼がその者?」

モーアはレストが用意したお茶を飲みつつ、そう訊ねる。


「間違いなく、ウィラー家の系譜で間違いないね。」

とレストはモーアの真向かいに座る。


「じゃあ、手渡したんだ。あの本。」

モーアが確認する。


「渡したよ。読めてたし、内容も理解できていたみたいだし。」

レストはさらりと衝撃の出来事をモーアに告げる。


「ほ、ほんとなの!?それはすぐにでも伝えなくちゃだわ。」

モーアは慌てて、お茶を飲んで退出しようとする。


「そんなに焦らなくても、大丈夫よ。」

とレストはモーアに告げると、「パチン」と指を鳴らす。

するとどこからともなく、梟が現れる。


「私の従魔で、王都に知らせを出すから。」

と梟に手紙を括り付け、空に放つ。


「それがあったわね、じゃあゆっくりと帰りますね。」

とモーアはレストに伝えると、


「じゃあ、ここの店番よろしくね。代わりに王都に行ってくるから。」

とレストはいつの間にやら用意した旅支度を整えて、店から出ていく。


「え、ちょっと。まって。師団長!待ってください!」

と不意を突かれたモーアは慌てて、クローズの看板を店先に出し、

店に残っている団員へは、

「店はクローズにするから、師団業務はしっかりとね。」

と言い、レストを追いかけ始める。


「なあ、うちのトップ二人は大丈夫なのか?」

「いや、店自体は隠れ蓑ではあるから問題ないんじゃないか。」

「王都からの指示はないし、とりあえず通常の師団業務しておくか、言われたし。」


店の奥にある師団部屋から顔を出した魔法師団の団員たちは、

口々に話をしつつ、事務仕事へと戻っていった。


======================================

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。各話ごとのタイトルも修正しております。

次回の更新は、1か月分を書き進めて、5月を考えています。


拙い文章能力で、何とか続けていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

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