第四話 ガイドの街
前回更新から、1っか月以上経ってしまったです。ごめんなさい。
まだまだ拙い執筆なので、スピードが上がりません。
ということで、第4話目です。
一面に広がる黄金色の風景。
金色に輝く小麦畑と青空が広がる景色が、馬車の窓から広がっている。
嘘みたいな風景、青と黄色の2色しか見えない。
そんな光景というか、風景をただただ眺めていた。
「すごい風景だろ。わが領地の自慢の風景だ。」
正面に座るマリアード子爵が話しかけてきた。
確かに小麦が特産で、それから出来る小麦粉や
それらを使った食べ物も名産品として売っている領地だ。
ただこれだけの小麦を刈り取り加工をするにも大変だと思うんだが。
ということは、何らかの秘密というか秘策があるのだろう。
「あいかわらず考えていることが、顔に出るね。」
マリアード子爵が苦笑しながら話しかけてくる。
そんなに顔に出てるのか。
元々そんなには顔には出なくて、『何考えてるんだかわからない』
って言われ続けてきたもんだから、疑問には感じるのだが。
「小麦の収穫とかのことを考えていたのだろう。」
マリアード子爵が考えていたことをズバリと尋ねてくる。
これは確かに顔に出ていたんだな。
そんなことを思いつつうなずくと、
「まあ次の大きな街で宿泊することになるから、その時に説明しようか。」
そんな返事をマリアード子爵から貰う。
いつまでも続く小麦畑の黄金色と青空の紺碧色のなかを
ひたすらに馬車で進んでいく。
いくつかの村や小規模な街を通過し、
小麦畑から野菜を作る畑や果実農園と変化していき、
空が茜色に変わり始めてきたころ。
「ここがガイドの街だよ。」
マリアード子爵が説明を始める。
ガイドの街はマリアード子爵が納めるベラルーシ領では
3番目に大きい街ということ。
ガイドの街は、ベラルーシ領の農産物の取引所があり、
ベラルーシ産の小麦や果物が集まってくる。
そのため、これらを加工した製品や製品を作る工房や工場が集まってもいる。
マリアード子爵の説明を受けながら、町を囲む石壁を眺めていると
目の前に門が見えてくる。
「子爵様、お待ちしておりました。」
門のところには執事服を着た男性が立っていた。
「ご苦労だった、ライン。」
マリアード子爵はその執事服の男性、ラインへねぎらいの言葉をかけ、
「よし、屋敷に向かおう。」
と従者とラインへ指示を出す。
「こっちの門は北側でな、屋敷へ入るにはこっちの方が混まなくていいのだよ。」
ガイドの街は東西南北に門があり、
東側はギルド門と呼ばれていて、
魔物討伐後の素材を運び込みやすくするために門の大きさも広さも1番になっている。
また門を潜ってすぐ左右に冒険者ギルドと宿場街があり賑わっている。
西側は工房門と呼ばれていて、
門から延びる通り沿いには、工房や工場、取引所が立ち並んでいて、
こちらもにぎやかな一角になっている。
南側は行政門と呼ばれていて、
ガイドの街を収めている代官邸や王都の行政出張所などがあり、
この町を通りかかる貴族向けの宿泊所なども立ち並んでいる。
そして北側は管理門と呼ばれいて、
領主別邸や迎賓館があり警備の厳しい区域に面している。
そんな説明を受けていると、
朝、出発した領主邸に劣らぬ屋敷が見えてきた。
「ガイド別邸です。どうぞ。」
先ほどのラインと呼ばれていた男性が馬車のドアを開けて声をかける。
「さて、ダイ君。降りたまえ。」
マリアード子爵はそう告げ、馬車を降りる。
促されるままに、馬車から降り、
マリアード子爵とラインさんの後について行く。
領主邸は石材が主体であったけど、こちらの別邸は木造である。
ただ、木造といってもかなりしっかりとした造りであって威厳を感じるほど。
これだと、王都の屋敷とか王城は、果たしてどんな規模でどんな造りで
どんな豪華な造りなんだろうか、と考えていると。
「本当にダイ君は、顔で何考えているのかが分かるね。」
考え事をしていた顔を見たマリアード子爵が笑いながら話しかけてくる。
「まあ王都に着くまでの楽しみだな。」
そうマリアード子爵が言うと、玄関のドアが開く。
「「「お疲れ様でした。子爵様。」」」
開いたドアの前には、メイド服の女性や執事服の男性が並んで、頭を下げている。
こうして使用人といわれる人が並んでいる光景は見たことは
前世界での記憶と知識でもこの経験はないから、驚く景色ではある。
「さて、ダイ君。今日はここで1泊する。」
マリアード子爵が驚いて固まっているところに話をしてくる。
「夕食は準備しておくから、少し自由に散歩してくるといい。」
そう告げると、ラインさんに目配せをする。
ラインさんは軽く頷くと、別のドアに向こう側へ姿を消す。
「それでだ、ダイ君。ほれ。」
マリアード子爵が小袋を投げてよこす。
中身を見ると、硬貨が幾枚か入っている。
金色のものはないようだが、銀色と銅色のものが見える。
「昨日の流れから考えれば、一銭も持っていないだろ。」
確かに前世界からの突然の記憶の再開。
身一つで救われた現状だから、確かに何も持っていない。
「確かにそうですね。ありがとうございます。」
素直にお礼を述べて、頭を下げる。
「どうにも知識とかも紛失してるみたいだし。」
とマリアード子爵から説明がある。
この世界では、硬貨が主流の通貨とのこと。
一番下の素材から、鉄・銅・銀・金・白金となる。
通貨のレートとしては、
鉄貨100枚=銅貨1枚
銅貨100枚=銀貨1枚
銀貨10枚=大銀貨1枚
銀貨100枚=大銀貨10枚=金貨1枚
金貨10枚=大金貨1枚
金貨100枚=大金貨10枚=白金貨1枚
となる。
基本的、生活する上においては鉄貨から銀貨の範囲で済んでしまう。
商業取引や魔物討伐になれば、金貨や大金貨も範囲になってくる。
「ということだから、少し散策すれば思い出すこともあるだろう。」
そうマリアード子爵は告げると、先ほどラインさんが入っていったドアへ入っていった。
それと入れ替わるように、ラインさんが近づいてきて、
「ダイ様、こちらへどうぞ。」
と別のドアへと案内される。
案内されるがままにラインさんに付いて行く。
案内されてたどり着いた先には、そこそこの広さの部屋だった。
「では、こちらでお着替えをなさってください。」
とラインさんは頭を下げて、部屋から出ていく。
部屋のベッドの上には、洋服が一式揃えられている。
朝に自分の袋に詰めた服でなく、新たなもののようである。
「朝まで来てたやつは、そこの籠の中の袋だしな。」
そうつぶやきつつ、ベッドの上の服を広げてみる。
「これって、たぶんだけど。貴族用の平服ってやつだよね。」
朝まで着ていたのは、庶民や市民の平服だったはず。
見た目の形やデザインはあまり変わらないけども、
生地の素材やところどころの縫製に高級感があふれている。
「やっぱりそういうのに慣れないからなぁ。」
そんなことをつぶやきつつも服に袖を通す。
「ダイ様、ご準備よろしいですか。」
部屋の外からラインさんの声がする。
着替え終えていたので、先ほど受け取った硬貨の入った袋を手に取り、部屋のドアを開ける。
そこにはラインさんが立っており、姿を見ると、
「サイズとかも大丈夫ですね。」
と上から下まで確認していく。
「では、ご夕食の時間までご自由に散策ください。」
ラインさんが玄関まで案内をしながら、散策の注意点を説明してくれる。
基本的には治安がいい、ガイドの街ではあるけども、不届き者も存在するので、
追剥や暴力沙汰に注意してほしい。何かあれば、各街区の区切り部分に衛所があるので、
そこへ言えば、対処に向かってくれるとのこと。
冒険者ギルト周辺の酒場や飲食店では、かなりの頻度で喧嘩が多いので注意が必要。
衛兵も定期的に巡回もして、ギルト依頼でも見回りをしているけども、追いついていないこともある。
大体は酔っ払い同士のいざこっざや小競り合いなので、見かけたら近寄らないこと。
ガイドの街は、周辺諸国の拠点の街でもあるので、各領地の貴族や各国の貴族も宿泊している。
今も着ているけども、貴族用の平服で散策していることもある。
そうそうあることではないけども、貴族に対して失礼なことや軽率な行動をすると
不敬罪で、断罪されることもあるので、注意しておく。
「最後にですが、夕食になることにはこちらからお呼びに上がりますので、気兼ねなく散策してください。」
玄関部分で、ラインさんは説明を終えて、頭を下げて送り出してくれる。
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「さて、ダイ君の調査はどうなっている。」
執務室で子爵は執事に問う。
「はい。早馬で王都に向かわせた伝令からの返事はまだですが。」
問われた執事はそう答えて、続ける
「周辺国にいる斥候や密偵にも確認を入れていますが、ウィラー家自体はやはり噂の範囲を出ないです。ただ、ごく少数で存在しているとは認識されているみたいです。」
報告を聞いている子爵はうなずき、
「まあ現状の状況と話の範囲からは出ないということだな。」
と返事を返す。
「一応、元々のウィラー家の領地、領都であったウィラー地区周辺に密偵を送っていますので、改めて王都のお屋敷の方で報告が集まるかと思います。」
執事はそう子爵へ報告をしていく。
「さて、ダイ君を街へ出してみたけども、大丈夫かね。」
ちょうどラインが見送りから戻ってきたところで、問いかけられる。
「一応、屋敷の者をひそかに付けさせましたし。呼びに行くのは、わたくしが行きますけども。」
ラインはまず問いかけに答えつつ、
「ガイドの街自体、大きい街ですから何かしらトラブルは起きるとは思いますけども。」
ラインは苦笑する。
「自分の領地ながら恥ずかしいけども、ガイドの街だからな。仕方がないか。」
子爵も苦笑しつつも、『どこかなんとかなりそう』って思っていた。
「子爵から聞いたステータスの実力が見られそうですね。」
ラインはニヤリとしながら、子爵に問う。
「ライン、あまり楽しむなよ。」
そんなラインに、子爵は苦笑する。
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