第十八話
おけましておめでとうございます(遅い
相変わらずの筆の遅さでございます。
「ダイ様、お迎えの馬車が来られましたよ。」
と執事長のロイスさんが執務室に呼びに来る。なぜだかわからないけども、昨日に王城から連絡があり、登城することになったわけで。そして、
「ロイスさん。なぜに新しい礼服がすでに届いていて、これを着る必要があるのでしょうか。」
となぜだか昨日の今日で、寸分の狂いもなく出来上がっている新しい礼服に袖を通すことになり、当たり前にメイドによって着せられたわけですけども。
「当たり前ですね。王城に登城するわけですから。国王に会うのに、平服では失礼に当たりますから。」
とロイスさんは馬車へと案内しながら、話す。
「いやいや、この前の叙爵の時の礼服がありますよね?あれはどうしたんです?」
そう。男爵位を叙爵される時に、子爵家で作ってもらった礼服がある。それもあのときに1回着たのみで、それを着ないで新しい礼服に袖を通してるのは・・・・・・・。
「礼服は都度、新調するのが貴族の勤めです。貴族が都度、礼服を新調することで、洋裁店を始めそれに関わる産業や商業へも経済が回るのです。これは礼服に限らないのです。それはまた改めて、お話しますので早く馬車に乗ってください。」
と説教を受けながら、馬車へと乗り込み、ロイスさんは、行者のところに座る。
「聞きたいこともあるんだけど、まあ後で帰ってきたらでいいか。」
とぼそっと呟き、思いつつ王都の街中を眺める。
この世界としては早朝ともいえる時間帯なので、人通りは多くない。だが、それぞれの家では、朝ご飯の支度や家の周りの掃除、お店では商品の準備や仕入れの取引などをやっている。朝の騒がしさを窓の内側で、楽しんでいた。
そんな外の様子を見ながら、馬車に揺られていると突然、止まった。なので、少し座っていた姿勢が崩れてしまったが、すぐに姿勢を戻すと、
「ダイ様、すみません。」
と行者の席からロイスさんが謝る。
「何があったのです。突然止まりましたけど。」
と行者席側にある窓から顔を出して尋ねる。
するとなにやらあった様子で、乗っている馬車の前の方に人ごみがあり、騒がしくなっている。
「どうやら何か事件か事故があったみたいですね。」
とロイスさんが頭を押して、馬車の中へ押し込みながら答えてくる。
「いやいや、なんで頭を押して押し込んでるんです。あの、一応雇い主ですよ。主人ですよ。」
と押されている状態への抵抗をしつつも、騒ぎの中心を見極めようとする。
うん、声は聞こえるけども何を話しているかまでは聞き取れない。
じゃあ、
『ステトスコープ(聴診器)』『ボリュームアップ(音声拡大)』
よし、これで聞こえるはず。本当は『聴診器』だから診察とか診断とかで使うものだけど、何かで読んだ特殊部隊の人たちが似たような方法で、見えない部屋の様子を判断するのに使ってたのを思いだして、音声を上げる魔法を併用してみた。
「おい、大丈夫か。」
「返事しろ、おい。」
「誰か、衛兵呼べ。助からんぞ。」
「しっかりしろ。すぐに助け来るぞ。」
うん、よく聞こえる。そして多分、命に関わる何かが起きてそうだね。
「じゃあ、行きますか。」
と呟くと、馬車から一気に飛びだして行く。
「あっ、ダイ様!待ってください!勝手な行動は!」
なんかロイスさんが言っている声がするけど、まあいいやね。
人ごみの中へと分け入っていく。子供の体だから、すいすいと間をすり抜けていける。
人ごみを抜けた先に広がっていたのは、複数の倒れている人の姿だった。
それもかなり重症とみて分かる状態の人が多い。
「これは不味い。間に合わなくなる。すみません!治癒魔法使えるので、助けに入ります!」
と大声で宣言して、倒れている人のところへと駆け付ける。
まずは全員に対して一気に診察と診断用の魔法を掛ける。
『エコー(超音波診断)』『スキャン(画像診断)』『モニタリング(患者情報)』
よしこれで、全員の状態を把握しながら、治療に当たれる。
まず一人目。
全身のダメージが酷い。とりあえず、頭部のダメージコントロールから始める。
「頭の中の出血を取り除いて、ダメージがありそうなところに治癒魔法を。」
頭部のダメージコントロールは大丈夫そう。
「で、全身状態としては内臓もかなり不味い。心臓と肺と肝臓をメインに。」
頭部の状態が安定しているので、生命維持に必要な内臓から順番に治癒していく。
「あとは腎臓もダメージ大きそうだな。それ以外は治癒魔法でどうにか出来そうだ。」
生命維持機能に大事な内臓器官も治癒して、最後に治癒魔法を掛けて一人目お終い。
二人目。
右腕と左足が変形している。左足は開放骨折か、出血はそこまでではないけど重症。
まずは腕と足の整復から始める。
「腕と足の向きをもとの位置に戻して、骨をくっつける。神経とかは大丈夫そうだから、傷口を洗浄して、消毒する。あとは治癒魔法を掛ければ大丈夫。次。」
三人目。
見た目以上に重症。
見た目はダメージが少なそうな感じだが、内臓がかなり大ダメージを受けている。
「肝臓も腎臓もメタメタじゃん。体に毒回っちゃうから、ここからだな。」
と血液浄化『クリーンアップ(血液透析)』を掛けつつ、内臓修復を行っていく。
それ以外の内臓も内出血して腫れている様子だが、
治癒魔法で行ける範囲見たいなので、治癒魔法を掛けてお終い。
四人目。
この人、そこそこ怪我はしているけど。この怪我って。
そんなことを思っていると、
「そいつがほかの3人に怪我を負わせた奴だ。それも強盗犯だ。」
と野次馬からの情報が入る。
じゃあ、逃げ隠れ出来ない程度に治癒魔法を掛けておく。
ついでに猿轡もかまして、自決はさせないようにしておく。
どうせ、衛兵に連れていかれれば、処罰が待っているからあまり治してもしょうがないし、
見ての通り、なんだか元気だよな。
「へめー、はにひやがる。ふっほはすほ。(テメー、何しやがる。ぶっ飛ばすぞ。)」
うん、まだ元気そうだな。少しおとなしくさせるか。
『ペイン(鎮静剤【弱】)』
「ZZZzzz・・・・」
うん、おとなしくなったね。
さて、五月蠅かったのも静かになったことだし「よお。」
「ああ、団長さん。てか、わざわざ、団長さんが来たんですか。」
と声を掛けてきた国務騎士団の団長さんへと振り向き返事を返す。
「噂には聞いてたけど、手際がいいな。それと治癒の感じもいいな。よし、負傷者を運べ。」
と笑いながら、負傷者の移送を指示しながら、肩を叩いてくる。
国務騎士団の団長とは、先日の謁見の際に顔合わせをしていた。
というのは、謁見の後の地下での会談の際にあった件についての中で、
拠点を各地区にある国務騎士団の拠点に置くことで話があって、
そこで国務騎士団の長でもある団長と顔合わせをしていた。
「犯罪者にも一応は治癒させているんだな。なんか寝てるけど。」
と鎮静させた犯罪者と僕を見ながら、
「よし、こいつは留置所へ連れていけ。」
と団員へと指示を飛ばす。
「てか、なんでこんなところにいるんだ?一応、貴族だろ。お付きの人はどうしたんだ?」
と周りを見渡しつつ聞いてくる。
ええ、お付きの人こと、ロイスさんがえらく恐ろしい顔と息切れしつつやってきますよ。
「だーいーさーまー。人の静止も無視して駆け出すわ、追いつけないスピードで駆け抜けていくわ、いい加減にしてください!もう貴族の一員ですし、王城から呼ばれていく途中なんですよ!自重とか自制とか忍耐とか我慢とか出来ないんですか!」
こりゃ、だいぶ怒り心頭ですね。なんだっけ?激お〇ぷん〇ん丸だっけ?
「ははは。王城行くんだったら、同行させていただくよ。俺といくばくかの騎士しかおらんけどな。まあ、男爵なら一人でも問題ないだろうけどな。」
そう団長さんは言いつつ、僕の肩を叩きつつ、いまだに怖い顔をしているロイスさんが待つ馬車へと歩いていく。
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