第十七話
書き溜め頑張る。
もうすこし王都編です。もう少し物語のテンポを上げていきたいな・・・
とても「物凄い顔」のエリーザベイト嬢を目の前に、
果たしてどのように話を進めるべきなのかと、
悩むわけなんだけど。
「さて、エリーザベイト嬢。お約束のお話ですよね。お待たせしました。で、そのお顔と言いますか、ご機嫌をお直しになりません?」
相当ご機嫌斜めなエリーザベイト嬢を宥めつつ、
元々の予定であった貴族の礼節について学んでいく。
まあ、元々の普通な一般人だった自分とすれば、
まったくもって馴染みがないわけで。
「なので、貴族当主であるダイ様は、貴族の家族である人に対しては、尊大な態度でいる必要があるのです。これは兄弟であったとしても守るべきことなのです。」
とエリーザベイト嬢の説明が一区切りがつく。
「なるほど。わかったような、分からなかったような。」
と率直に感想を述べると。
「はぁあ。まあ来年には学園入学ですし、そこでもう一度学んでください。」
とため息交じりにエリーザベイト嬢は返し、
「ではこれで。ごきげんよう。」
と帰っていった。
「学園で学べるなら、今日のこれ、必要なかったのでは?」
と思いつつ、エリーザベイト嬢を見送った。
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見送った後、屋敷の廊下にいたメイドの一人に、
「執事長のロイスさんを呼んでくれるかな?執務室にいるから。頼みますね。」
と執事長として屋敷で働くことになったロイスさんを呼ぶ。
しばらくして、
「お呼びですか、ダイ様。」
とロイスさんがやってきた。
「ロイスさん。これから、よろしくお願いしますね。それでです。」
と挨拶を述べた後、
「ロイスさんは、子爵家の人間?それとも公爵家の人間?はたまた、王家の人間?」
と今後の関係性を考えるにも必要な質問をする。
今の自分の能力と置かれている立場を考えれば、
どの立ち位置の人間であるかを把握しておく必要性は高い。
ましてや、この世界での常識や理を含めて、
全くの情報弱者で、裏をかかれれば、
自分の首を絞める事態にもなりかねない。
「私は、王家の庇護を受けてきた者です。そこから子爵家にお世話になっていました。」
やっぱり王家の系統の人間か。
そんなことを思っていると、
「ですが、元々はウィラー家の手助けをしていた一族ので出です。」
「どういうことです?」
予想だにしなかった返答に、思わず質問をする。
「ええ。元々、ウィラー家において文官として、書類仕事を全般的に行っていたんです。その中でも、領都でもあったウィラーの街での治療院の維持管理をになっていたのが、私の曾祖父だったんです。」
どうやら、ロイスさんの一族はウィラー家を支えて来ていた一族で、
今回の自分のウィラー家の末裔問題で、この目で確かめたかったことから、
ガイドの街や王都の街での観察を行っていたとのことらしい。
「曾祖父の手記にも、『ウィラー家の当主は不可解な治癒術を使う。が、その治癒術を受けたものは、従来の治癒魔法よりも回復が良いのだ。そしてその治癒術を広めるために書物を書いていったが、珍妙な文字と言語で書かれて複雑怪奇で奇天烈天外なものだったので、あまりに読まれなかった。もしその書物を読める人間が現れ、不可解な治癒術を使うのであれば、ウィラー家の人間であることに間違えはない。』とあったのです。」
なるほど、先代の当主殿のあの書物はやっぱり誰も読めなかったし、
読もうとしなかった内容だった訳であったんだな。
「まあ曾祖父の手記には続きがありましてね。『ウィラー家の当主は、どうやって生きてきたのか分からないくらいに、常識も経験もない。だから、これでもかっていうくらいトラブルや事件やあれやこれやと巻き込まれる。なので、ウィラー家で勤め上げるのはとても苦労するし、頭も腹も痛くなる。まあ、すぐに痛みを非常識な魔法魔術で直されてしまうんだがな。』とも書かれていました。それも覚悟の上でのウィラー家にお勤めさせていただきますので、よろしくお願いしますね。」
だいぶ初代の当主様はやらかしていたみたいだな。まあこれは自分も怪しいところだな。
なるべく迷惑をかけないようにしないといけないよな。多分無理だろうけど。
「ダイ様。とりあえずエリーザベイト嬢様がおっしゃっていたことは、ご理解いただき努力なさっていただきたいと思います。」
と考え込む自分にロイスさんが声を掛ける。
「ウィラー家の復興は、良きも悪きも国のためになることです。ましてや、ダイ様の能力は先代の当主様を上回るとも言われています。といいますか、十二分に上回るレベルだと思います。」
ああ、王都での行いも見てたんだよね。
「ウィラー家の当主としての自覚と、貴族家のしきたりやマナー、常識、ルールは学園入学までには、しっかりと身につけてください。」
とロイスさんは言うと、頭を垂れ執務室を後にする。
「まったく、難儀だわ。」
執務室の椅子の上でそっくり返る。
「一応、手記に関しては読んでいるから、ウィラー家のなれそめとか、貴族としての苦労は理解できたけど。ただ貴族としてのしきたりとかマナーなんかは書いてなかったんだよな。」
と呟き、姿勢を戻しつつ執務机に4冊の手記を投げ出す。
「これで理解できないのが、速読でこの4冊は読めなかったんだよな。ほかの書物は速読で読めていたし、タウンマップでもグルメマップでも魔法書でも医学書でも関係なく読めたんだけどな。」
手記の1冊目を手に取り、パラパラとページをめくるがやはり速読のスキルは発動しない。続いて、王都の本屋で買ったグルメガイドを取り出し、ページをめくりだすとスキル発動で、速読できてしまう。
「不思議なんだよな。グルメガイドとか速読できなくていいんだけど。ゆっくり読みたいよ、こっちおを。」
と本をアイテムボックスへとしまおうと考えたが、
「そういえば、この屋敷って読書室あったよな。そこに置くとするか。」
と、執務室の隣にある読書室へと移動する。
「なんだってこの屋敷は見た目以上にデカいよな。読書室自体、地下室になってるから余計に広いんだろうけど。」
と階段を下りていく。さきほどの公爵が持ってきてくれたこの屋敷の見取り図を見ていたが、地下室も読書室以外にも、食糧庫や倉庫もあるようである。
地下の空間は、当たり前ではあるが薄暗い。掃除は行き届いていたようで、埃ぽい感じはなく小綺麗な感じの空間となっている。
「さて、読書室はっと。」
ときょろきょろと見回すと、『ブックルーム』と書かれたプレートがある扉を見つけた。見つけたその扉へ歩みを進めてドアを開けると、
「おお、なんだ変な感じがするなぁ。まあいいか。意外というか、かなり広いな読書室。」
と部屋の入り口潜る時に変な感じを受けつつも、特に体に害をなす様子もないので、気にせすに読書室の中へと入っていく。
「棚には本は並んでいないんだな、やっぱり。」
と並ぶ棚を眺めながら、奥へと歩みを進める。しかし気になることはある。やけにこの部屋だけ明るいのとこの広さである。明るさは降りてきた時の地下室の空間との明度の差は大きい。読書室であるから明るさは必要ではあるが、不自然なほどに明るい。
そして、広さである。個人所有の読書室というものを知らないけども、どこぞの大学の図書室より広い感じはある。今はまったく蔵書がないわけだが、これだけの書架があると蔵書数は凄まじい。
「ということは、さっき感じたのは何らかの空間魔法か何かかな?」
と入る時に感じた違和感を思い返す。魔法師団での時空魔法を始め、アイテムボックスといった物量質量を無視したものがある以上は、こういった部屋や空間を広げる魔法があってもおかしくはない。
「王都の書店でももう一度巡ってみるか。まだ魔法書や魔術書の類は探してなかったし。」
と考えつつ、アイテムボックスに入れてあった本を片っ端から収めていく。
それから数刻して、「よし、これでいいだろ。執務室へと戻るか。」と本を収めて読書室を出る。
階段を上がって、執務室に戻ると執事長でもあるロイスさんが「お待ちしてました。」と言わんばかりに、執務室へと入ってくる。
「あれ、ロイスさん。どうしましたか?」
と入ってきたロイスさんに問う。その手には何やらお手紙みたいなものが握られている。
「ダイ様、王城からのお手紙です。」
とその手にある手紙を渡してくる。その手渡された手紙を開くと、
『ダイ=フォン=ウィラー卿 明日、登城せよ。迎えの馬車をこちらから向かわせる。』
な、なんとシンプルなお手紙だごと。
「では、明日は王城ですね。迎えの馬車が来たらお呼びしますね。」
とロイスさんは言うと、執務室を後にする。
呼ばれるようなことは多分していないはず。なぜに呼ばれたのかを考えていると、メイドの一人が食事の時間であることを告げにやってくる。
「まあ、明日行ったら分かるだろうから。」
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