第十六話
少し書き溜めがあるので、連続投稿します。
(この間に書き溜め増やしたい・・・頑張る)
なんだかんだと色々あったとしても、
遅れもせず問題も起きもせず、ちゃんと時間通りに朝は来るもので。
「ダイ様!起きてくださいませ!」
「ダイ君w!おはようw!」
と朝も早くから、不思議なことに自分の寝室の隣にある
執務室から声が聞こえてくる。
「一応というか、間違いなく僕の住まいなはずなんだけど。」
と苦笑しつつ、寝室の寝床から起き上がる。
寝床から出て、寝巻きを脱ぎその辺に投げてあった服へと着替えつつ、
「まったく親子揃って、人ん家に朝から普通にいるなんてさぁ。」
と服の袖を通して行く。
「多分、明日からは自分でこういう支度もしなくなるんだろうな。」
と身支度を整えて、執務室のドアの前に立つ。
一応、執務室と寝室を隔てるドアには鍵は付いており、
寝室側から鍵をかけておける。
というか、執務室からそれ以外の部屋や屋敷の内部へとは鍵がない限りはいけない。
そう考えれば、執務室にいるあの二人は一応、この屋敷の鍵を管理していたわけであるから、
寝室まで入ってこないところを見ると、常識の範囲でいる様子ではある。
「とはいっても、こういう経験も体験もないから慣れないし、徐々に慣れていくしかないか。」
と執務室へのドアの鍵を開け、執務室へと歩みを進める。
「やっと起きてきましたわね。ダイ様。」
と腰に手を当てて、少々不機嫌なエリーザベイト嬢と、
「おはようw、ダイ君。」
と笑いながら、公爵が挨拶をしてくる。
「公爵、笑い事ではないのでは?一応、防区の屋敷ではありますよね。」
と言いながら、3人で応接セットへと座る。
「エリーザベイト嬢は、おはようございます。昨日、お伺いしている件ですよね。ありがとうございます。」
と少々不機嫌なエリーザベイト嬢へと挨拶をする、
「んで、公爵は何の用です。あらかたは昨日、エリーザベイト嬢からはお伺いしておりますが。」
と公爵へ話を振る。
お屋敷の管理とか維持とかについても、王都での生活についても
昨日のエリーザベイト嬢の説明があったので、だいたいは理解している。
貴族としての生活についても話は聞いているが、
所作や礼節、作法がまったくのからっきしな訳である。
それについては今日、エリーザベイト嬢が何らかのご指導を考えている様子なので、
それに甘えて、学んでいくところではある。
それ以外にわざわざ上級貴族が下級の新興貴族に何の用事があるというのか。
そんなことを話を振りつつ考えていると、
「ダイ君、考えていることが丸分かりだよw。」
と公爵は笑いながら言い、
「ダイ君のお屋敷の執事とメイドが決まったから、連れてきたんだよ。入ってきたまえ。」
と言うと、執務室の正面にある扉が開き、ずらずらと人が入ってくる。
入ってきた人数を見て、多くねえか?と思いつつも、
「まずは執事長だけど。」
と公爵が言うと、スッと男性が一歩出てくる。
「ダイ様。執事長を拝しましたロイスと申します。」
と頭を下げて挨拶したのは、
ガイドの街や王都の街で、しきりに後をつけていた人だった。
「ロイスさんって言うんですね。よろしくお願いしますね。」
と少し意味深な笑みをを浮かべて、挨拶をする。
その笑顔を見たロイスさんは、
「あれ?もしかしてダイ様、お気づきでした?では、改めまして、よろしくお願いしますね。」
と苦笑しながら返事を返してくる。
そんなやり取りもありつつ、
ロイスさんの執事長を始め、
執事1名、メイド長含むメイド4名、料理人2名の
計8名の従者との顔合わせが済む。
顔合わせが済むと、それぞれが屋敷の中に入り、
各々の仕事へと入っていく。
その姿を見て、
この8名と屋敷にて住むことになるのか。
そんなことを思っていると、
「本当だと、馬の管理を任せる人とかも必要なんだけど、まだ手配が終わらなかったんだ。」
と公爵が従者や待女についての追加の説明を始める。
屋敷の規模にもよる部分はあるものの、
屋敷の中を仕切る執事長と執事。
掃除や洗濯といった家事全般を行うメイド長とメイド。
料理の全般を行う料理人。
屋敷の修繕や庭の維持管理をする調邸師。
馬や馬車の維持管理を行う馬蹄師。
そのほかにも必要に応じて、
家庭教師や鍛冶師などといった従者や待女を雇うことがあるそうだ。
「これ、給金ってそれなりに掛かるもんなんですか?」
一番気になるところを聞いてみる。
「大体一人当たり1ヶ月で大銀貨1枚程度、長であれば、そこに銀貨5枚くらいかな。」
一般的な平民の収入としては、多い人で1ヶ月で銀貨5から6枚程度。
平均で言えば、大体4枚程度である。
自分でお店をやっている商人であれば、銀貨7枚程度の収入を得られる。
冒険者に至っては、実力の世界で得られる収入は変わってくる。
貴族の屋敷での仕事はそういった点で、身の入りが素晴らしく良いものである。
そのため、執事やメイドになるために努力をしたり、
はたまた子供の教育に熱心だったりする。
貴族は、国から給金が出る。
貴族の爵位によって変わるが、男爵で1ヶ月金貨5枚となる。
子爵や伯爵へと上がっていけば、給金も2枚程度ずつ上がってくる。
爵位が上がれば、給金も上がるが容易く上がるものではないし、
元々、叙爵自体もそうそうあることではない。
「ということは、僕はとりあえず給金で従者や待女を雇っていれば大丈夫なんですね。」
と確認しつつ、
「でも領地持ちじゃないから、とりあえず収入源を確保した方が良いですよね?」
と公爵へ問う。
当たり前の話ではあるが、貴族となれば領地持ちとなる。
まあ任地の大小はあるけども、収入源として税収の一部や名産物の売り上げもある。
それらがない自分としては、何らかの収入源を手に入れておく必要がある。
屋敷の改修や改装、増築。馬車の購入や維持管理。
従者や待女、私兵の追加や振る舞い。
食材の購入や食器の購入更新。
こう言った貴族としての体面を保つためにも、
なんだかんだ言っても、ある程度の金銭は必要である。
「まあダイ君は、急ぐ必要もないかな?昨日の話じゃないけど、そこからの収入は確実だし、給金だけでも当分は大丈夫な状況だもの。」
と公爵は笑みを浮かべつつ、返答してくれる。
「さて、僕はこの辺で失礼するよ。隣で物凄い顔をして睨んでいるのも居ることだし。お暇させて頂こうか。あと何かあれば、僕やマリアード子爵へ相談するといいよ。僕はいつでもおいで。できる範囲だけど、力にはなるから。」
と公爵は苦笑しつつ、席を立つ。
「色々とありがとうございました。お世話になりました。」
と謝辞を述べつつ、公爵を見送る。
さて、その「物凄い顔」のエリーザベイト嬢の方へと向き直る。
これまたなかなかの迫力のある顔で、少し視線を逸らしたくなるが、
これで視線を外そうもんなら、さらに「物凄い顔」がどうなるかわかったもんじゃない。
「さて、エリーザベイト嬢。お約束のお話ですよね。お待たせしました。で、そのお顔と言いますか、ご機嫌をお直しになりません?」
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