第十五話
少し書き溜めがあるので、連続投稿します。
(この間に書き溜め増やしたい・・・頑張る)
「確かにお屋敷だわ。」
と門扉の前で見上げてしまった。
前世界の基準で考えれば、
よっぽどの金持ちか、ヤの付く自由業の方々が
お住みになられているレベルで、デカい・広い。
「こんなの9歳の子供に渡すサイズじゃないだろ。」
平屋建てで、ここから見る限りで確実に10部屋以上はある。
外観は和洋折衷な感じで、やはりそれこそヤの付く自由業の方のお家。
「まあ突っ立っていても仕方がないし、入るか。一応、掃除はしてあるらしいし、メイドと執事は明日から来るらしいし。」
と、重厚な玄関扉を開くと、
「まさしくホールだな。パーティー出来そうなレベルだわ。」
広い玄関ホールは、綺麗に磨かれている石材作りで、
天井には、その空間を余すことなく照らしている照明。
「ここだけでも豪華だわ。ここに暮らすのか?」
と思わず呟いてしまう。
玄関ホールの広さと豪華さに感心しつつ、
正面奥側の扉へと歩いていく。
その扉を開けると、扉の向こう側には浴室があった。
「これまた大浴場だな。こっちも石材造りだわ。」
とまさしく旅館にある大浴場が、目の前に広がっていた。
「こうなると部屋を見るのも、恐ろしくなってくるな。」
と、思いを言葉にしつつ、執務室と寝室へ向かう。
「元々、ウィラー家の屋敷だったようだから、予想している通りのものが出てきそうだけども。風呂場はまさしくだったし。」
と寝室のドアを開ける。
「うん。やっぱりあるよね。和室。」
予想通りの、畳が敷いてある空間がある。
懐かしい香りはしないけども、畳があるのは、
落ち着く気持ちになる。
「和室だけど、ベッドが置いてあるんだな。前世界で泊まった宿みたいだな。」
履いていた靴を脱いで、畳みたいなものの上に上がる。
見た目はそれこそ畳だが、
「畳もどきって感じだな。まあイ草なんて生えていないだろうから、それっぽい草で作ってある感じだな。」
稲というか麦というか、そういった系統の茎を畳状にしたものだ。
ただかなり丈夫で立派なものに仕上がっている。
寝室の隣に執務室があり、ドアで繋がっている。
「寝室と隣り合っているのもどうなんだろうな。プライベートあるのか?」
などと、思いつつも繋がっているドアの前まで来ると、
何やら執務室の中で、声は聞こえる。
明日になるまでは、自分以外には誰もいないはずだが、
確かに人の様な声が聞こえてくる。
ただ確認するのも危険かと思い、
『スキャン』を執務室へとかける。
すると執務室の中の椅子に座っているヒト型が見えた。
それ以外には、執務室の中にいない様子。
「まあこれじゃあこの程度かぁ。一応、行動を抑えられるものを準備するか。」
そんなことを思いつつ、とりあえず執務室へと向かう。
扉を開けて、執務室へと入ると椅子に座った人がこちらを向いた。
「なんで、エリーザベイト嬢はこちらに?」
とそのこちらを向いた人物へ声をかける。
「遅かったですわね、ダイ様。ご機嫌潤わしゅう。」
とエリーザベイト嬢が椅子から立ち上がり、挨拶をしてくる。
数日前に王都へやってきた公爵家のご令嬢、エリーザベイト嬢が
どういうわけだが、ウィラー家のお屋敷の執務室にいる。
「エリーザベイト嬢、どうやってここに?私ですら今日、ここに初めて入ったんですけど。」
と目の前のご令嬢へと質問を投げる。
「簡単ですわよ。お父様の執務室から鍵を手に入れて、複製するだけですから。」
いや、そんな恐ろしいというか、犯罪紛いなことをしないでいただきたい。
「いや、あの。じゃあ何をしに来たんです?」
まあ犯罪紛いなことを横に置いておくとして、目的は聞かないといけない。
こういう展開の流れだと、
料理作るとかこのまま泊まっていくとか、
少々不味いというか、耐性がない展開へと進みそうだ。
「お父様のことだから、最低限のことしか説明していないだろうと思いまして。」
お屋敷は、国から貸与されている形ではあるが、
自分の生活がしやすいように改良は許されている。
ただ、大幅に改築やリフォームする場合には、
王城(王国)への報告が必要。
領地任地がある場合には、絶対にお屋敷にいる必要はないが、
半年に1回は、謁見の儀が行われるので、それには必ず出席が必要。
その際はパーティーもあるので、なるべくならば、参加する。
王都に滞在中は、お屋敷に泊まり懇親会も開く。
また他のお屋敷の懇親会にもなるべくなら参加する。
横の繋がりは意外というか重要で、
有事の際などの協力の有無で、その後の領地経営に
雲泥の差が起きてくるらしい。
お屋敷の従者としては、執事長1名にメイド長1名。
それぞれが数名ずつと料理人が2名以上必要で、雇用をする。
必要に応じて、増減は行って良いが、
王都の雇用と経済を回す為にもそれなりに雇うこと。
「あと私もダイ様も、10歳の謁見の儀は必ず参加ですわ。ダイ様はもう陞爵していますが、必ず参加ですわよ。」
10歳の謁見の儀は、貴族家の嫡男女ともに参加する。
ここで、各家の嫡男女は騎士爵を陞爵する。
それ以外のご子息ご令嬢は、15歳の謁見の儀で、
勲爵を陞爵される。
騎士爵も勲爵もあくまでも名誉爵位であるが、
騎士爵はその家の跡継ぎであることを示すものであり、
勲爵はその家の子息令嬢である証明なだけとなる。
例で言えば、ウィラー家の嫡男がいれば、
『○○=フォン=ウィラー騎士爵』となる。
男爵として独り立ちしている自分としては、
参加する意味があるのか疑問があるが、
どうやら参加しないといけないようである。
「こんなとことですかね。ダイ様、何か質問とかありませんか?」
と、エリーザベイト嬢が質問してくれる。
が、根本としてこの世界自体が未体験未経験なため、
すべてが疑問疑念だらけな訳である。
「まあ追々、覚えていきますよ。わざわざ、ご足労いただいて、ご説明ありがとうございます。」
と頭を下げて、お礼を述べる。
「ダイ様、貴族当主が貴族家の嫡女へ頭を下げてはなりませんわ。」
と怒られてしまった。
「ダイ様には、貴族としての礼節やらなんやらを学んでいただく必要がありますわね。」
と眉間を押さえて、考え込むように呟く。
あれ?何か、不味いことしたのかな?
人としてお礼や謝罪をする際には頭を下げるんじゃないの?
そんなことを思っていたら、
「時間も時間ですし、明日にいたしましょう。明日はそちらの方をお教えさせていただきますわ。」
とエリーザベイト嬢は言い、貴族の所作で礼をすると、
「では、ダイ様。ご機嫌よう。また明日お伺いさせていただきますわね。」
と執務室から去っていく。
しばらくその姿をただただ呆然と眺めていたが、
「いやまず、人に貴族の礼節うんたらよりも、人んちに勝手に入る方が問題だろ。」
と理不尽な事態に思わず叫んでしまった。
お読みいただきまして、ありがとうございました。
ブックマークや感想、評価をいただけると、やる気に繋がりますので、
高評価や前向きな感想をお願いしたいです。
また誤字脱字がございましたらお知らせください。