第十四話
お久しぶりです。
更新の間隔が空いてしまいました。
書き溜めしながら更新していきますので、
よろしくお願いします。
公爵に連れられてきたのは、王城の地下にある空間。
あきらかに貴族の上位が足を踏み入れる場所ではないことは確かな風景である。
そんな中を悠然とかつ当たり前の足取りで歩いていく。
「すまぬな、ダイ君。こういったところへ初見で案内しなくてはならない不躾を詫びさせてもらうよ。」
とどうやらこちらの態度というか雰囲気で察したのか、公爵が謝罪の弁を述べる。
「いえいえ、上級貴族でもあるアルベルト公爵が謝罪なんてしないでください。というか、むしろ新参貴族の僕を連れて、ここまで来るということは何かあるんですね。」
と謝罪に対して、そう返事を返す。
わざわざ王城の地下にまで足を延ばす必要があるからこそ、こうして王城の地下にいる訳である。
その理由が何であれ、こうやって新参の男爵位の貴族でもある自分が王城の地下であっても訪れるには分不相応だと思う。
「さて、ここだ。遠慮なく入ってくれ。」
とアルベルト公爵が手をかけた扉は、明らかにこの地下空間にあるどの扉よりも豪華になっている。
「いや、遠慮なくといわれましても。ここは何なのです?」
王城の中であろうが、謎の部屋に通されようとしているのだから、一応の警戒は必要。
下手に入って、引き下がれない状況を作るのだけは避けておきたい。例え公爵家相手でも。
「まあ警戒するよね。といってもここでは説明もできないから、中に入ってから説明をしたいところなんだが。」
とアルベルト公爵は言い、考え込む。
何らかの計略を進めたいところであったのであろう。
実はあらかじめマリアード子爵から話を聞いていて、
公爵家間では見えない戦いが繰り広げられているとのことらしい。
そこで今回の男爵位に着くウィラー家をどう取り込むかが勝負の分かれ目になるそうだ。
回復魔法を自由自在に操れたウィラー家。
兵士には限りがある。訓練をして、兵士として使うには時間もかかる。
しかし、生死に関わるような重傷を負った場合には厳しいにしても、
ある程度までならば回復させて、復活させられることで無限ではないにしろ、
限りある兵力を使えることになる。
そういった点でも
ウィラー家の末裔である自分とのつながりを作りたいところであるのは、
貴族家の全てで思うところである。
これを教えてくれたマリアード子爵もしかりであった。
「多分、警戒されている点については、今回のこの場では話には出さないでおこう。それを約束したら、大丈夫かい?」
と考え込んでいたアルベルト公爵は話し始める。
「まあこれ以外でも警戒することは有りそうだろうけど、とりあえずは入ってくれないと話すも話さないも、何もできんからな。すまないけど、中に入ってくれるかい?」
まあ確かにここで話をしていても解決もしないし、進まないのも事実。
「ええ。わかりました。ただ、こちらとしても必要な対応は必要に応じて使わせていただきます。」
使える魔法の使い方を変えれば、護身には使えることは考慮済み。
てか、王都で実際に確認済み。まあ十分に使えた。
「構わないよ。それが行使されないように努力するし、祈ることにするよ。」
とアルベルト公爵がドアを開ける。
開けられたドアを潜るとしっかりとした会議室が広がっている。
そこに並べられた椅子の一番正面には、国王が座っていた。
当たり前だが、前世界での経験はないにしても、国王を前にして棒立ちできる訳なく、
すぐに頭を下げて臣礼の姿勢をとる。
「楽にしたまえ、ダイ君。」
と真正面に座っていた国王が告げる。
その声に合わせて頭を上げる。
「さて、ダイ君。君にはお願いしたいことがある。」
と国王からおもむろに言われる。
これは後には引けないことになりそうな予感がする。
さっきの入り口で引き返しておけばよかったなぁと思っていると。
「ダイ君、私兵団を創設してもらいたい。」
ん?これはどちらにも取れるんだが。
自分に私兵団作れと言うのは、治療を専門とする兵団を作れということだ。
となれば、危惧している方向性が高くなってくる。
できれば面倒くさい方向は遠慮したいところである。
「というのは、聞いているだろうが君と縁を結びたい貴族家が多くいる。」
聞いているというか、もう謁見での視線で嫌というほど感じてました。
「どうやら、薄々じゃなくても感じていたようだな。でだ、私兵団というか、治療を専門に行うアスクレピオスの杖の兵団を作って、王都と拠点都市へ配置して活動してもらう。それで、貴族たちへの抑止をしたい。」
ん?兵団の中身は予想通りだが、その後の「抑止」どういうことだ。
戦場への後方支援として出させるのではなく、各拠点での活動を前提とするのか?
前世界の話で言えば、病院みたいなものを用意して、そこから派遣チームとして行くということか?
うん、よくわからない。考えて見るけど、一向に分からない。
「ははは。どうやらよく分からないって顔をしているね。じゃあ説明しよう。」
国王の計画とは、
王都と各領地や他国との貿易拠点となっている拠点都市4か所に詰所を設置する。
まあ前世界で言う診療所や病院みたいなもの。
そこに兵団を配置して、領民や商人といった一般民の病気やけがを治癒していく。
あくまでも一般民のみに限定し、兵力への治癒については本部となる王都へのお伺いが必要とする。
これに反した場合には、対象の貴族領地への兵団派遣を制限する。
これを3日後に国王令として、発令する。
国王令であれば、各貴族もこの兵団へはうかつに手出しも出来づらくなる。
「同じ国の貴族であっても、仲が良いわけではないからな。小競り合い程度の戦いは日ごろからある。」
とアルベルト公爵が口を挟んでくる。
「まったくもってな。」
と国王はアルベルト公爵を睨む。
どうやらちらほらと聞いていたしょっちゅう小競り合いを繰り広げているのは、公爵家同士らしい。
睨まれているアルベルト公爵はどこ吹く風で、そっぽを抜いている。
「つまりな。国王令に反して、兵力への治癒を依頼して、各領地での領民や商人たちへ治癒を行えないとなると、領主の貴族への求心力が下がる。だから抑止となるんだ。」
と国王は言う。
確かに自分の兵力へ治癒させて、領民への治癒を行えない事態が起きれば、
自分のところの領主は、ダメだ。となることは想像できる。
意外と策士なんだな、国王って。なんて思っていたら、
「マリアードには聞いていたが、わかりやすいな。ダイ君。」
と国王から言われ、ジトっとした目で見られてしまった。
どうやら相変わらずの分かりやすいオーラなのか表情に出てた様子だ。
「大丈夫ですよ、失礼なことなんて思っていませんから。」
と自分のフォローをしてみる。
「ただ、いますぐ作れと言っても難しいだろうから、王都の学園への入学までに準備を整えて、入学時に兵団を立ち上げてくれ。」
そう国王は告げると、
「必要な人材や希望することがあれば、遠慮なく言えばいい。ウィラー家の人間は、豊富な知識と今ある常識の外側で活動すると言われている。」
と自分をじーっと見てくる。
「報告にも上がってきている。ただの9歳の少年だとは思わないで、対応させてもらうぞ。」
と言い、立ち上がり部屋の奥にある扉を開けて、国王が出ていく。
さて、思っていたとは違う方向性での面倒くさいことになりそうではある。
どうしてこうなったのかなぁと思っていたら、
「ダイ君は、本当に分かりやすいんだね。顔にも出てるよ。」
とアルベルト公爵が肩を叩きながら、
「じゃあ、お屋敷に案内するよ。一応、その任を賜っているからね。」
アルベルト公爵と扉へ向かい、王都に用意されたお屋敷へと向かった。
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