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最恐?治癒魔術師が自重しない。  作者: 大熊 猫
領都ベラルーシからガイド街へ
10/21

第十話 治癒で暴徒に巻き込まれる

衛所とお礼を繰り返すメイドさんから離れて、噴水広場を後にする。


初めは戻ろうと思ったんだけど、

余韻というか余波があって、人だかりがすごくて戻るにも戻れない。

というか、なんか異様に盛り上がっていて、戻ったらヤバそう。


そういう思いもあって、噴水広場を後にした。


「こんなにも前世界での知識が、魔法にも使えるとは思わなかったぞ。」

噴水広場から、邸宅街の方へ歩きながら呟く。


前世界では、大学院にいたこともあって、いろんな知識を得ていた。

その中でも、医学知識を興味半分で読み漁っていた。

不思議と蔵冊が多い大学図書館だったし、

朝から晩まで本を読み漁っていた。

本当は医者になりたかったけど、なれなかったしね。

そんな思いというか、憧れもあったし。


そんな知識を魔法に込めたらって思って、

使ってみたら、このありさまな訳で。


「ここまで、有用だとは思わなかったなぁ。」


そんなことを思いながら、街の中を歩いていく。


邸宅街は表の通り沿いは、集合住宅な感じで普通の庶民達が住んでいる様子。

ただ集合住宅と言っても、一軒一軒は普通に広く間取りが取られている様子で、

住みやすそうな感じである。


「ガイドの街って、結構発展しているというか、住みやすいいい街なんだな。」

辺りを見渡しながら、邸宅街を進んでいく。


表通りから脇へ入ると、集合住宅よりも一軒家が多く立ち並んでいる。

前世界から考えると、一軒家自体も大きく、広い。

その頃の知識だけで考えれば、これらを貴族邸と思っていそう。


「これ、多分工房とか工場、農場の長とかの家なんだろうな。」


ガイドの街の中において、貴族の邸宅となるのは、マリアード子爵の別宅と代官邸のみである。

なので、これ以外の一軒家で大きく広くても、平民と呼ばれる一般民の住居でしかない。

ていうか、一般民であってもこれだけの住居の差が出てくるというのも驚きではある。


ブラブラと邸宅街を歩いて行くと、南門へと続く大通りへ出た。

南門からの大通りは、人通りは少ないが、馬車の往来が激しくあり、

気を付けないと、轢かれそうな様子も観じられる。


「結構な往来があるなぁ。こりゃ事故も起きそうな感じだな。」

そんなことを思っていると、


近くで悲鳴が聞こえる。悲鳴があった方角へ向かうと、

豪華な装飾が特徴の馬車と、人がぶつかった様子。


近くまで寄ってみると、ぶつけられた人の方は、地面に横たわり動かない。

馬車の方は、従者のみが降り立ち、横たわる人に声をかけている様子。


さらに近寄って、横たわっている人を見てみると、

ぶつかった衝撃のせいか、左側の腕と足が変な方向に曲がっており、

倒れた時に地面に当たったのか、頭からも出血がある。


近くでは、何か言い争う声も聞こえる。


「そっちの馬車が寄ってきてぶつかったんだろ。」

「何を言っています。そちらが飛び出てきたんでしょ。」

「ふざけたこと言ってんじゃないぞ、明らかに道の端で倒れているじゃないか。」

「貴族と知っての発言ですか?不敬罪で断罪しますよ。」

「おう、やれるモンならやってみろ。」


どうやら、倒れた人の関係者と、馬車の従者とがどちらが悪いのかで揉めている。

それよりも倒れている人の治療をした方が良さそうなので、


「すみませんけど、衛兵の方を呼んできてもらって良いですか?」

と近くにいた野次馬だと思われる人に声をかけて、

「すみませんけど、怪我している人の治癒しますよ。」

と言い争う2人と、周囲にいる人々へ宣言して、横たわる人へ近づく。


まずは変な方向へ曲がってしまった腕と足を元の位置というか向きへ戻すために、

痛みを抑える麻酔を全身に流すイメージを魔法にして、横たわる人にかけて行く。


次に腕と足を正しい向きへ直して、外れている関節や骨折している箇所を修復治癒させる。


「これは、後ろから当たった感じの骨折だよなぁ」


そんなことを思いながら、腕も足も複数箇所の骨折があるので、

ずれないように慎重に骨折箇所を修復治癒して行く。


あらかた骨折箇所の修復治癒し、問題なさそうなので、頭部の怪我へとシフトする。


『エコー(超音波診断)』


頭の中には、特に出血や骨折などの重症箇所は見られず、

倒れた時にぶつけて出来たであろう、裂傷だけの様子。


なので、裂傷部分を診る。

どうやら運が悪く、倒れた時に尖った石に当たったようで、

バックリと切れている。また頭部の傷なので、出血が多い。


なので、

『ナーティング(縫合)』


前世界で怪我をした時に病院で見た、

縫合用の医療ホチキスを魔法で出現させて、

裂傷部分を止め縫い合わせて行く。


大きくはない裂傷なので、

よくわからないけど3個くらい「バチン」と止めて行くと、

出血が止まったので、全身に治癒魔法をかけて行く。


「よし、大丈夫かな。衛兵さんはそろそろかな。」


と顔を上げると、遠くから衛兵が走ってくるのが見えた。

しばらくすると、衛兵が到着し、言い争っていた2人へ話を聞き始める。


かたや一般民、かたや貴族の馬車でもあり、衛兵は貴族側に偏って話を聞き始める。

しかし事故の瞬間を周りで見ていた一般民もいて、

横槍というか衛兵に詰め寄る様子がちらほらと見られ始めた。


「おい、聞くのは貴族の言い分だけなのかよ!」

「完全にその馬車がぶつかっていったんだぞ!」

「そこの坊主が魔法掛けなかったら、死んでたぞ!」

「そうだ!そうだ!」


こりゃ暴徒化しそうな勢いだな。あと、こっちにも飛び火しそうだな。

それにこそこそと逃げようかと思っていたけども、どうにも目付けられたみたいで、肩も掴まれている。

市民にも衛兵にも見られているし、囲まれつつある。


「君、治癒魔法師かい?」

衛兵の一人が近寄ってきた。


「まだ見習いレベルです。でも困っているというか、助けるべく人がいたので。」

なんか、敵意が感じられる衛兵だな。

さっきの衛兵さんとは大違い。まあこちらの衛兵は若い感じだし。


「ふむ。まあいい心がけだな。人が一人助かったからな。ありがとう。」

といい、若い衛兵は貴族側へと戻っていく。


うん。感じ悪い。

そう感じたのは、自分だけではなかったようで、周りにいた市民たちがさらに騒ぎ始めた。


「お前、何様のつもりだ!衛兵だからって、命助けた人間に対する態度じゃないだろ!」

「衛兵だから、どうせ貴族寄りの判定下して、終わらせたいんだ。いい加減にしろ!」

「おい、少年も何か言え!お前、馬鹿にされているぞ!」


あれれ、こりゃまずいのではないか?またまた肩つかまれたし。

ほぼ暴徒化しているし、なんだかやっぱり巻き込まれた。


まだよく立場とか身分とか学んでないし分かっていない状況で、

騒ぎに巻き込まれたくないから、広場での一件からもこそこそと逃げてきたんだけど。


「まあ、こういうことになるとは少しは思ったけどさぁ。」

とぼそっと呟く。


そんな気持ちと考えのとは裏腹に、

周りでは市民がどんどんと衛兵と馬車を取り囲んでいく。


あっ、あの若い衛兵殴られた。きれいにあごに入ったなぁ、あごは痛そうだよな。

おっ、若い衛兵も殴り返した。平手で頭は、衛兵も痛いんじゃないか?

ああ、防具あるから平気か。市民は頭くらくらになってるな。


おお、複数人で体当たり決めてる。いや、人乗ってる馬車はダメだろ。危ないって。

やばいやばい、馬車倒れちゃうって。従者とか護衛の人が踏んばってるけど、危ないって。


あらあら衛兵、めっちゃ蹴り入れられてるし、なんかいい音聞こえる。

これ、棒切れで叩かれてるよね。

衛兵の防具だって、安くないよね。ああ、結構凹んできてるし、歪んできてる。


そんなこんなで市民、衛兵、護衛が入り乱れて、乱闘乱戦の暴動が佳境に入ったころ、

「全員、神妙に!」乱闘会場に声が響きわたる。


といって、乱闘乱戦が止まるわけもなく、

市民と衛兵の殴り合い叩き合いが過熱していく。


先ほどの「神妙に」の声の主であろう、

かなり防御力の高そうな鎧を装備した兵士が

「制圧行動を許可する!構え!」

と後方に控えていた兵群へと指示を飛ばす。


そして、兵群の構えが整うと、

「制圧!」

と兵群への行動開始を命じた。




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