稲葉山城 一五四二年
ここから主人公となる武将視点で物語を書いていきます。
不破光治は年齢があまり分からないので25歳ぐらいで考えています。
一五四二年 稲葉山城
私、駒千代は、父上に連れられて斎藤山城守利政殿が納める稲葉山城へと向かっていた。
「駒千代よ、此度はお主を利政殿にお目通りいたす。くれぐれも礼を尽くすようにいたせ」
「父上、何も居城を大垣から津屋に移してすぐに行かなくても良いのではないでしょうか?」
「なに、利政殿が頼芸と手を組んだ織田信秀と朝倉孝景との戦の際に朝倉方面に行くといわれてな、その際わしらは長島の一揆に備えよとの命でな、元服前では今しか機会がなかったのよ」
私が生まれて八年の間に美濃の情勢は大きく変わっていた。
元々美濃を納めていた土岐氏の者たちが尾張や越前方面へと追放され、利政殿は正式に斎藤家を継ぎ、美濃の中部と西部を手中に収めた。父上は長島の一揆勢や織田信秀との小競り合いが大きくなってきたため、大垣城を稲葉良通(後の一鉄)殿に譲り、自らは津屋城を新たに築城し、福東城の二カ所を任されるようになった。
この際に稲葉良通・安藤守就・氏家直元・不破光治・杉田義直の五人を総じて西美濃五人衆といわれるようになり織田・六角・浅井・朝倉・綾小路に対応する形に居城を任されていた。
「では、利政殿は安藤殿の元へということですか?」
「左様、安藤殿だけでは朝倉教景を抑えるのは厳しいからな」
私は父上の話を聞きながら訓練場らしき場所に目を向けた。
話をつづけながら父は、
「ふむ、やはり稲葉山の兵の錬度は相変わらず高いのう。身体強化の錬術が素晴らしいのう」
「確か、斎藤家の固有錬術は身体強化でしたね」
「うむ、身体の攻撃・防御・移動力を高めることが出来、上昇値も当主の能力値によって大きく上昇する」
この日の本には昔から錬術という不思議な力を持つ者がいた。年月が経つにつれて、ある特定の能力を持つものは帝と呼ばれ、ある者たちは公家と呼ばれ、そして、武将と呼ばれるものたちが生まれ落ちた。
「大抵の武家たちは一つの固有錬術しか持っておらんし、持っておっても主君の固有錬術がそのまま与えられる可能性が高く汎用性も無い。しかし、それ故に下剋上などというものがまかり通っている訳ではあるがな」
「父上は身体強化は得ることが出来ませんでしたしね」
「わしら杉田家は少し特殊ではあるからな」
私は、そういいながら杉田家の固有錬術である鑑定を訓練場で指揮している者に使用した。
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斎藤義龍
能力値
統率 :六八
攻撃 :七五
防御 :七〇
移動力:五〇
内政 :六〇
外交 :七〇
謀略 :七〇
錬術
身体強化(中):攻撃・防御・移動力が一〇上昇する
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「あれは、義龍殿ですね」
鑑定を使用した男を指し父上に尋ねた。
「うむ、お主も鑑定を会得出来たようじゃの。義龍殿も精進しておるようだが、利政殿には今だ及ばんな」
「利政殿はそれほどのお方なのでしょうか?」
「お主もあのお方を目にすれば分かるであろうよ。さて、もうすぐ利政殿が来るが用意はよいかの?」
「はい」
少しすると、廊下の方からこちらに向かって歩いてくる音がする。
私は父上と同じように頭を下げた。
部屋の中に入ってきたお方が、
「面を上げよ」
そう言い放ったのを確認した後、私は顔を上げた。