武器(2)
「合……格……?」
俺がキョトンとする。
「そう。合格さ。」
ノームも俺もキョトンとしていた。
「何が…?」
うーん、と考えながら、ルークが答える。
「簡単に言えば…このナイフに相応しいかどうか……かな?」
ノームはすかさず、
「普通のナイフじゃないのか?」
と聞く。
「このナイフはね、もう死んだ私の主人が残したものさ。主人は死ぬ時こう言ったよ。このナイフは、相応しい者に渡せと。相応しい者以外に渡しても、なんの価値も無いと。」
沢山の情報が一度に頭へと流れ込む。
「そして、こうも言っていた。」
追い付かない頭を無理矢理整理させる。そして、ルークの言うことを聞く。
「相応しい者は、このナイフを見ると、化け物だと思うらしい。一見普通のナイフだ。どこでも買えそうな。でも、これは違うらしい。『生きている』んだ。そして、相応しい者にはそれが『視える』。どんなふうに見えると思う?それはね」
嗚呼、確かに、視える。
なんだ、お前の事か。
「「真っ白な子供。」」
ルークと俺の声が重なる。
まるで、
「シー君のような真っ白な子供。」
俺の心を見透かしたかのように笑うルーク。
「君は適正者だ。さあ、受け取れ。」
ルークがナイフを差し出す。
真っ白な、子供。
お前は…………
「鬼か。」
俺はナイフを受け取った。
ナイフを受け取った瞬間、俺は真っ白な空間に居た。
「嗚呼、なんだ、結局運命の通りに進んで行くんだね。」
子供が話す。
「『彼』は、まさに神のようだね。全て思い通りに進めて行く。」
子供は話し続ける。
「僕は昔から君の中に居る。この武器は、僕と君を合わせる為に、『彼』が作った物さ。」
子供は休まず口を動かす。
「君は、僕だ。僕は、君だ。しかし、昔、君は僕を隔離した。『現実』から逃げたかったから。」
子供は笑う。
「君は、分かっているんだろう?僕の正体。」
嗚呼、コイツは、
「鬼」
不意に涙が一筋、頬を濡らした。
子供は手をのばす。
「それでこそ我が主だ…これから数年後。君をまた悲劇を襲う。負けるな。大丈夫だ。」
俺は不意に目が覚めた。
この匂い、この天井、この感触。
「ノーム家か。」
「おっ!起きたか!」
ノームがやって来た。
俺達の仕事は工事現場の近くにあるノーム家での住み込み。
宿代が浮くから有難い。
「何故、俺はここに居る?」
ノームに問う。
「お前さ、ナイフ受け取った途端倒れたんだよ。ほれ、これ。」
ノームが俺に向かってケースに入ったナイフを投げてきた。
「俺には普通のナイフにしか見えねぇんだけどなぁ?お前ら一体何者なんだよ」
俺はナイフをマジマジと見つめる。
底がないように、真っ黒なナイフ。
なのに、この中に居るのは………『真っ白な子供』
「あっ!そう言えば、これ、いくらだ?」
ノームは思い出したかのようにポケットから紙を取り出して、俺に渡してきた。
「らしいぞ。」
紙にはルークからのメッセージが書いてあった。
『ヤッホー!元気?ナイフ代は元々、相応しい子が見付かったら、ただで渡すつもりだったから、要らないよ!ケースはおまけ♡』
ルークらしいと言うかなんと言うか………