走り続けた、その先には
ある日、私はある少年を拾った。
死んだ息子の服がピッタリだったので、渡した。
温かいご飯と、お風呂も、提供してあげた。
「親御さんは?」と聞いて、少年は、答えた。
「死にました。」と。
「お家は?」と聞いて、少年は、答えた。
「焼かれました。」と。
「ご兄弟は?」と聞いて、少年は、戸惑い、答えた。
「死にました。」
「親戚は?」と聞いて、少年は、答えた。
「死にました。」
「お名前は?」と聞くと、微笑み、
「…………███……███です。」と答えた。
最後の名前の質問のとき、微笑んだ少年の顔は、とても、優しく、綺麗だった。
「大切な、大切な名前です。」
その次の日、███は家にはいなかった。
昨日までザーザーと降っていた雨は止み、明るい日差しが差し込んでいた。
俺は貰った上着のフードを被り、街にやってきた。
前の村より、ずっと栄えているようだった。
お金は、心許無いが、少しだけあの村で貰っていた。
とりあえず今日はこれで過ごし、明日から職を探そう。
こんな少年、雇ってくれる所があるといいが。
「宿を貸してもらいたい」
「部屋は銀貨1枚。食事は各自で調達しな。」
なるほど、そういうスタイルか。
「分かった。これでいいか。」
「ぴったり頂いたぜ。部屋は5号室だよ」
ぶっきらぼうに鍵を渡された。
これで寝泊まり出来るところは出来た。
飯は…昔は何日も飯が無かったりしても生きていたし大丈夫だろう。
だが、夜には腹が空いていた。
腹が空くという感覚は、昔は無かったものだ。
きっと、あの村で、いつも、美味しい、温かいご飯を貰っていたからだろう。
「参ったな…どうするか…まあ…我慢するかな…」
その夜俺は眠りに着いた。
俺は仕事を紹介してくれる施設に来ていた。
若い男がでてきた。
「仕事を探したい。」
「はぁ?兄ちゃん、何歳?」
「…………分からない。多分だが12歳程度だ。」
「兄ちゃん、そんな子供を雇ってくれる所なんて…」
矢張りそうか。
「…労働時間は気にしない。住み込み式も大歓迎だ。宿代が無くなるからな。それに力には自信がある。」
「自信ってもなぁ、その歳の自信はあてにならないからな?」
「雑用でもなんでもいい。労働時間は本当に気にしない。でも、出来るだけ金が欲しい。」
「…………分かった分かった。力仕事をやってみな、そこに俺の知り合いが居る。色々教えて貰え、して、自分の無力さを理解するんだな。」
「場所は、ここな、」
地図をくれた。
俺は地図をクルクル回していた。
何故かって?
「兄ちゃん……もしかして……地図……読めないのか?」
ギクッ!
正にそんな感じだったんだろう。
「よ、読み方は大体分かる。ただ、実戦は初めてだ。」
「実戦て……」
「げ、現在地さえ分かれば、た、多分行けるから、大丈夫だ。」
「………どうせ明日からだろ?送ってやるよ」
今日から行こうとも思っていたのだが…
「良いのか?ならば有難いのだが…」
そんな事、して貰っていいのだろうか。
「良いんだよ。お前さんが一人で行く方がなんか怖いからな。それに丁度明日は休みだ。」
「……有難う。」と、俺は頭を下げた。
こんな事をするのは、いつぶりだろう。
アイツらにも、言えなかった、『有難う』
また、後悔するのは、嫌だから、言おう。
言っておこう。
『有難う』を、しっかり、沢山。
「兄ちゃん、名前は?」
「……███…███だ…」
「おkおk。俺はリビア。よろしくな。」
「あぁ、よろしく。」