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忘れられない人が居る  作者: 双葉 あおい
2/7

名前・秘密の場所

「名…………前……………」

名など無かった。

いつも鬼の子や、忌み子、罪人と呼ばれてきたから。

忌み子には、罪人には名は要らないと、言われ続けたから。

名は、1人の立派な生き物(ヒト)という証拠。

俺には、要らない。


「無いよ」

「え?」

「俺に名前は、無いよ」

「なんで?」

「俺は………馬鹿だからかな………」

「よくわかんない」

「だろうな」

「じゃあ、お名前付けてあげる!」

「え?本当か?」

「うん!」

「じゃあ、頼む」

「えっとねぇ…じゃあ…………███!███だ!」


名前を付ける。

それは動作もない事だ。

名付けられた人物は、その名前を名乗れば済む話でもある。

しかし、俺はその()()が、どうしても、

ありがたくてたまらなかった。


()()()()()」その一言が、口から出なかった。




「シー様!おはよう!」

「ん…あぁ……ミルか……おはよう」

この子はミル。

俺の名付け親とか言うやつでもある。

年齢は確か8歳。

ちびっ子組では最年長と時々偉そうにしていた。

俺が1番気に言ってる奴。

俺に1番接してくれる奴。

「あっミル!また抜け駆けしてる!俺たちもシー様と遊びたいのに!」

「そうだそうだー!」

「ミルはいっつもおいしいとこだけを持っていくんだァ!」

6歳のアルと、5歳のミミと、6歳のべナ。

ミルと一緒に、俺にひたすらまとわりついて来る奴ら。

「あーもう。全員遊べば問題無いだろ?()()()()()()行くぞ」

いつものところとは、子供4人と、俺との秘密の場所。

いつもそこで遊んでる。

「あら、いってらっしゃい。私にも秘密の場所を教えてくれないかしら?」

「だーめ!」

「ラベ様と私達の秘密!」

微笑む、村人。

笑う、子供達。


この時は知らなかった。こんなに楽しい生活が、崩れ落ちるということを、それも、忌み子(自分)せいだなんて。



「オマエノセイダ」



「ハァハァ………………はっ!」

「あっシー様やっと起きたァ!」

「シー様ったら昼寝長すぎ!」

「皆もう起きたよ!」

あぁ、そうか。

俺は秘密の場所に来て、昼寝をした。


()()()()()


俺らはここの事を()()()()と呼んでいる。

村から少し離れた、大きな桜の木の下。

この桜の木は、季節など関係なく、毎日咲き誇っていた。

何故こんなに綺麗な場所に、大人達は来ないのだろうかと不思議に思うほど、とてもとても、美しい桜の木だった。


「シー様、顔色悪いよ?」

「………そうか?」

その時、ある事に俺は気付いた。

気持ちが悪かった。

ヒトは具合が悪くなるという。

以前の俺なら、俺は気持ち悪いという事にすら気付かなかっただろう。

俺は子供達の顔を見て、こう言った。

「今日はなんか、具合が悪いから、遊ぶのはまた今度な」

何故かは分からない。

少し躊躇ってしまった。

躊躇った理由さえも、俺は分からなかった。

キョトンとした子供達の口から出てきた言葉は、思ったものと違った。

「そうなの!?大丈夫!?」

「シー様しっかり休んでね!」

「俺も最近風邪にかかったんだよ。移っちゃったかな…」

()()

それは昔から俺には無縁だったと言うのに。

ほんと、この村に来てから毎日が楽しくてしょうがない。

「んじゃ帰るか!」

「えーー!」

「私達もうちょっと遊んでから帰るよ!」

「でもなぁ…」

俺と子供達が争っていると、ミルが任せて!という顔で

「心配は要らないよ!私はもうすぐ8歳だもん!皆を守るよ!」と言った。

「……分かったよ。何かあったら直ぐに帰ってこいよ。あとあまり遅くならないように!分かったか!」

「うん!」



家に帰った俺は、布団に包まり眠りに着いた。

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