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Case 17-4

2020年8月12日 完成

2021年3月12日 ノベルアップ+版と内容同期


 間一髪のところで弘治の異能力で助けてもらった八朝(やとも)

 過去の記憶に繋がる書物と、『カマイタチ』に関する情報が伝えられる。




【5月6日(水)・深夜(3:35) 磯始地区・弘治の家】




「『カマイタチ』が俺を狙っているだと?」


 俄かに信じがたい話であった。

 化物(ナイト)に狙われると端末(RAT)のメイン画面上で特徴的なマークが付く筈である。


 エリスがそれを見逃すはずが無かった。


「エリスは何も言わなかったぞ」

「無理もない

 眷属が呼称する『カマイタチ』とは正しい化物(ナイト)ではなかった」


 弘治が他の協力者から得た情報から『カマイタチ』について説明を始める。


 まず『カマイタチ』には化物(ナイト)の象徴である赤光点(ドット)が無く

 RAT Visionで分析しようとすると必ずエラー表示になる。


 この点に関しては八朝(やとも)達も知っていた。


「問題は、ミチザネ(アルキオネⅢ)事件以降の突然の変化だ

 我が朋友によれば『最近は襲っている最中に突然攻撃を止めて逃走した』と聞く」


「逃げた方向を調べるとある事が判明した」


 地図を取り出し、逃げた方向の線が引かれた篠鶴市の地図を広げる。

 そして引かれた線は、何一つの例外無くある一点(・・・・)を指示していた。


「太陽喫茶……」

「左様

 汝らの方へと向いている」


 一つ一つの線に時刻が掛かれており、その全てが18時以降から午前4時の深夜帯であった。


「……夜にしか逃げないのか?」

「ああ、これは我が朋友の活動時刻が夜限定というだけの話だ」


 八朝(やとも)は弘治の言う『朋友』を、同類の変人だと結論付ける。

 単に課外時刻しか活動できないだけなのかもしれないが、そこに思い至る程余裕はなかった。


6つ目(マイア)級への進化ってのは……」

「ああ、この異常行動を始めてから赤点(ドット)が現れるようになった、という話からだ」


 八朝(やとも)は冷や汗をかきながら今後の進退を考える。

 Ekaawhsと比べても圧倒的に素早く鋭い『カマイタチ』に対抗できる手段を思いつくことが出来ない。


「という事で、改めて相談がある」


 弘治が固有名(スペル)を唱え、蜻蛉(アーム)を呼び出してそれを差し出す。


「……それは?」

「我が異能たる『白蜻蛉』

 これを眷属に肌身離さず持ち歩いて欲しい、という話だ」


 その一言で弘治のやりたい事は大体わかった。

 先程間割(まわり)達から助け出された『白蜻蛉』の簒奪移動を提供する代わりに、情報は全て弘治に筒抜けとなるというものである。


「……いや、俺には」

伝令の石(アンゲルスリシオン)は止めたまえ」


 その言葉に八朝(やとも)が驚く。

 この石に関することは八朝(やとも)鹿室(かむろ)と危険視する篠鶴機関の三者しか知らない筈である。


「我が朋友たる鹿室(かむろ)にその石のアイデアを提供したのは我だ」

「そうなのか……」

「その石はまだ実験が足りない

 それを眷属の危機だと言って聞かなかった我が朋友が、眷属に無断で渡していたにすぎない」


 記憶喪失前の八朝(やとも)はEkaawhsに狙われており

 確かに鹿室(かむろ)が心配になるほどの危うい状況であった。


 だが、この裏に何かがあるとは到底思いたく無かった。


「……鹿室(かむろ)も俺の友人なんだ」

「分かっておる

 だが、努々油断はしてはならん事だ」


 暗に鹿室(かむろ)も少しは疑え、という弘治の忠告に何も答えることが出来なかった。

 弘治はコーヒーを最後まで飲み込み、結びの言葉を掛ける。


「受け取ってくれるな?」

「……ああ

 だがそっちから能力(ギフト)を発動させないと約束してくれ」

「それでこそ我が深淵なる眷属だ」


 どうやら機嫌が直ったようで、そのまま帰る準備をする。

 エリスを呼ぼうとして、戸棚の上に飾っていたものに気付いた。


 幼い弘治らしき男の子と、その妹と、白衣を着た両親が映った楽しそうな写真である。


「弘治、これは……」

「ああ、それは我の原点だ。

 家族が笑い合う、美しいであろう?」

「そうだな」


 だがこの時八朝(やとも)は別の感情を抱いていた。


(これは殺気……なのか?)


 振り向いても、いつもそうしているように弘治が作り笑いの顔を見せていた。




【5月6日(水)・深夜(4:00) 不明・隠し通路】




『何の話してふぁの?』


 未だにもごもごとお土産のお菓子を頬張っているエリス。

 話のうちの一つはエリスに関わっている事なので、質問を返す形で話をする。


「ああ

 『カマイタチ』が俺をタゲったって話だ」

『え!?』


 エリスが慌てて端末(RAT)の情報を隅々までチェックする。

 数分経ってエリスの困り果てた唸り声が虚しく響いた。


「調べても無駄だ

 『カマイタチ』にRAT Visionの分析が効かないのは知っているだろ」

『そういえばそうだね

 でも、だったらどうしてわかったのさ?』

「弘治は鹿室(かむろ)とも協力関係で、そこからこの事態を知ったらしい」


 かいつまんで先程の話をしてみる。

 だが、エリスの疑問が解消されることは無かった。


「……そんなに難しい話だったか?」

『そうじゃなくって、太陽喫茶でしょ?

 あそこにはふうちゃん以外に飯綱(いづな)さんとゆーちゃんも居るよね』


 勿論八朝(やとも)がその点を忘れるわけがなかった。

 だが、非常に強い飯綱(いづな)柚月(ゆづき)化物(ナイト)を放置するとは到底考えにくいと、エリスに返す。


『確かにそれもそうだねー』

「ああ、だが……」


 恐らくは八朝(やとも)とエリスも気がかりな点があった。

 ミチザネ(アルキオネⅢ)事件以降とは、柚月(ゆづき)が積極的な性格に変わったタイミングと符合している。


 八朝(やとも)の良心が、身内を疑ってはいけないと思考に圧を掛けてくる。


『……ふうちゃん、やりにくいんだったら』

「いや、俺がやる

 柚月(ゆづき)達と仲が良いエリスに余計な心労はさせたくない」


 その一言でエリスが黙り込んでしまった。

 何か悪い事をしたのでは、と内心でハラハラしながら見守るしかない。


「あと、それと三刀坂(みとさか)にもこの話を」

『ふうちゃん、今何時だと思ってるの?』


 つい無茶な会話を仕掛けて、エリスから呆れられる。

 やがてエリスが堰を切ったように笑い始めた。


『やっぱふうちゃんって抜けてるよねー』

「これでも、そうしない様に努力しているつもりだ」

『別にいいじゃん、それでも。

 あたしがフォローすればいいんだから、ね!』


 エリスがいつも通りのテンションで、恥ずかしげもなく言い放つ。

 八朝(やとも)も観念したのか、テキトーな相槌のみ返すのであった。




◆◇◆◇◆◇




 使用者(ユーザー)間割怜奈(まわりれいな)

 誕生日:UNKNOWN

 

 固有名(スペル) :UNKNOWN

 制御番号(ハンド):UNKNOWN

 種別(タイプ)  :UNKNOWN


  STR:? MGI:? DEX:?

  BRK:? CON:? LUK:?


 依代(アーム)  :元型

 能力(ギフト)  :元型の具象化

 後遺症(レフト) :不明




■■■■■■■■ ■■■


  ■■■■■■■ 17-a   疑惑 - Suspicion




END

これにてCase17、穴倉の先回を終了します


今回だけで様々な謎が登場しています

性格の変わった柚月、カマイタチの変貌、左の道の先にいた退魔師、そして弘治の原点

それらは全てCase30までに回収されます


今回は複数人がまた嘘を吐いています

これが今後のストーリーのヒントになります


さて、次回も乞うご期待ください

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