Case 15-5
2020年8月3日 完成
2020年8月7日 異能力情報を更新
2021年1月26日 日時変更
2021年2月5日 ノベラ版に先行して同期完了
八朝達は影割りの牛鬼を倒した。
一方そのころ、篠鶴機関内では最終シークエンスに入っていた。
【5月3日23時30分 篠鶴機関・管制塔区画】
「首星様、鳴下の一撃による損傷具合を確認……いけます!」
「では、全職員に告ぐ
対ショック体制!」
指示をオウム返しし、しゃがんで壁の手摺などに掴まるか、その場で身を屈める。
これより放たれるは時空間を利用した超巨大なパチンコ。
余波で引き起こされる時空歪曲から身を守るために全員が身構える。
『■■■■■!』
首星の放った固有名と共に、篠鶴市全域の時間が停止する。
反転色に覆われた篠鶴市は、徐々に『それ以外』と時間的に乖離していく。
これが首星の異能力・時空潮汐。
部分的に時間を停止させ、内と外の時間のズレをエネルギーとして取り出す。
この範囲を篠鶴市全域に拡大させたのが大量破壊兵器『アングル』である。
やがて収束しきった反転色の結界が
周囲に大破壊を引き起こす恒星の如き威容へと変化する。
同時にアルキオネⅢが接地し、雷の雨を降らせる黒雲を急速展開する。
「フォレストラット……レインボアまでの空亡因子のアクティブを確認
標的への方違シークエンス完了しました」
篠鶴市全域を覆う監視ドローン群・フォレストラットが
篠鶴機関本部上空に集結し縦の正円形に布陣する。
魔力で作られた被膜に恒星が沈み込むんでいく。
「……『第五吉祥神』、投射」
機関長の宣言と同時に被膜が平面へと戻り、恒星をミチザネへ向けてはじき出す。
衝撃で地上部分の篠鶴機関本部が粉砕し、篠鶴市北岸に10メートルの高潮が襲う。
その行く手を妨害する雨の如き雷を蹴散らし、ミチザネへと肉薄する。
ミチザネは腕を伸ばして防御態勢を取るが、恒星の勢いを削ぐことが出来ない。
海底まで曝け出す程の鍔迫り合いは、ミチザネの力負けによって呆気なく幕を閉じる。
上空へと進路変更した恒星と共にミチザネが、やがて地球外へと放逐されていった。
「ミチザネ、地球重力圏の離脱を確認」
「ああ、確認した」
管制塔区間全員が歓声を上げる。
書類を噛む吹雪のように投げ放ち、喜びの声を上げている。
「お疲れさまでした、首星様」
「ああ、お疲れ。
だがまだ油断はできない」
首星はこの管制塔に寄せられた全ての通信を思い出す。
速報値で1セクションで全滅判定が出る程の損害が出ていたからである。
それともう一つ危惧していたのは十死の諸力の関与である。
もしも暴動と彼らが合流したのなら、無視できない程の勢力が築かれる可能性がある。
「後壁、十死の諸力は?」
『ああ、■■殿が歴史的勝利と宣言しやがったぜ』
「そうか」
十死の諸力で最も恐ろしいのは危険思想の流布
……ではなく、闇属性電子魔術による簡易戦闘力強化である。
彼らは異能力者であればたとえX級であっても
闇属性電子魔術という『第二の異能力』を習得させる技術がある。
『学園』から数年単位で育成する篠鶴機関と異なり
兵力の補充速度が圧倒的に高いのが彼らの特徴であった。
そして後壁からの報告は
篠鶴機関にとっての脅威レベル引き上げに該当する緊急事態であった。
「……では犠牲者の内訳と、十死の諸力の新入りの潜入捜査を頼む」
後壁は一言了承を述べて通信を切る。
「右壁と左壁は『保安条例』の準備を」
「時期尚早なのでは?」
「右壁……本家の腰が重い事は貴殿がよく知っているのではないのか?」
一瞬険しい顔になったが、平然と首肯する。
一言挨拶をして管制塔区間から立ち去っていく。
『もう一つ報告良いか?』
「了承する」
『ああ、これは首星のアキレス腱となる事だ』
その言葉で全てを悟る。
それは全ての『神隠し』を生んだ『漂流者』の帰還。
一度は首星の命を脅かした姿無き暗殺者の出現。
『七殺が行動を開始した』
◆◇◆◇◆◇
【?????????? ??????????】
駄目だった。
全然彼に追いつくことが出来ない。
普段なら一瞬で詰められるこの距離も、無数の化物が邪魔して一向に近づけない。
あのままでは駄目だ。
攻撃力の無い彼ではいずれ終末の化物に勝つことはできない。
刻一刻と時は過ぎる。
塹壕戦のように1ミリ動くために莫大な時間が費やされる。
そして8時間の呪いが体を蝕み始める。
その瞬間、ピタリと化物達の攻撃が止んだ。
波を引くように左右に群れを引き裂き、悠々と歩いてくる化物が一体。
『やっと会えたね、■■』
答えたくない。
コイツは彼に最悪の未来をもたらす悪魔。
依代を握りしめる力とは裏腹に体内から力強い魔力の流れを感じ取ることが出来ない。
『哀れね。
■■■と持て囃される貴方も化物化には勝てない』
それはどうだろうね、と強がりを口にする。
悪魔は文字通り気持ち悪い哄笑の声を上げる。
『ううん、これは確定事項。
私もこの瞬間にそうなったからね』
驚愕した。
何故よりも先に、化物となっても自我を失わない妄執が恐ろしい。
『でも大丈夫。
私の闇属性電子魔術は『漂流』……』
『貴方の身体の中に『漂流』すれば、これで私の悲願は達成!』
後退ろうとするが、振り向いた先にも化物の群れ。
最早逃げられない。
『それじゃあ、可哀想で哀れなわたし』
『おやすみなさいね』
◆◇◆◇◆◇
使用者:螟ゥ繝カ莠墓泅譛
誕生日:11月4日
固有名 :DATA_ERROR
制御番号:Nom.116842
種別 :DATA_ERROR
STR:5 MGI:0 DEX:2
BRK:4 CON:1 LUK:5
依代 :薙刀
能力 :斬撃生成
後遺症 :?????
■■■■■■■■ ■■■
■■■■■■■ 15-a 降臨 - Descendant
END
これにてCase14及び15、アルキオネⅢ襲来を終了します
これを機に篠鶴市が様変わりしていきます
アルキオネⅢによる破壊もさることながら、篠鶴機関の決定によっても
勿論、主人公以外が死亡した第二異能部ですら……
そして三刀坂さんはまた『何か』知ってそうですね
それがのちの致命傷にならないようここから祈るばかりです
それでは次回も乞うご期待下さい




