表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/582

Case 14-1:■■■■■■■■■■■■■■

2020年7月25日 完成

2021年1月26日 日時変更

2021年1月29日 ノベルアップ+版と先行同期完了

2021年1月30日 修正


【5月2日・休日(20:00) 北水瀬地区・篠鶴機関本部■■■F(管制塔(メインカーネル)区画)】




 篠鶴機関、それは異能力者の治療と治安を担当する篠鶴市の私的機関。

 『月の館』を治療部門の中枢とするなら、ここは治安部門の中枢である。


 普段静かな『管制塔(メインカーネル)区画』の通路内が、今は慌ただしかった。


『おい……黒雲の減少しているらしいぞ?』

『もしかして浮上を始めるとか?

 もし北西だったら次は俺たちが……』

『だ、大丈夫だよほら業務続けようぜ』


 誰も彼もが小声で話し合うのは八丈沖海戦の趨勢である。

 深刻な物資不足という悪い知らせに飛び込んできたのがこの『非常事態』である。


 ミチザネ(アルキオネⅢ)の浮上。


 それはミチザネ(アルキオネⅢ)災害末期に必ずみられる現象で

 これ以降は災害が治まり、次の土地まで上空を周遊する。


 即ち、八丈沖海戦の主目的である『殲滅』の失敗を意味している。


『機関長より通達

 これより第一種警戒態勢に入る、繰り返す……』


 その憶測に、館内放送がトドメを刺す。

 一気に爆発したかのように人の流れが急変した。


 そんな人の流れを無視した人影が2つ……


「お、右壁(アクロ)じゃねーか」

「……左壁(ヘリア)ね」

「と、すると俺ら同じ理由って事か」


 この右壁(アクロ)左壁(ヘリア)は篠鶴機関治安組織1万人を統括するリーダーである。

 彼らは同じく管制塔(メインカーネル)へと向かっていた。


 管制塔(メインカーネル)が両名の接近に伴い自動でドアを開けると、吐き出されるように一人の男が廊下へと飛ばされた。


「……やはり、許可できません!」

「この時を置いていつ使うというのだ……

 『アングル』はその為の切り札と聞いておったが……?」


 最早魔法陣と見まがう大規模ホログラム室内に

 篠鶴機関長・金牛明彦(かなうしあきひこ)が仁王立ちしている。


 飛ばされた医療機関トップの人間を右壁(アクロ)が庇うと、次いで左壁(ヘリア)が機関長と対峙する。


「どうしたどうした、首星(アークライト)であろうお方がそんなに焦って……」

左壁(ヘリア)か、何の用だ?」


 機関長から放たれる致死の怒気を受け流しながら左壁(ヘリア)が地上の状況を説明する。


 まず、全国放送で八丈沖海戦失敗と次の落着地点|(篠鶴市)の報道がなされた。

 それによる市民の混乱が収まらず、とうとう学園前駅の(ポート)にて暴動が発生した。


 という致命的な顛末である。


「それは数分前より聞いた

 大方、俺を止めろと現当主殿より差し向けられたのだろう」

「ご想像にお任せします、首星(アークライト)


 暗に機関長の読みが当たっているという返しである。

 このままでは市民とミチザネ(アルキオネⅢ)の2つに『必要』だと……


「……俺からも言うぜ

 『イムム・クエリ』からまだ7年だ、その状態で使えば『青銅人』でも命は無いぞ」


 機関長が反論する寸前に右壁(アクロ)が駆け寄ってくる。

 端末(RAT)のスピーカフォンの使用を訪ねると、機関長は一言で首肯する。


『あ……あー……そちらは?』

「聞こえている、後壁(ボイド)

『なら結構

 なるべくこの場の全員に共有できるようにしてくれ』

「既に整っている」

『では……

 あの『アイリス社』が干渉命令を発動したぞ』


 それは篠鶴市に籍を置く多国籍企業アイリス社による動員を意味している。


 詳細としては……


  ・アイリス社内の篠鶴機関関係者(別紙リスト)の排除

  ・『影割り鬼』に対し特殊小隊・フラウンを動員

  ・それ以外の全隊が十死の諸力フォーティンフォーセス抑制の協力を行う


 独力ではミチザネ(アルキオネⅢ)討伐で手一杯となっている篠鶴機関にとって破格の条件であった。

 スパイ処理という手痛い打撃を考えても、鳴下家の代わりとなり得る。


「……『魔術卿』に『条件付きで受け入れる』と送れ」

『了解』


 そして後壁(ボイド)からの通信が終了する。

 少々の静寂の間が流れる。


「……だが、足りぬ

 第3射(ディッセンダント)でない限り、ミチザネ(アルキオネⅢ)は粉砕できぬ」

「鳴下家からは?」

「『我等の土地に土足で踏み入る不埒者に鉄槌を』だそうだ」


 それは鳴下地区に侵入しない限り不干渉を続ける、という意思表示である。

 だがそれも続く報告によって確約のものとなる。


『機関長、報告があります』

「続けろ」

ミチザネ(アルキオネⅢ)の進路予想が算出されました。

 鳴下地区を通過します!』


 これによって鳴下家からの初撃が行われる。

 さらに右壁(アクロ)が機関長を宥める。


首星(アークライト)

 私からも提案いたします」

「話せ」

「ありがとうございます

 鳴下の一撃があるなら出力(クロック)1/3(バナ)程度でも効果的です」


 機関長が押し黙り、思考を巡らす。


 出力は最大限、一撃で殺し得るレベルを調達したい。

 それ程までにミチザネ(アルキオネⅢ)の『黒雲』は危険な存在なのである。


 事実として、前回の福岡……即ち大宰府から渡辺通1丁目にかけての広大なエリアが『黒雲』によって焦土となった。


(だが暴徒用にも残さねばならぬ

 とすれば、やはり頼らねばならぬ)


 それは、あの災害じみた化物(ナイト)に唯一対抗し得る鳴下家の存在。

 もとい現当主・鳴下文(なりもとあや)は原爆の全エネルギーを弾き返し、上空のB29を消し飛ばしたという伝説がある。


 120に近い高齢となった彼女でどこまでの威力を叩きだしてくれるか、最早賭けに近い。


 だが……


(我々は二度と過ちは繰り返さぬ

 ニコシアの『セラピム(アルキオネⅠ)』、アナハイムの『ウェンディゴ(アルキオネⅡ)』……)


右壁(アクロ)の提言を受け入れよう」


 そして右壁(アクロ)より端末(RAT)を受け取り、全チャンネル帯で通信を繋げる。

 少し咳払いして喉の調子を整え、高らかに宣言する。


『篠鶴機関の全職員・全関係者に通達。

 これより『オペレーション・フォルトゥナバナ』を宣言する』


『状況を開始せよ』




◆◇◆◇◆◇




 アルキオネⅢ・雷雨のミチザネ


 それは京都の北野天満宮にて発生した3番目の顕現(アルキオネ)級である。

 空を覆い尽くす『黒雲』と激しい雷によって3つの都市を灰燼に帰した大災害である。


 化物(ナイト)は何であれ辰之中の外には出られない。

 だが、その範疇に収まらない者も存在する。


 それが8つ目(アルキオネ)級、故に『顕現級』という別名を戴いている。


 京都を焼き尽くしたのち、大阪府内にて最初の浮上が発生

 降下地点の太宰府市を同じように焦土と化した。


 続いて■■■■■■臨時■■のある■■市を襲撃、これを正式に滅亡せしめる。


 そして4度目の降下地点を総力を以って八丈島沖に固定し、ここに艦隊決戦を行う。

 これが八丈沖海戦である。


 その結果はアルキオネⅢの遁走によって失敗に終わった。


 だが経験者は語る。

 本当に恐ろしいのはアルキオネの雷雨ではない。


 それに先んじて現れる『影割り』の牛鬼である事を……

 それ故に日本政府は牛鬼の及ばぬ海上を選んだことを……



最近毎日投稿してますDappleKiln(斑々暖炉)でございます


今回は序盤のヤマ場となります

アルキオネⅢの襲撃と、暗躍する一つの影……


さて、誰が生き残るのでしょうか

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ