Case 13-2
2020年7月21日 完成
2021年1月26日 ノベルアップ+版と同期
そこに部長たちが合流してくる。
今度こそ第二ラウンドであった。
【5月2日・休日|(20:13) 篠鶴学園高等部・3F多目的室】
「これは……!」
「だが、奴の『不死性』は剥奪してやったぞ」
「何ですって?!」
合流してきた部長に化物の特性と顛末を話す。
そして部長たちの端末の電源を切り、準備は完了する。
「まさか鏡の所持者を媒介にして増えるだなんて」
「確かにそうすれば不死になりますね」
「それで、貴方の『必勝法』はここまでですの?」
「……残念だがここまでだ」
部長に嘘偽りない真実を伝える。
この化物の調査を怠ったのが祟って、これ以上の情報が見つかっていない。
「だから今から再調査を開始する」
「それはエリスさんでですの?」
「ああ、彼女も手伝ってもらう……いいな?」
『おっけー!
もうタゲられてないからじゃんじゃんやっちゃうよー!』
エリスの了承も貰う。
そして意外そうな顔をしている面々を他所に八朝が霧を呼び出す。
「三刀坂! もう大丈夫だ!」
闇属性電子魔術が解かれ
通路から水が沁み出し、十秒もしないうちに元に戻る。
「少し視界が悪くなる
だが何とかしのぎ切ってくれ!」
そして数十分が経過する。
その間八朝は霧の破壊を埋め、他の人は死闘を繰り広げる。
「はぁ……はぁ……」
体力が限界を迎えているらしい。
だがあまり動かなかった八朝は逆にその準備を整えた。
「エリス……一番危険なのは?」
『部長だよ』
「そうか……じゃあ『Cshblv』!」
唐突に八朝が部長の固有名を叫ぶ。
すると部長の身体に異変が生じ始める。
(な……回復してる……!?)
それは篠鶴市ではあり得ない事態であった。
HPとは減りはするものの増えはしない。
確かに10分間隔で完全回復はするが、連撃されれば元も子もない。
だがこれのお陰で再び攻めの姿勢に転じられる。
『Cshblv!』
部長の『輪郭切断』が触手と身体の端と重なる部分をなぞり、切断せしめる。
『ふうちゃん!
さっきの部分から■■の反応!』
「衰弱か……!」
エリスが八朝の欲しい情報を丁度良くピックアップする。
何も示し合わせていないのにも関わらず、エリスが状況を読んで判断したのである。
(ふうちゃんの霧には2つの力がある……)
一つは『笑う卵』の時にやってみせた分析効果。
先程の状態異常だけでなく、相手の力の特徴まで『カタチ』で映し出す。
そしてもう一つが霧を使った依代の補修である。
八朝の依代に拒絶反応が無いからこそできる荒業である。
(でもこのままじゃ前が……)
エリスは再び目を凝らす。
三者三様の疲弊の状態が数値に反映されている。
『ふうちゃん!
辻守君にも同じ反応が!』
「すまん……あと10分……!」
そこに烈風と擦過する巨大質量の気配を感じる。
必死になって霧の維持に回し、辛うじて瓦解を防ぐ。
「……まずは霧を潰しに来た訳か!」
どうやらあの時の直感は間違っていなかったらしい。
この化物には知性が存在する……それも『人間』と同等の……
こうして三刀坂の重量増加の切れ目を狙ってきたのだから疑う余地も無い。
「八朝君!」
「済まない……本当に今も……」
分からないと言いかけて、その口を閉じる。
先程化物が掻き回した部分から様々な『カタチ』が湧き出している。
「歯車に旗に……蝋燭?」
「それからは月の反応が出てる!」
「……水象星座か!」
八朝が使う依代には天体との照応が存在する。
hetは巨蟹宮、nahsは天蠍宮、qupは双魚宮に対応しており、これらは水の星座である。
決め手に欠けている所に、更に巨大なカタチを見る。
(桜桃は確か■■か……しかも何だこのオレンジの光点は……?)
zenは双児宮……これは風象星座でほぼ関係が無い。
双児宮エリアにある恒星は双子座γ星、馭者座α星、オリオン座β星、北極星……
「牡牛座α星……!」
「八朝君……いきなりどうしたの!?」
そんな三刀坂の返答を聞く前に頭痛で蹲る。
非常にどうでもいい元のクラスの人たちの名前……間違いなく当たりであった。
「前言撤回する
奴の正体を見破った!」
まだ続きます
双子のEkaawhsを同時に叩く、という作戦で行くそうです




