Case 12-5-1
2020年7月19日 完成
2021年1月26日 ノベルアップ+版と同期
※Case 12-4にて①を選択した人はこちらからです。②の人は次に飛んで下さい
(もうここには用が無い!
早く三刀坂と合流して、引き上げる!)
【同日同時刻付近 ERROR】
「八朝君!!」
呼びかけが濃い霧に吸い込まれる。
何度もやっても不首尾……この霧が邪魔だと三刀坂が断じる。
(一か八か!)
騎士槍を地面に突き刺して神経を研ぎ澄ます。
この霧の一粒一粒……その全ての『罪深さ』と感覚の合う瞬間を探す。
やがて、釣り合う感覚が背筋を走る。
『この者共に六百の原罪の咎有り。
呵責なく地獄の業火へと焼べよ!』
三刀坂の闇属性電子魔術である『弾圧』が、纏わりつく湿気のみ床へと叩き落す。
すると、嵐雲に奈落を穿たれたが如く、真っ暗闇が連鎖的に晴れていく。
いつの間にか自分たちは異能部部室に引きずり込まれていたらしい。
「三刀坂か!?」
八朝の姿を確認する。
無傷である筈なのに服の所々が盛大に鮮血色に染め上げられている。
そして、後ろからの気配に気づく。
「ッ! 『Libzd』!」
「三刀坂! 駄目だ避けろ!」
固有名から騎士槍を呼び出して、背後からの一撃を受けようとする。
が、八朝のそれを信じて精一杯の回避行動に出る。
丸前の一撃が騎士槍の先端を捉え、まるでバターを切るようにそれを切り落とした。
「くっ……!」
「見事だ……やはり貴様らは2人同時に屠らなくてはなァ!」
一撃目を地の属性スキル『城壁』によるパリィで弾き飛ばし、そのダメージを使って依代を修復する。
だが、それでは意味は無い。
相手は化物と依代を防御無視で断ち切る異能力持ちである。
「貴様がこの女と共に居ると強いと承知した!
ならば我は『強い』貴様を女と共に叩き潰すのみ!!」
丸前のバカ正直な大上段が襲い掛かる。
後ろに下がろうとした三刀坂が本棚にぶつかる。
「しまっ……!」
丸崎の白くひび割れた依代による一閃が
振り落ちるよりも早く右方向に身体ごと吹き飛ばされる。
八朝による初級水属性電子魔術が加算された体当たりで双方奥の壁まで吹き飛ばされる。
「三刀坂!
これを使え!」
八朝が持っていた灯杖を三刀坂に投げつける。
足元に転がる灯杖に吃驚して三刀坂が思わず叫ぶ。
「八朝君!
これじゃあ……!」
「ッ!
そいつには相殺の状態異常が付いている!」
その言葉が決定打となった。
丸前の依代に付いた罅割れの主が何であるか悟る。
意を決して灯杖を拾い上げる。
(あれ……?
やっぱり八朝君の依代って『拒絶反応』が無い!)
他人の依代を奪い取ると、継続的にスリップダメージと苦痛を受け続ける『拒絶反応』というものがある。
それへの危惧を振り切り、灯杖を丸前の方に向ける。
『Libzd!』
今まさに追い詰められた八朝にトドメの一撃を与えようとする丸前が突然膝をつく。
三刀坂の重量増加によって3倍の重力を受けた丸前は身動きが取れなくなっている。
その隙を逃さない。
「食らえ!」
三刀坂の渾身の一撃が丸前の依代を捉え、真っ二つに叩き割る。
罰則を受けて丸前が倒れ伏し、やがて意識を失った。
【5月2日・休日|(20:00) 篠鶴学園高等部・第二異能部部室】
目が醒めた丸前にいくつかの質問をした。
それらは概ね八朝の想定通りの答えとなった。
丸前には相棒とも言うべき人間が存在し、その相棒は去年化物に捕食されてこの世を去った。
その化物の特徴はEkaawhsのものと一致している。
丸前は殺したはずの仇敵が復活したこと、そしてそれが不死身である事に大層喜んでいたという。
『何度も殺せる』
そして、八朝はあと2人にも事前にEkaawhsの姿について質問している。
最後に八朝とEkaawhsを目撃した三刀坂にも同じ質問をする。
三刀坂の恐怖に震える表情を見て確信を得る。
「Ekaawhsの正体は死神……
正確には俺の世界で広まっていた『合わせ鏡の都市伝説』の方だ」
合わせ鏡の13番目には自分の死に様が映る。
バリエーションは異なっているが、死に様を見た人間が呪われるパターンも存在する。
その伝説を利用して相手のトラウマとなる姿に変化し、その心をへし折る。
そして合わせ鏡の13番目には『反対方向』があり、それがEkaawhsの不死性である。
即ちEkaawhsは2体存在し、片方が襲っている間もう片方が鏡の中で傷ついた身体を回復させている。
だが問題はこの後である。
「それだとエリスちゃん危ないかも……!」
「どういう事だ?」
「RAT Visionの旧名は『MagicMirror』……つまり魔法の鏡よ!」
三刀坂の明かした事実に戦慄する八朝。
対して丸前が呵々大笑する。
「何がおかしい!」
「成程……貴様はまた『手加減』していたか……」
「勝ち逃げは許さぬ……!
Ekaawhsなら重畳……ここに呼び出してくれるわ!!」
瞬間に校舎が辰之中の侵食に負けてボロボロの廃墟となる。
掲げた端末の上に、『上茸下燕』の巨躯が浮かんでいる。
『ふうちゃん!?』
エリスの無事に気が緩んだ一瞬を突かれる。
その手を下ろし、戒めを解いた上で刀を構える。
「さあ構えるがよい……仕切り直しだ!!!」
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Nom.187929・追加事項
・依代 :村雨
・能力 :マクスウェルの悪魔|(水分子)
・後遺症 :三方替
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■■■■■■■ 12-a 禁止 - Prohibition
CONTINUE
これにてCase12、丸前の逆襲回が終了します
すまんな、分岐が知識問題じゃなくて……
今回も同じなんだ
『八朝はチートだがクソ雑魚である』
雑魚には雑魚の戦い方がある
そして次は、何やら更に不穏な予感が……
乞うご期待ください
あ、それと次回のDEADENDも同時更新します




