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Case 01-7

2019年9月19日 改修完了

2020年4月28日 第二次改修完了

2020年7月13日 第三次改修完了

2020年12月12日 ノベルアップ+版と内容同期

2021年02月03日 上記修正内容と同期

2021年02月10日 上記修正内容と同期

2021年04月06日 内容修正

2021年09月29日 ストーリー変更(加筆)


 創造神が自分に寄こした仲間達は実はあの巨大ダンゴ虫であった。

 出口に繋がる石橋は壊され、意識を失う程の謎のダメージを受けたが、それと引き換えにダンゴ虫を討伐することに成功する。




【TIMESTAMP_ERROR+7hour 篠鶴地下遺跡群・上層吹き抜け】




「……ッ!

 一体何が……!」


『やっと……やっと起きましたか?』


 八朝は慌てて周りを確認する。

 その声は、先程の女の子……エリスの声だが未だに姿が見えない。


『あの……こっちですよ?』


 そして端末を持ち上げてみる。

 最初に見た自分のステータスウィンドウしか映っていなかった。


『……あまりじろじろ見られると恥ずかしいです』


 画面が声に反応してその明るさを規則正しく、かつ目まぐるしく変える。

 驚いて放り出しってしまった端末を両手で受け止め、全身を貫く激痛に悶絶する。


『だ、大丈夫ですか!?』

「何故ここ……に……?」

『あなたを助けようとしたからですよ』


 悶絶と精神的ショックで言葉を失う八朝に続けて状況を説明する。


『あなたが1つ目(アステローペ)級に襲われて崖から落ちた時

 このままじゃあなたが食い殺されると思って無我夢中で後を追わせて頂きました』


『今どうしてこうなっているのか分かりません

 でもお陰で貴方を守ることができました!』


 そうして八朝の目の前に放物曲面の障壁を発生させる。

 どうやら八朝(やとも)は図らずもエリスの能力を引き出したらしい。


「どうして……助け……」

『当たり前です

 あなたは私の命の恩人ですから』


 そう、八朝(やとも)に優しく語りかける。

 言っていることの意味が創造神並みに捉えどころがなく、質問しようとすると……


『今は分からなくてもいいです

 寧ろ、名前だけでも思い出してくれて嬉しいです』


 そう言われて、八朝(やとも)は何も返せなかった。


 激痛に抗いながら、引きずるように歩き続けると崖に張り付いた階段が見える。

 これを登り続けていくうちに痛みが更に引き、やがて上り終わるよりも早く元の意識状態に戻っていった。


 階段の先はあの出口のある崖の足場

 その前に創造神の姿があった。


『おめでとう!

 ここは迷宮の出口、そしてこの先はお待ちかね異世界の外界だよ』

「……」

『っとその前に、君達はあのボス(ダンゴ虫)を倒したのだから報酬を上げないとね』

「当たり前だ

 じゃあ、取り敢えずこの端末から出られなくなった彼女を出してくれ」


『……と言いたいところだが

 もう叶っているからそれ無効ね』


「は?」


 拳を振りかぶって創造神を打ち倒そうとするが

 見えない障壁に当たったかのように後ろに吹き飛ばされる。


『ふうちゃん!?』

「……」

『きみのお願いは7時間前に受理された

 この女の子はきみの願望通り端末内に監禁(ほご)された、これで僕の出番はしゅーりょー』


 無言で睨みつける八朝(やとも)を創造神はケラケラと笑いなながら指を指す。

 これ以上は徒に自分の身体を傷つけるだけなので何もしない。


『きみの行動は全部見てたよ

 仲間まで信じられないなんて、余程生前が虚しかったんだろうねー』


『無理もないか!

 きみは確かあの島の山奥で……』




『やめて!!!』




 突然、エリスのものとは思えない迫力の声が遮る。

 それに観念したのか、溜息を吐いて話題を変える創造神である。


『そんなきみに足りないのはズバリ青春さ!

 そしてこの世界はそんな青春ができるような異世界なのさ!』


 それはあの芋虫達が口にしていた『異世界転生』の内容にも似ている気もする。

 だが、自信満々な創造神に反して八朝(やとも)は渋面を深くするしかなかった。


『その顔は信じてない顔だね!

 でも、この世界は君が『青春』をすることで救われるんだ、嘘じゃないよ』


 当たり前だ。

 もう既に記憶と創造神の言う事に齟齬が起きている。


 だが、どうしてかエリスの証言も創造神側であった。


『うーん……君が異世界人かって事だけど

 君は間違いなく異世界転生者だよ、それは僕の過労を以て保障するさ』


 創造神がウインクしてみせる。

 だが、それが自分に向けられたものではない事に気付く。


『でも初心者の君だとちょっと不安だから異能力を授けたんだけどね

 まさかもう一つ持ってたなんて、確かに良い買い物だったかもねー』


『君の能力は2つ

 使命(オーダー)から生まれた『記憶遡行』と、生前の才能である『状態異常付与』』


『どっちも戦闘向きじゃないのはこの世界ではきついかもね』


 確かにあの戦い方では身が……

 思考を読んだ創造神がジェスチャーで遮る。


『この世界には異能力者のみを襲う化物(ナイト)がウヨウヨいるのさ

 あっ化物(ナイト)というのはさっきのダンゴ虫の事で、倒せば色々なアイテムを落とすけど……』


『あのダンゴ虫で最弱クラス(・・・・・)なんだよね!』


 その言葉通り創造神の身体が半透明になって徐々に消え始める。

 片手で支えて体を起こし、消えゆく創造神を睨みつける。


「最後に一ついいか?」

『どうぞどうぞ』

RE(レーシュ・ヘー)って何だ?」




『キミが知らなくてもいい事だよ』




 その顔で確信する。

 この創造神(バケモノ)が、あの仲間達を『騙した』事を……


「いつかお前を捻り潰す」

『おーこわいこわい

 それまではそのメモ帳を頼りに頑張って生きてねー』

 

『あ、それと『記憶遡行』じゃ広すぎるから

 勝手に『死の瞬間の記憶』にしといたから、じゃーねー』


 気の抜けた別れの挨拶が迷宮内に残響する。


『どうしましょうか……?』

「言うまでもない

 使命(オーダー)を達成して、エリスを端末から解放する」


「それまでは、俺がエリスを守り続ける」


 一歩外に踏み出す。


 初めに風を感じた。

 一瞬だけ屋内の埃っぽい感触を覚え、それ以降は自然な空の澄み渡るような涼風を浴びた。




 迷宮(チュートリアル)を抜けるとそこは……。




 初めに風を感じた。


 一瞬だけ屋内の埃っぽい感触を覚え、それ以降は空の澄み渡るような涼気を浴びた。

 堪らず見上げると満天の星空……はなく疎らな一等星のみの夜空が目に飛び込んでくる。


 そう、ここは明るすぎた。

 空の星以上に輝く街灯、窓から漏れる室内灯、瞬くランプの列、峰々に隠れて光背(ハイロゥ)だけを映す太陽。


 彼が事前に聞いていたものとはまるで違う。


 『あの人たち』はここが異世界だと言っていた。

 やや古い世界で魔法を駆使し、前世の悔いをやり直せる場所だと……


 ならば彼が目撃すべきものは明るすぎる天の川、暴力的なまでの草の臭い人の気配がほぼない平地に、かすかに残る川の人工物(はし)


 中世ヨーロッパ風の世界観が穴倉から出てきた彼を打ちのめすはずであった。


 握り締めるRAT(端末)から不安そうな声が漏れ出てくる。


 俺は『彼女』を元の姿に戻してあげなければならない。

 だが、やらなければならないことが多すぎる……




  石による災禍

  埋毒の目覚める時

  万魔の恐るべき侵略

  ■■からの復讐者




 そうしていくうちに、警察らしき姿の人間がこちらに走ってやってくる。

 恐らく、こちらを指差して警察を誘導している人影が通報したのだろう。




 これではまるで……




【4月某日 篠鶴学園・2-3教室】




(そうだ、俺は……)


 八朝(やとも)は記憶の海からある一つの真実を掴む。

 本当に自分は三刀坂(みとさか)を知らない、知っている筈が無い。


 なのに彼女が自分を知っているのは一体どういうことなのか。

 いや、そもそも彼女の話に付き合うようになった理由は一つしかない。


 『石による災禍』


(何を指しているのか分からない

 だが間違いなくエリスを人間に戻すための障害に成り得る、だから……)


 そう思っていた筈なのに、いつの間にか彼女の話を信じてしまった。

 一体何が起きているとでもいうのか。


「……ッ!」


 八朝(やとも)は急な頭痛を歯を食いしばって耐える。

 叫び出したいほどの苦痛の果てに、身に覚えの無い声が聞こえだす。




『耐えてくれ、僕にはこれしか……』




「おーい!」


 その幻聴は三刀坂(みとさか)の陽気な声に遮られる。

 周りの声がやや騒がしい、どうやらいつの間にか休み時間になっていたらしい。


「本当に大丈夫? 保健室行く?」

「いや、もう平気だ

 心配を掛けてすまなかった」

「うん、元気ならよろしい!

 次の授業は『演習』だからもう行くね」


 そう言って三刀坂(みとさか)が紙片を渡すと足早に去っていく。

 既に着替え途中で半裸となった男子がいるのだから無理もない話である。


(何だ、授業でもないのにどうしてこれで……)


 八朝(やとも)が紙片を開く。

 その瞬間に世界が凍り付くような驚愕に襲われた。


『ところで八朝(やとも)君って後遺症(レフト)が『気絶無効』だったよね

 さっきウトウトしてたみたいだけど、気絶無効って眠れなかったはずだよね?』




八朝(やとも)君って、本当は誰なの?』




◆◇◆◇◆◇




 DATA_LOAD...


 SUCCESS




 使用者(ユーザー):創造神?


 固有名(スペル) :???????

 制御番号(ハンド):????????

 種別(タイプ)  :??????


  STR:5 MGI:5 DEX:9

  BRK:0 CON:9 LUK:0


 依代(アーム)  :???????

 能力(ギフト)  :異世界人の対世界変換

 後遺症(レフト) :地下遺跡群から脱出不能




 ■■■■■■■■ ■■■

  ■■■■■■■ 01■■   転生 - Resh He




END

これにてCase1

チュートリアル迷宮の回を終了いたします




【■■の書・認証完了致しました】




『レーシュ・ヘーは、どうやらヘブライ文字のようです

 これは『樹状の神力の降下』を表すカバラ魔術にも使われる文字です』


『創造神とレーシュ・ヘーの関係は一体何なのでしょうか?

 少なくとも、現時点ではどうあがいても明らかにすることはできません』


『それと『死の瞬間の記憶』ですが鷹狗ヶ島が気になりますね

 それを知るには普通の人より、彼と同じ転生者に当たった方が良さそうですね』




『次回は『転生者』であります

 引き続き見守って頂けると嬉しいです』

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