Case 12-4
2020年7月18日 完成
2021年1月26日 ノベルアップ+版と同期
名前を叫ぶが、反応が無い。
代わりに人の気配を背後から感じる。
【同時刻付近 ARRAYINDEX_OUTOFBOUNDS】
『あら遅かったじゃない
作戦は終了よ、早く逃げましょ』
灯杖を構える。
その状態異常は相殺、22個ある依代で唯一の対霊体攻撃手段である。
偽の部長が不相応な笑みを見せる。
「案外早いではないか
そうでなくてはな……亡霊!」
いつの間にか展開された日本刀による大上段が放たれる。
それを灯杖で受け止めて鍔迫り合いの状態となる。
「それは一体何なんだ……!
我が『水切り』を弾くとは気味が悪い!!」
「だけじゃねぇぞ丸前!」
刃と杖の衝突点から放射状に白いヒビが入り始める。
自身のダメージを相手に転写する相殺の状態異常が、互いの依代にダメージを与える。
「もう一度言うが、お前には聞きたいことがある」
「であれば俺に勝つがよい。
尤も、その状態のお前如きに負ける気はしねぇな!」
再び依代同士がかち合う音が何度も響き始める。
丸前の太刀筋を確認した八朝はある一つの結論に至る。
奴は『水を切る能力』に依存している。
具体的には彼の太刀筋がどう見ても男子学生がふざけ半分でやるチャンバラと大差が無い。
種類は違うものの、薙刀を振るう天ヶ井柚月のそれと比べて雲泥の差がある。
防戦に徹すれば相手のスタミナ切れを狙えるかもしれない。
「クッ……!」
丸前の袈裟斬り上げを杖で防ぐ。
八朝の睨んだ通り、大振りばっかりの丸前が先にスタミナ切れを起こしている。
「ならば奥の手だ!
……『Pnizzh』!」
「させるか!」
刀身を狙った灯杖の一撃が虚空を滑る。
丸前の姿が掻き消える。
どころかまるで急速に日が暮れたように部屋の中が真っ暗になる。
「何だ……ッ!」
真後ろから恐ろしく冷たい一撃が上から下に駆け抜ける。
それだけでまるで全力疾走した後のように身体の調子が悪くなる。
「畜生!
エリス! 頼む!」
八朝に姿の見えない相手の気配を察知するような極意は無い。
その場から逃げるように前へ前へ全力疾走する八朝。
だが一向にエリスからの応答が無い。
代わりに数回ほど切りつけられる。
「エリス!
……これは一体どういう事だ!?」
走った事で腿に何かが入っているような違和感にようやく気付く。
ポケットから取り出したRATに驚愕する。
(さっきまで俺の周りを浮遊してたんじゃなかったのか!?)
普段のエリスがその他の端末と同じようにポケットの中で大人しくしている筈が無い。
しかも、呼びかけられれば勝手に電源を入れてくれる端末が死んだように真っ黒になっている。
すんでのところで丸前の一撃を躱し、手動で電源を入れる。
モニターに映ったのはメイン画面ではなく、RAT_Visionの解析結果画面であった。
EkaawhsEdrumn
階級:4つ目級
本性:不明
解析結果:
4、死霊、都市伝説、鏡、未来視、類感魔術……
「何だコレは……」
ブロックノイズを吐き続け、それ以上の操作を受け付けない端末を睨む。
少なくともエリスを始めとした友人に助けを求める手段が無い事を悟る。
未だに姿の見えない丸前に向き直り……
①退散する
②反撃の糸口を探る
ここでDEADENDに分岐します




