Case 12-1:水気を断つ能力Ⅱ
2020年7月10日 完成
2020年7月23日 タイトル名修正
2021年1月26日 ノベルアップ+版と同期
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『落ち着いたら聞いてくれ』
『……』
『恐らくアンタの異能力には『続き』がある』
『……』
『今日の『敵』を使え
多分、それがアンタの異能力の……』
『……そうやって先輩を騙したんですか?』
『何の事だ?』
『そう、ならいいわ
ありがとう……私って弱くないんだね』
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【5月2日・休日|(19:00) 篠鶴学園高等部・部室棟2F】
夕暮れの過ぎて非常灯の反照が見え始める廊下を、八朝は速足で駆け抜ける。
息も絶え絶えになり、エリスや三刀坂の声が聞こえなくなるほどに心臓が早鐘を打つ。
神出来を探し出さねばならない。
『神出来を探し出してくれ!』
『……どういう事だ?』
『神出来って後輩が
昨日あたしに『調べてくる』って言ったきり戻って無いの!』
寮長にも既に確認は取っていたらしい。
『……調べるとは何をだ?』
『よく分かんない!
でもお前に関係あるって、だから……!』
何となく嫌な予感が過る。
その後も『報酬は弾む』と言って正気を失っていた彼女を宥めるのに苦労した。
そして、ようやく第二異能部に辿り着く。
何故か休日にも拘らず明かりがついていた。
「部長!」
「あら、早いわね
早速だけど例の件について……」
「そんな場合じゃない!
急用で『夢遊病』の依頼者が行方不明だと!」
「貴方……もしかして見ていないわね?」
その指摘を受けて八朝が胸ポケットを探る。
ある筈のエリスがそこにはおらず、後ろから三刀坂と共にやって来る。
『ふうちゃん……急ぎ過ぎだよ!
さっきから部長からメールが来てるって……』
画面を確認するとそれは真実であった。
部長が呆れの溜息を吐く。
「……でも貴方の案件も、どうやら同じようね」
「そうらしいな」
そもそも神出来に新居を斡旋したのは彼女である。
寮長から直通でこのことを知ったのだろう。
だが、それだけでは『非常事態』扱いとはならない筈。
そこに残りの二人も到着した。
「部長!
非常事態ってどういう事ですか!?」
「ええ、みんな揃ったようね
では話します、今回は……」
「異能部の犯罪よ」
一瞬部長の言っている意味が分からなかった。
それは三刀坂は疎か辻守ですら同じであった。
「証拠はあるんです?」
「ええ、これが異能部の予定表よ」
いくつかの紙が渡され、1部はホワイトボードに張り出される。
特に『臨時会議』の所に赤線が引かれている。
5月2日19:30・臨時会議
「これが……どうしたのですか?」
「異能部に会議は存在しません
彼らはうちと同じく『派遣』の集団で、そもそも開く必要が無いの」
確かに第二異能部も『定例』であれば会議は存在しない。
あるとしてもそれは重大な案件について『臨時』に開催されるもので……
「おい、何個か『会議』があるんだが……」
「そうよ
そしてその日と同じ日に生徒の行方不明事件が起きてるの」
別紙の資料を促されて見てみる。
すると、今回と含め日付が完全に一致していた。
「考え過ぎ……ではありませんの?」
「そうね、その可能性もあるわ
でも今回のこのタイミングは、もう二度も訪れないと思うの」
それを聞いて第二異能部の全員が察する。
この部の設立目的。
部長による異能部への『復讐』……
「……」
全員が異能部に関わりたくない理由を抱える中
三刀坂だけが、補強する言葉を口にする。
「そういえば縁ちゃんが消える前に『調べに行く』って……」
「それは本当!?」
「う、うん……
八朝君に関係する事って」
今度は八朝以外がある事実に察してしまう。
八朝だけが付いていけそうでそうでなく、もどかしく思う。
「もしかしてEkaawhsか?」
「あら、貴方思い出したのね」
「どういう事だ?」
「いえ、あれだけ派手に壊しといて
1か月もしない内に思い出せて私も驚きよ」
そして部長がホワイトボードをひっくり返す。
裏面には別の資料が所狭しと張り付けられていた。
「これは……」
「貴方が依頼したEkaawhs事件の概要よ
端的に言えば私たちはEkaawhsの件で争っているの」
Ekaawhs被害を告発した部長と、それを隠蔽する異能部。
曰くこれが部長が異能部を辞めた理由らしい。
そして、そこに唯一の生存者である八朝が転がり込んできたという。
「まさかこれが関係しているなんてね」
「私も、これが関わっているなら納得したしますわ」
一人は元異能部という事もあり、呆れた様子で
もう一人は篠鶴市の名家の娘として正義感を燃やす。
モチベーションについては万全であった。
「因みに貴方は破壊する前に
Ekaawhsの倒し方を思いついたと言ってたの」
無言で、思い出せるかとの催促である。
首を振り、否定を伝えるが一言だけ付け加える。
「だがヒントはあった
俺だけは思い出してはいけない……と」
しかし、それを言われても誰も理解できるはずが無く
ホワイトボードを再びひっくり返して話題を転換する。
「それじゃあ詳細を伝えるわ」
部長の簡潔な作戦内容を聞く。
その頭数に三刀坂も何故か含まれていた。
今回は文字数大幅減となりましたDappleKiln(斑々暖炉)でございます
今日から数日の間、全文の構成変更を行います(二回目)
Case8以降は単に分割するだけです
部長さん、話が違いますやん()
とはいえこの誤解は後に影響を与えるものなので外すことはできませんでした
タイトル通り、次々回から『彼』との決着となります
ゆっくり1週間待っててくれ()




