Case 11-4
2020年7月16日 Case 11より分割完了
2021年1月26日 ノベルアップ+版と同期
【5月1日18時40分 南抑川地区・抑川治水公園】
「落ち着いたか?」
永遠にも思える時間の仲、ずっと沈黙していたような気がした。
八朝が差し伸べた手が三刀坂に握られ、促されるように額に……そうしてすぐ下に。
すると、彼女の震えが少し収まった。
(……やはり、俺では駄目らしいな)
八朝はこの儀式に何一つ見覚えが無い。
恐らくは『本物』なら知っているであろう『目隠し』に、胸が締め付けられそうな思いをする。
永遠とも思わせる長い時間ずっとそうして、ようやく三刀坂の嗚咽が止む。
「も、もう大丈夫」
「そうか」
八朝は解放された手を元に戻す。
三刀坂は返事ががほんの少し震えてしまったことを恥じて顔が赤くなっている。
だけどそれも一瞬、もう一度真剣な表情に戻る。
「でも、本当に神隠し症候群を治すなんて言わないで
それするぐらいなら第二異能部で危険な依頼受け続けてもいいから」
「だからそれは最終手段だ
まずは使命を達成してエリスを元の人間に戻す……治療はその次だ」
「……わかった」
三刀坂の声の調子が微妙に幼い。
涙で発音がおかしくなっているのか、舌足らずな口調になっている。
「ま、でも諦める事はしない
俺には不眠があるし、2つのタスクぐらい余裕でこなしてみせるよ」
「……」
「ただの友人でも犬死されたら悲しいだろうし
こうして傍にいるだけで居場所になるなら……ってそれは無理か」
それを三刀坂がクスクスと笑い始める。
馬鹿にされたような気分であるが、あの奇妙に幼かった声がどんどんと元に戻っていく。
「そういうのは全部の記憶を戻してから言ってよね」
「そうだな……」
何となくの気分で空を見上げる。
沈む寸前の太陽が冬の星々をかき消し
北の空には上下逆になった北斗七星が微かに浮かんでいる。
「そういえばこれも懐かしいよね」
「?」
「覚えてないの……?
あの時の、今年の1月の初めの時もこうしたって話なんだけど」
頭をひねっても思い出せない。
そうしているうちに三刀坂から呆れと共に溜息を吐かれる。
「すまない、ちょっと覚えていない」
「しっかりしてよね、もう……」
その態度の割には話す気満々な顔をしている。
という事で記憶を取り戻すがてら三刀坂の思い出話を聞くことにする。
「えっとね……私がまだ1/6級の時にEkaawhsにタゲられて困っていた時に八朝君が相談に乗ってくれて、その次の日には引き剥がしてくれたの」
「……」
「そしたら八朝君も困りに困ってさ……
あの時だっけ、八朝君が第二異能部の部長と知り合って入部を決意したのって」
「……待て」
それは……
それだけはあり得ない筈だ。
Ekaawhsにタゲられたのは鹿室と『カマイタチ』をやり過ごしたあの日の筈で、100日以上前な訳が無い。
だが……
何故か覚えがある。
いつ思い出したのだろうか?
あの『Ekaawhs』には秘密がある。
しかもそれは記憶を破壊してしまうレベルで『思い出してはいけない』。
『私が第二異能部の部長よ、久しぶりね貴方』
「どうしたの?」
「……俺が部活に入ったのは何時だ?」
「え……2月ぐらいだけど
本当にそれも忘れちゃってるの……?」
「忘れたんじゃない……無理矢理忘れたんだ」
八朝の確信めいた否定に三刀坂が目を丸くする。
(もしかして……3月の終わりにあったアレって……)
その結論に至る前に八朝の問いかけを聞いた。
「済まない、あと一つ仕事していいか?」
「……うん」
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ERROR_500・Internal Server Error
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■■■■■■■ 11-a 記憶の彼方 - Lethe's Drop
以上でCase 11、アクセス拒否回を終了します
……何を言っているのかさっぱり分からない? ええ、分かりますとも!()
メタ的に言うと三刀坂とのフラグが『あとちょっと』だけ足りません
改稿前の文章にアクセスできるのであれば
今まで三刀坂の異能力ステータスがいろんなところで記述されていた事が分かるでしょう
つまりそういう事です
まだ彼女は嘘をついている
乞うご期待下さい




