表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
581/582

Page108-1:5月10日(日)・癸丑日(Ⅱ)

2021年12月31日 完成


 私の人生何かに喩えるだって?

 そうだなぁ……怪雨(ファフロツキーズ)とかどうだろうか?


 ホラ、蛙やら魚やらもしかすると金塊が雨の代わりに降り注ぐアレさ!

 だからなんだよね、ホント『神様』って奴はさ……




 加減ってのを知らねぇんだよ!




【5月10日(日)・夜(20:08) 不明・訓練施設?】




「死体だって!?」


 金牛(かなうし)が呆れたように叫ぶ。

 マズルの先の相手が『殺せない』と悟ったが故の文句であろう。


 だが一番困っているのは最後方に控える隊長の方である。


(……迷っているな

 死なない相手だといつもの戦法(・・・・・・)が通じないからな)


 八朝(やとも)相殺(ギフト)無き灯杖(alp)で攻撃を受け止める。

 砕けた『石』と共に罅が入るも、解除してやれば何ともない。


 (taw)が映し出す『相』を見誤らない限り致命傷を受けない。


 最前列の八朝(やとも)はこの『回避』を用いて敵の攻撃を受け止める。

 そして後ろに控えている金牛(かなうし)と隊長が遠距離攻撃を仕掛ける。


 これがフラウン隊の基本戦略。


『■■■■■■』


 敵の周囲にきらきらと反射するものが疎らに映し出される。

 そして雨のような連弾が横殴りに降り注いでくる。


「……ッ! ……!!」


 回避した弾が後衛に行かないよう予め位置調整したのが効いてくる。

 敵の攻撃の無償突破の後、黒板を引っ掻くような音が劈く。


 隊長の能力(ギフト)である『輪郭切断(ギフト)』の一撃が

 確かに敵の首を切断した筈だった……なのに動きが全く止まらない。


『隊長! 耐えれるのはあと1、2発だ!』

「分かっている……でも……!」


 敵にバレない為の合図(サイン)に対して言葉で返す隊長。

 余裕の無い状態で逃げ道を塞がれる正真正銘の窮地。


(落ち着け、敵をよく見ろ、視野を更に広く保て

 いつもと同じパターンなら、一番偏った行動にこそ……!)


 幾度となく勝利を齎した『異世界知識(オカルト)』を思い出す。

 この世界に無い法則で見出した弱点を一方的に突く魔法(チート)の如き力。


 いつでも弱点は偏った行動から現れる。

 上茸下燕(Ekaawhs)の『鏡』、丸前(まるさき)(アーム)の『名』……


 ならば目の前の敵はどうなのか。

 特徴の一つである攻撃前の光に気を取られてしまう。


「しまっ……!?」


 真後ろに隊長と金牛(かなうし)が被る。

 覚悟を決めた八朝(やとも)に流星の如き石の連撃を受ける。


「ぐうぅ……ッ!」

八朝(やとも)!」


 激痛の揺れた視界に依代(アーム)の砕けた白片が舞う。

 ここで耐えてもいくらかの攻撃が後方へと飛んでいくだろう。


 僥倖にも耐えきった八朝(やとも)が思わず叫ぶ。


金牛(かなうし)! 無事か!?」

「ああ! お前がバッチリ防いでくれたおかげで無傷だ!」

「無傷だって……!?」


 それは流石におかしい、自分ごと後方も殲滅できる好機の筈だ。

 なのに攻撃が全部自分の方に飛んできた、即ち……


(俺だけを狙っている……?)


 だけではなく、視野狭窄と集中力が別の側面まで映し出す。

 攻撃前の閃光と(taw)が反応し『苗木(mem)』の相を映し出す。


 ■■(mem)の意味は『吊るされた男』、『12』……そして『水』。


金牛(かなうし)

 今すぐ電子魔術(グラム)を準備してくれ!」

「分かった! それで注文は?」


「『使節団』を頼む」


 それは暗号での初級火属性電子魔術(フレアグラム1)の呼び名である。

 小アルカナ(オカルト)から持ってきたのでバレる心配もない。


 だが、それを聞いた金牛(かなうし)が不服そうに反論してくる。


「おいおいそれでいいんかよ!

 死にそうなんだぞ!? せめて地主(フレアグラム4)ぐらいは!」

「いや、変えなくていい

 それよりも範囲をできるだけ広く保ってくれ!」


 そこに横殴りの石雨が襲い掛かる。

 やはり八朝(やとも)だけを攻撃しようと軌道が偏っている。


 なので前からの攻撃以外は回避しても良い。

 更に飛翔体が石の為、拾った鉄の残骸で弾き返すこともできる。


(助かった……広めの空間に拘ったおかげで物資だけは)


 恐らくは何らかのトレーニングルームだったのだろう。

 足場は心元ないが、鳴下神楽の前では寧ろメリットとなる。


 牽制に蹴っ飛ばした残骸を敵が避けようとする

 だが後ろの残骸に足を取られ、狙いがあらぬ方向へ。


(まだか……まだなのか!?)


 敵は残骸を踏み潰して強制的に姿勢を正した。

 その一方で金牛(かなうし)が最大範囲で電子魔術(グラム)を準備している。


 依代(アーム)の回復速度に対し敵のDPSの方が依然と高い。

 更に相手が死体の為『死体漁り(コープスピッカー)』の支援効果がゼロ。


 今も不利を覆せないまま、徐々に追い詰められていく。


「……ッ! 準備できた!」


 残骸(ぶき)が尽き、後ろを壁で塞がれた刹那

 金牛(かなうし)による超広範囲の蜃気楼生成魔術(フレアグラム1)が発動する。




続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ