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2021年12月2日 完成(1日以上遅刻)
八朝が404区画への行き方を教える。
すると、騒がれていた噂と異なり本当に404区画に侵入することが出来て……
【5月10日(日)・夕方(19:59) ARRAYINDEX_OUTOFBOUNDS】
「信じられねぇ……」
アイリス社の通路は間接照明が青なのが普通だが
その場所は暗い赤で満たされた空間となっている。
それは噂の『404区画』の特徴と一致しており……
「いや、ってか大丈夫なのか!?
アンタ確か404区画にいたからおかしくなって」
「……何故かは知らんが今は大丈夫だ」
怪訝そうな視線を感じるが、やがて溜息と共に納得してくれた。
そういえば404区画は誰も到達できない……ならば。
「いきなりで済まんが、機関長の息子だよな?」
「……何処でそれを?」
「今日の態度、そして連日のニュースでだ」
「……まあ、俺も形振り構っちゃいなかったけど、早いな」
因みに隊長も気付いていると指摘すると呆れたように頭を抱える。
そして彼の目的も気付いていた、故にこう言うしかない。
「……脱走の罪は死を以て贖われる」
「そうかい、で俺を殺すのか?」
「いいや逆だ、死んだら篠鶴市が終わる」
「随分とドライな奴やな」
恐らく言いたい事は金牛にも分かっている事だろう。
だから根強い非難を喰らうことを覚悟していた八朝。
「因みに、心配しなくても脱走しねーよ」
「……え?」
「え、じゃねーよ聞いてたのか?
俺は脱走もしねーし、この件は最後まで見届ける」
「何の罪もない他人を消して楽しむ輩を無罪放免とか俺にはできんよ」
どうやら彼の言っていることは本当らしい。
目は真剣に、そういえば視線で大枠の思考が分かるのも変だ。
「どうしたんだ、気恥ずかしかったんだぞ」
「……いや、そういや視線で嘘かどうか分かる俺もおかしいなって」
「藪から棒に、ってかそれマジかよ」
「ああ、さっきのに嘘が無いってぐらいは」
実際は更に詳しく分かるのだが、それまで言えば嫌な顔になるだろう。
とはいえ相手の方も信じて貰えたようで満足している。
「お墨付きを貰っちゃしょうがない
と言ってもコレ、割と煙たがられるんだよな」
金牛は遠い目でそうぼやく。
確かに、所謂正義の人というのは他人を無自覚で圧迫する傾向にある。
それが悪目立ちすぎて身の置き場がないのだろう。
「そりゃそうだ
突き詰めれば700人ぐらい殺すようになるからな」
「嘘つけアホ、そこまで酷くねーよ」
「まあその通り冗談なんだがな」
説得力を持たせるとはいえ、余りにも非現実的なものである。
とはいえ、これぐらいが丁度良いのだろうとは八朝も思う。
「そういやさ、お前は何の為にここにいるんだ?」
「……普通に生きる為って言ったら?」
「そんな奴がこんな『危険地帯』にいる訳ねーだろうが」
「そうだな、エリスって子を探してる
俺を救ってくれた彼女に失くした身体を取り戻させる」
割と気恥ずかしかったのだが、相手は容赦なく笑う。
とはいえ、それは馬鹿馬鹿しいのではなく、安心の為のもの。
「何だよ、お前も割とフツーじゃねえかよ
そんなお前が数人以上殺すとか冗談がキツイだろ」
「……かもしれんな」
話してみて気が楽になったのかもしれない。
取り敢えず、この404区画でエリスを見たと言ってみるも
それが先程の異常行動の原因だと指摘され敢え無く撃沈。
「だったら俺もやべぇんじゃねぇかよ!?」
「そうでもない、多分他の人には無害なのだろう」
「いやいやいや、一体どういう事だよ」
「……その前に、ここの職員が何かおかしいって話したよな」
「……そうだな、それが?」
「ここの職員の顔、全員が鷹狗ヶ島で見かけた顔だ」
金牛の『冗談だよな』も虚しく溶けていく。
『記憶遡行』という何よりの証拠がアイリス社の異常性を浮彫にする。
「空似とかじゃなくて?」
「ああ、さっき会った奴も唯一の本屋の店主
金牛に最初に話しかけてきた奴なんか島の重鎮だ」
「まじかよ……」
何故か全く縁もゆかりもないアイリス社で鷹狗ヶ島が再現されている。
……いや、縁なら数時間前に指摘されたばっかりである。
「隊長言ってたよな
水瀬神社が『イザナミ教』の神社って……」
こんなところで話が繋がって来るとは思えない。
そうすると、途端にこの赤い光の印象が不気味な物へと豹変していく。
まるで仮説から逃げるように、現実の対処を始める。
まずは404区画なのだが、二人して同じ意見となった。
隊長に報告するまで探査は中止する。
「見るからに危ねえしな、お手上げだよ」
「それだけじゃない、『手帳天狗』と一切関係が無い」
「それもそうだな
あーつまんねぇなぁ……」
「そうでもないわ
二人とも、大手柄よ」
続きます




