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Page107-3

2021年12月2日 完成(1日以上遅刻)


 青年の動向が気になり後を付けることにする。

 だが、その道中で奇妙な現象が立て続けに発生し……




【5月10日(日)・夕方(19:44) ARRAYINDEX_OUTOFBOUNDS】




「お疲れ様!」

「お疲れ様」


 終業時間近くなので、寮へと戻ろうとする職員と出会い頭となる。

 何を思ったのかそのうちの一人の顔を少し見る事にする。


(……あれ、どこかで見たような)


 怪訝そうな顔をしていたのでテキトーに誤魔化して去る。

 今はそれよりも青年の動向の方が気になる。


(あのいざこざの原因は彼が原因だ

 金牛琢朗(かねうしたくろう)、まさか機関長の息子だとは……)


 そう、彼が鳴下側に行ったきり戻ってこないのが原因である。

 だが彼が引っ掛かっていたのは機関側の『魔神沈降帯(ダエモンアンカー)』なのである。


 矛盾しているような気がするが実はそうでもない。

 『七含人』を従えた錫沢家を支配し、その『異世界知識(オカルト)』も手にしている筈。


 しかもこの篠鶴駅エリア、その当時は鳴下側の勢力下である。


(状況証拠が揃っている

 向こうが何らかの妖術を行使したっていう詭弁が通る理由も分かる……だが)


 年齢が近いというのに彼に会ったのはこれが初めてである。

 無論、『高校』や『学園』……その他の如何なる勢力にも彼の存在は無い。


 この青年に関しては分からないことだらけである。


(最悪、脱走しなければいい……それで十分だ)


 頭を切り替えた途端、周囲の異常に気付いてしまう。

 音が全く無く、人影すらも絶えた……ある噂と一致する状況である。


「404区画……」


 それはプロジェクト404と共に語られるアイリス社の機密。

 社長のみが把握し、他には一切公表されないアイリス社の社是。


 それ故に与太話が多いが、一つだけ共通している事がある。

 404に関わった者が一時的に行方不明になる。


「……繋がらない、本格的にそうかもしれん」


 立ち止まって思案を巡らせる。

 下手に動くよりもこの場に留まって救助を待つ。


 そうでなくとも『記憶遡行(ギフト)』が発動しやすいよう状況を整えておく。


 その甲斐もあって頭の中で404区画へのルートが構築される。

 この『記憶遡行(ギフト)』も『樹状呪詛(セフィロート)』と同じくチートである。


 その視界の片隅に見覚えのあるアホ毛が見える。


「エリ……ス……?」


 一瞬その名前を呼んでしまったが、実際は違う。

 記憶の中の少女とエリスが何故か頭の中で混濁していく。


(どういう……事だ……!?)


 そして人影が辻の中に消えていく。

 両天秤に救助と記憶が乗ったが、明らかにエリスらしき人影の方が優先だ。


 気がつくと八朝(やとも)は全力で人影の後を追っていた。


『ねえ、『花火』の約束は覚えているよね』

『この後さ『雑誌』買いたいんだけど……』

『じゃーん! ここが私たちのお家だよ!』


『はじめまして!』


 走るごとに過去の記憶が幻視となって現実を歪ませる。

 段々と過去に向かっていくそれが途方もなく悍ましい。


(そんな筈はない、悍ましいって何だよ!?

 でもおかしい、少しずつ何かが違う……何故だ!?)


 むせ返る土の臭いは潮の香りに。

 曇天塗れの思い出が、誰の許可もなく晴れ上がっていく。


 それと共に浮かんでくる顔は、何故かアイリス社の職員に……


『……ッ!?』


 似ていると口にしてしまえば後は雪崩を打つように。

 初対面の職員にいち早く打ち解ける理由、それは顔なじみ位しかない。


 記憶が勝手に改変されていく。


(クソ……! 有り得ない!

 なのに、一人ずつこの手で殺した所為で!)


 焦る八朝(やとも)はアイリス社の迷路のような道を進む。

 先導する少女の姿が段々と霞んでいく、それと共にこの気付きすらも……


(ふざけるな、忘れるものか!

 このアイリス社、最初から何かがおかしい!!)


 混乱する頭の中で思い出すのは記憶にない『誰か』からの指摘。


 『お前の過去の記憶は何かがおかしい

  矛盾しているのとかそういうのではなく、思い出し方がだ』


 『縁ある物見てじゃなくて、他人の記憶に触れて……

  思い出しているんじゃなくて、一から作り出そうとしているじゃないか?』


(………………)


 考えてみれば、自分の記憶は他と比べて余りにも影響を受けやすい。

 ちょっと他の人の記憶に触れただけで細部が変質してしまう。


 今までは無視できたが、『七災』の断末魔では顕著に出てきたのだ。


「まさ……か……」


 八朝(やとも)が『記憶遡行(ギフト)』を自発的に使おうとして

 記憶にもない手段(スペル)を唱えようとして……


 唐突に腕を掴まれた。


「おい危ねぇじゃねぇか!

 何か抜けてるなって思ってたら……」

「……ありがとう」

「礼はいいんだよ、同じフラウン隊だしな」


 青年が吹き抜けから落ちそうになった八朝(やとも)を止めた。

 だが正気に戻った筈の八朝(やとも)は徐にとんでもない事を口にする。


「404区画を……見つけた……」

「え?」


続きます

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