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Page105-5

2021年11月24日 完成(1日以上遅刻)


『もう一度DBに接続……成功しました!!』

『どこの誰だかは知らぬが、礼を言おう』


『全職員に指令! 警戒レベルA!

 広域時空潮汐砲(アングル)、発射シークエンスに移行!!』




【5月3日(日)・夜(23:46) 北水瀬地区・水瀬海岸】




 障壁と無数の雷が衝突する。

 雷が呪詛の性質を持っていたため、防御の無限ループは作動した。


 だが、雷が起こす激しい発熱までは防ぐことができない。


「ぐ……ぁ……!?」


 足下から炎症が滲み上がって来る。

 それは柚月(ゆづき)も同じく、まもなく依代(アーム)が砕ける。


「か……はっ……!?」

柚月(ゆづき)!!」


 替えの依代(アーム)詠唱(スペル)ではなく彼女の名を叫ぶ。


 今の八朝(やとも)の異能力のSTRは1であり、触れば拒絶反応が出る。

 もう、彼には『回復』と呼ばれる手段が存在しない。


(クソ……ッ!

 もう、ここまでなの、か……!)


 意識の全てが絶望に塗り替えられる寸前

 突如として灼熱の気配が引いていった。


 顔を上げると、そこには『弾圧(グラムアンブラ)』による十字架の聖域。

 恐らくは分子振動を抑える事で熱そのものを発生させないようにしているのか。


 その代償として、比重の重くなった砂が大地を無造作に砕いていく。


三刀坂(みとさか)……!」


 今までは彼女を心の片隅では煙たがっていたが

 こうして利害が少しでも一致すれば助けてくれる事を忘れていた。


 信じる事はできない、だが疎むまでも無かったのだと。


「……ッ!」


 束の間の後悔と静寂の先、破滅の雷が草叢のように集る。

 既に鹿室(かむろ)は雷で焼き殺されたであろう、それが後悔となる。


 そして十字架のエリアも目に見えるスピードで狭まっていく。


「まだなのか?! まだ召喚されないのか……!」


 柚月(ゆづき)をドーム型に展開した障壁の中心に動かし

 八朝(やとも)は篠鶴機関があった方向に目を向ける。


 未だにあの『時間を咀嚼される』ような独特の感覚がやってこない。

 即ち、篠鶴機関はまだ発射シークエンスにすら無いという事である。


 以上より見込み生存時間は、残り30秒。


『……ッ!

 桃花曲脈(まがれ)星辰起脈(わがめいうん)!』


 それでも最後の足掻きに『龍吼』による鉛刀一割を試みようとする。

 だが、踏み締めた龍脈が先程の灼熱を上回る熱を発し思わずのけ反る。


「……ッッッ!」


 気付くべきであった、これが彼の天満大自在天の雷であるなら

 霊的に幾重にも守られている筈の清涼殿に死をまき散らした神威に。


 龍脈なぞ、既に灼かれて然るべきだという事に。


■■(alp)!!!』


 それでも祈るように相殺(ギフト)無しの『灯杖(alp)』を手に。

 差し迫る十字架とその奥の雷の雨に抗い立ち向かおうとする。


 そして、互いの十字架が圧されて砕け

 最早光にも等しい密度となった雷の雨が再び襲い掛かって来る寸前。


 突如として視界が真っ白に焼け落ちた。


「……!?」


 走馬灯かと思い浮かんだ油断を否定する。

 何しろこれは外部からの、しかもこの世の理に非ざる干渉であるから。


 広域時空潮汐砲(アングル)の始動だと期待する心を拒絶する。

 ……次なる言葉が、あの苦々しい男のものではないからだ。




鹿室(かむろ)天ヶ井(あまがい)とやら

 妾の配下となるなら、彼等を助けてしんぜよう』




 声だけで現れたのは『前の6月』の水瀬神社で見た高慢なる女。

 『七含人』を名乗り、『魔術狂』から継承されたアイリス社を統括する者。




 アイリス・ベサリウス。




「……お前は信用できない!」

『そうか、ならば彼等と共に滅びるか

 いや、お主のみは滅びることは無いだろう』

「どういう事だ!」


『お主は妾の『最高傑作』じゃ

 お主のみは死なせるわけにはいかぬからな』


 突如現れ、ヒトを全否定する愛情(ことば)を吐き散らかす。


 容認すべき所は何一つとして存在しない。

 何故なら、彼女は八朝(やとも)以外を見捨てる心積もりである。


(……)


 この、『創造神』を無理矢理女体化したような怪物の下に逃げるのか?

 いや、この女に従わなければもう二人が助かることは無い。


 最初から選択肢なぞ存在していない。


「…………ああ、二人を助けてくれ」

『賢明な判断じゃ、ならば我が社の粋を見るがいい』


 真っ白になった世界の中で、二人が更に強い障壁に包まれる。

 そして瞬時に再生された依代(アーム)は一向に砕けることは無い。


「……幻を見せているわけでは無いよな?」

『贅沢じゃの

 まあ、篠鶴(ここ)を離れる寸前に嫌でも見るじゃろう』


 何もするつもりだ、と最後まで言わせてもらえなかった。

 アイリスによる結界が転移魔術に切り替わり、外の様子が見える。


 八朝(やとも)よりも複雑精緻な障壁魔術が二人を守り

 灼熱すらも追い出してみせて、依代(アーム)は砕けていない。


 それが『天使の石(アンゲルスリシオン)』によるものだとは疑う余地は無い。


 更に、あの時を奪われる感覚が蘇る。

 その方向を見た時には既に転移の80%が完了している頃。




 最後の1秒で見た景色は以下の通り。




 『第三射(ディセンダント)』による地上の流星がミチザネ(アルキオネⅢ)

 それこそ太陽重力圏から振り切る速度で吹き飛ばした瞬間であった。




◆◇◆◇◆◇




 結果報告


  ・七災討伐:完遂

  ・ミチザネ:撃滅完了


  補足事項:『七災之伍(天底に沈む交差点)』のログが消滅した




Interest RAT

  Chapter 15-e   喚起 - The Embodiment




END

これにてPage105、浄化の回を終了いたします


まずは七災及びミチザネ討伐おめでとうございます

これからも色々な『厄介事』がありますが、活躍にご期待いたします


……まだ一つ残ってる?

ははは、何のことやら(震え声)


さて舞台は篠鶴市からある場所へと移ります

もう学園生活もへったくれもないね、最初からでしたけど()


次回は『再会』

それでは引き続きよろしくお願いいたします

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