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Page105-2

2021年11月21日 完成(1日以上遅刻)


 『これは先生の勘だが

  異能力には隠しパラメータが存在する』


 『例えば、発動機序などがそうだ』


 『人文学のような『概念の押し付け合い』に終始したり

  逆に自然学のような『徹底的な相互関係』に基づいたり……』


 『異能力『以外』を修める際に、この違いはとても重要だ』




【5月3日(日)・夜(23:10) 北水瀬地区・水瀬海岸】




「これは……ッ!」


 今だ衝撃が鼓膜の中に残り、頭痛を催しながら起き上がる。

 のろのろとした景色の中に火山の如き荒れ地が現れる。


 ここが砂浜だったと信じる人間はそうそうおるまい。

 そのレベルの破壊の中心に、倒すべき炎の魔神が待ち構える。


(障壁がいとも簡単に貫通した……

 じゃあさっきの爆発は『魔術』によるものじゃない)


 八朝(やとも)は直前の予感が当たった事に顔を顰める。


 この障壁魔術が『魔術』を完全に防げるなら『科学法則』はどうなるか。

 例えば、全方位に障壁を発動したとしても窒息しなかった経験が答えとなる。


 防がない、どころか無いものと見做される。


『■■■■■』


 魔神と、お付きの2柱が言語とは思えぬ音を奏でる。

 共に吸い上げた大地の一部を手の中で別の形に作り替える。


 それは『Minomotoboshi』が武器として使った波動兵器。

 即ち、『本物』が記憶遡行(ギフト)で見た未来科学の超兵器。


「……ッ!」


 逃げる、そこに石をも穿つ地上の流星雨が襲い掛かる。

 進路上の障害を高熱で溶かし、芋虫が食い散らかすが如き惨状となる。


 無論、それだけに終わる筈もない。


「光の……剣……」


 魔神が掲げたのは乱打ではなく一撃による粉砕。

 振り下ろされれば篠鶴市が真っ二つになる閃光の天変地異。


 逃げても無駄だ、あの剣にそんな慈悲は無い。

 避けても駄目だ、自分以外が無残に殺されるだろう。


(……ッ!)


 その気迫に障壁魔術すらも忘れて釘付けにされる。


 全てを滅ぼす筈だった振り下ろしは

 まるで排水溝に流されるかのように一点に巻き取られて消滅した。


 閃光に取り残された衝撃がダウンバーストとなり虚ろに吹き渡る。


「何が……」

八朝(やとも)君、本当に乱暴だね

 キャッチする僕の身にもなって欲しいものだよ」


 振り向くと声の主の鹿室(かむろ)が堤防の上に立っていた。

 八朝(やとも)のそばまで跳躍すると、衝撃で金属混じりの音がした。


「……あれは『天象』じゃないと思うが?」

「駄目元でやってみたら上手くいったよ

 八朝(やとも)君のお節介なアドバイスのお陰だと思うんだ」


 身に覚えの無い事を言われて困惑する八朝(やとも)

 それが彼なりの冗談だと分かる程に鹿室(かむろ)が立ち直っている。


 だが、確認せざるを得ない。


「一つ聞く、あんな目に遭っても『篠鶴市』を助けようとするのか?」

「前も今も変わりません

 魔王を滅ぼす、それだけ(・・・・)が僕の存在意義なのですから」


 鹿室(かむろ)から力強い答えが返ってくる。

 ここは彼に頼る他無さそうらしい。


「ああ、じゃあ頼む

 因みに俺は能力(ギフト)を失くした」

「問題ないですね、だって素でも強そうですし」


 そして二人で魔神に立ち向かう事になる。

 まず走ったのは八朝(やとも)で、鹿室(かむろ)は後方から支援に回る。


 そんな愚人達にレーザーによるつるべ撃ちで出迎える。


Roonjmd(ルーンジンド)!』


 鹿室(かむろ)能力(ギフト)で石の力を開く。

 封じられていた『天象』が霧となって深く風景を犯していく。


 レーザーは霧による乱反射で直ちに威力を失ってしまう。


「これでいいでしょうか?」

「ああ、上出来だ」


 八朝(やとも)(taw)を経ずにその相を確認する。

 現れたのはセフィロトで中段を横切る『(tet)』、即ち……


「……ッ!」


 踏み込んだ足は地面ではなく龍脈を捉える。

 『脈弓』による跳躍は前進ではなく上方へ、逃れるように。


 そして魔神による横薙ぎが靴底すら掠めず空を切る。


 その目的は八朝(やとも)ではなく威力を弱める霧そのもの。

 事実、この一振りで数センチ先すら覚束ない濃霧が一気に晴らされる。


(ああ、だろうと思っていた

 この状態での択は『二撃目』か『迎撃』だが……)


 障壁を貫通する『二撃目』だと非常に不味い。

 そうさせない為には次の瞬間に懐に飛び込む必要がある。


 その為に身体を少し捻り、上方の頼りない龍脈を踏み締める。


桃花曲脈(まがれ) 星辰起脈(わがめいうん)


 魔神が次の攻撃を察し、閃光の剣を捨てて立ち向かう。

 間違いなく砂嵐による『迎撃』なのだろう。


 ……砂嵐に関してはちゃんと跳ね返せると確信している。


瀉血玄黄(いぶきとなせ)!』


 着地と同時に粉砕の砂嵐が鼻先を掠める。

 着地直後の状態を起こす力も全て『龍吼』の推進力へ変える。


 魔神に向けた掌底は魔神に届かない。

 だが八朝(やとも)を殺す筈だった砂嵐の中心が遥か後方へと飛ばされる。


『■■■■■!!!』


 魔神すらも砂で削られる苦痛に耐えきれず呻く。

 臣下の二人が気付いて慌てて八朝(やとも)に照準を合わせてももう遅い。


 次の一歩でリーチ内に魔神を収め、持っていた霊符を貼り付ける。


「これで終わりだ!!」


 それは鳴下(なりもと)から託された起死回生の一手。

 魔神を『篠鶴機関』に置換し、『ミチザネ(アルキオネⅢ)』への切り札とする。


 符呪は魔神に触れるや否やその身体の悉くを無に返した。


(あとは……ッ!)


 八朝(やとも)が困憊する身体を押して勢いよく前へ転がる。

 先程いた場所に雷と雨と暴風のストリームが殺到し、全てを押し流す。


 受け身を取り、改めて暴風雨を起こした犯人を見つめる。




「どうして僕の不意打ちが分かったんですか?」




続きます

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