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Page104-4

2021年11月18日 完成(1日以上遅刻)


 『記憶遡行』から戻ると、既に『ミチザネ(アルキオネⅢ)』襲来まで秒読み。

 八朝(やとも)は急いで『七災之壱(わたれずの横断歩道)』へと向かう……




【5月3日(金)・夜(22:28) 水瀬地区・水瀬神社】




(静かすぎる……)


 ここまで進路上で篠鶴地区の繁華街を進んだのに何も聞こえない。

 灯りの下で人々が震えながらお互いの肩を抱き、或いは蹲っている。


 見上げると空の一点にぽつんと黒い影。

 恐らくアレが『ミチザネ(アルキオネⅢ)』なのだろうか。


 そして何故か水瀬地区に立ち寄る。

 それは自室にいつの間にかあった『手紙』の内容に従ったが故。


(水瀬神社で待つ……嫌な予感がする)


 辿り着いた水瀬神社はあの火災の傷跡をそのままに死に絶えている。

 鎮守の森すら焼かれ、無数の煤がこびりつく瓦礫の仮置き場と化した。


「錫沢……」


 思わず呟いたのはこの神社の娘にして、2年前に殺された上級生の名。

 この有様を見て彼女はどう思うのだろうか。


 だが返答したのは見知った声の方であった。


「やっぱりお前知ってたじゃねーかよ」

「……目生(めのい)

「おっと、俺なんかやったか?

 めっちゃ不機嫌そうじゃねーか」


 白々しそうに再会の握手をしてきたが応じる意味は無い。

 そうやって無視を続けているとやがて彼の方から折れた。


「え何? 遠海神社に刺客差し向けたのそんなに嫌だったの?」

「お前がそうされたらどう思うんだ?」

「そりゃあ再会次第目玉抉ってやりたいよ、ムカつくからな」


 最早カマを掛ける必要もない。

 彼から差し向けられた視線は『憎悪』『嫉妬』の2種類。


 明らかに妨害しに来たのだろう。


「あの手紙はお前のか?」

「会長にお願いして届けさせた、傑作だろう?」

「ああ、そうだな

 『そこがお前の墓場だ』だなんて最高に手垢がついている」


「そういうのはさ、俺に勝ってからにしなよ」


 目生(めのい)端末(RAT)のクリック音と共に後方で轟音が起きた。

 チリチリと焼けつく暴風から火属性電子魔術(フレアグラム)だと分かる。


「えーどれどれ……あった

 うーわ、お前X(バツ)級じゃんマジかよ」

「……」


 信じ難い一言だが、これは事実である。

 『記憶遡行』で使った蘇生、あれが1回限りの理由もそこにある。


 自分の『状態異常(ギフト)』を犠牲にしなければ発動しない。

 故に今の八朝(やとも)能力(ギフト)を失いX(バツ)級となった。


「それで俺に勝てるとか馬鹿じゃん阿呆じゃん」

「やってみなきゃ分かんないだろ?」

「やるまでも無いわ

 あ、因みにさっきのだけだとは思うなよ?」


 そして周囲に連続した破壊音が響き渡る。

 電子魔術(グラム)の使用制限が無い非能力者だからできる『電子魔術乱舞(グラムストーム)』。


 普通の異能力者には死よりも恐ろしい脅威なのだが……


「……弱い犬ほどよく吠えるって言うらしいな」

「ははは、今のお前じゃん」

「口数はそっちの方が多いぞ」

「数えてんのかよ、キショいなぁ」


 そして戦いが唐突に始まった。

 お互い何を求めると宣言せず、捻り潰すために詠唱(スペル)を叫ぶ。


Axyloye(アクシローイェ)!』

『……Immofa b( 万象に)e baqrqdj(命じる ) / Sptrhe( 悪し) jw(き  を) dhnomu(阻め ) / Ocufuvdm(翠力の) ai jmthjqa(守り手)x』


 障壁を張り終えていない八朝(やとも)に容赦なく劫火が降り落ちる。

 岩すらもパチパチと音を立てる超高温の世界で絞り出すように叫ぶ。


『……Hpnaswbjt(エプナスビュート)!』


 障壁で熱を追い出して生存圏を確保する。

 だが、たった一重の障壁では余波を追い出すだけでひび割れてしまう。


『……ッ!

 Immofa b( 万象に)e baqrqdj(命じる ) / Sptrhe( 悪し) jw(き  を) dhnomu(阻め ) / Ocufuvdm(翠力の) ai jmthjqa(守り手)x』

「何度張っても無駄だぞ、死にやがれ!!!」


 その宣言通りに極級火属性魔術(フレアグラム5)が何度も放たれる。

 だが負けじと障壁魔術を重ね掛けしていく。


 ……だがちょっと待ってほしい、何故こんな事が出来るのか。


 まず、この障壁魔術の目標が『隔絶』ではなく『受け止め』であることにある。

 ハニカム構造で整列させた魔力は自分の魔力として使用できるという。


 これで重ね掛け分の魔力を無限に供給できる。


(……)


 八朝(やとも)の視線は文様の動きへと。

 ある規則(カバラ)の通りに動くさまから、これが原型だと噛み締める。


 ならばできる事は他にも沢山ある筈だ。

 対電子魔術乱舞(グラムストーム)だけでなく、状態異常(ギフト)のような……


「何で張り直せるんだよ!?」

「そこに教えてくれる箱があるだろ、さっさと使えよ」

『……ッ! Axyloye(アクシローイェ)!!』


 しかも相手は『1属性』かつ『詠唱(スペル)』に拘っている。

 その他の電子魔術師(グラムテイカー)が見たら失笑物の戦い方である。


 無理もない、彼は電子魔術(グラム)の無い世界に育ったのだから……


「何だよその顔……

 まるで『お前知らないよな』ってナメた顔しやがって……ッ!」




「その顔で俺の瑠香(るか)を語るんじゃねぇ!!!」





続きます

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