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2021年11月17日 完成(1日以上遅刻)
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あれから1年が経過した。
それでも私の罪が消える事は無く……
【記憶遡行処理開始:Case104-3-2】
朝の光がカーテンの如く差し込む。
それが、この部屋の暗さを引き立たせるとは皮肉なものだ。
この部屋の中に明るいものは一切無い。
食器は油汚れの中に沈み、テレビも最低設定でほの暗い。
そして私でさえも……
「……」
鏡を見たくない、傷だらけの身体を直視してしまうから。
外に出たくない、というよりも外に出してもらえない。
それが、彼との結婚生活の全てであった。
「ふうちゃん……」
呆然と失われた人の名を呟く。
彼だけでなく、私の両親すらも今はもう地下牢で朽ち果てた。
帰るべき場所が無いと知ったのはたった数日前。
それまでは、暴力や幽閉はあれど彼の善さに期待し続けていた。
あの『花火の夜』に彼に撃ち殺された人が誰なのか知るまでは……
『ああ、今ならどうでもいいか
アレはな八朝風太っていう犯罪者だよ』
一瞬意味が分からなかった。
それまであの人が極悪非道の犯罪者と聞かされていたのに。
あの『花火の夜』に救われたから、こうして彼を信じようと思ったのに。
それが……ふうちゃんだって……?
『ま、死体は地下牢に放り込んだからバレやしない
今更お前が犯罪者を気にするなんて意味の無い事だしな』
そんな訳が無い。
確かにふうちゃんが暴走しやすい所はある。
それでも、ちゃんと話が出来れば優しい所があるってすぐに分かるのに。
そんな彼を、無実の人を殺したの?
『あ、そうそうお前の両親もウザかったから地下牢に閉じ込めたよ
いやあ、今年の『生贄』は島の人間じゃなかったってみんな喜んでくれたし』
この時点で私の心は決まった。
世の中にはどう足掻いても他人を不幸にする人間がいる。
それによって私の全てが壊されたのだから考えを改めるしかない。
その結果が、あの机の上で汚い血を吐き散らかした『死体』である。
(……馬鹿な人、変なところで神経質な癖に
大好物のハンバーグに毒が入っているなんて疑いもしなかった)
無論、毒も長く苦しめる為に致死性の毒ではなく苦痛多めの毒。
菌糸類に丁度そのようなものがあったので食べさせたらこの通り。
でも予想以上に毒が発揮され
盥一杯の血を吐き散らかして絶命した。
何故という顔のまま事切れているのが最高に笑える所。
「……あれ?」
どうしてか胸が苦しい、涙が止まらない。
私の全てを奪った鬼畜なのに、人でなしなのに。
死体を見るたびに悲しくて悲しくてしょうがない。
『……』
ふと人の気配に気づく。
何故だろうか、その人間から恐ろしく冷たいものを感じた。
逆光で見えない小さな人影、年は12ぐらい……?
『すべて、みていた
どうして、たすけなかった?』
そんなの無理に決まっている。
私は女で、あの鬼畜は男……力比べで勝てる筈が無い。
それに声に気付いたところで薬を飲まされ……飲まされ……
「あ……」
見えていた。
あの死体の側に、立ち尽くしていた黒い人影。
『彼』ならふうちゃんを生き返らせられた、なのにしなかった。
……幻滅したからだ。
自分に気付かず、その時の歓喜に縋った私を。
まだ助けられるはずなのにそうする気配も見せなかった私に。
「ぁぁ……ぁ……」
『あなただけは、さいごにしようとおもってた
でも、ほかのみんなとあんまりかわらなかった』
そうだとも、所詮私も鷹狗ヶ島の一人。
古き因習にも、生臭い権力にも勝てなかった異邦の漂流物。
そんな私へ、家族皆殺しという罰が下ったのだ。
「あなたは……」
『わたしは、このしまをおわらせるひと
いざなみの、むごたらしいおしえをころすひと』
『もうこのしまはあなたひとりだけ』
何となく察してはいた。
権力者である彼の死に周囲が余りにも無頓着だった異常さに。
身から出た錆なのだろうと思っていたが実は違う。
この人影からすらりと出てきた薙刀から全てを察した。
「あはは……」
もう笑いしか出てこない。
私利私欲に落ちた殺人犯の目の前に『救い』が一つ。
滑稽にもほどがある。
「ねえ、貴方はどんな殺し方もできるよね?」
『だいたいは』
「だったら、アレよりもぐちゃぐちゃに殺してくれない?」
『わかった』
終わりは一瞬で訪れた。
惨たらしく死ねると思ったのに、最後の瞬間まで五体満足。
罪を贖う最後の瞬間まで奪われた。
確かにこれは酷い死に方だ、よく分かって……いる…………
……。
…………。
………………。
『ねぇ、ふうちゃん』
『こんなことをひとりでやってたの……?』
◆◇◆◇◆◇
【ここから先は空白のようだ】
Interest RAT
BADEND?? 連帯保証 - Exaction
END
結局のところ鷹狗ヶ島は滅ぼされなければならない
それは元世界でも異世界でも、或いは違った『元世界』でも
イザナミ様がいる限り……




