表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
557/582

Page103-3

2021年11月12日 完成(2時間以上遅刻)&誤字修正


 『縁物が『お札』の時は絶対避けろと言われましたが……』

 『ええ、あんな啖呵を切った手前で引き下がるわけにはいきませんわ』




【4月30日(木)・昼(14:30) 磯始地区・鳴下のアパート】




 外に出るだけでも危険という事で鍛錬は筋トレのみ。

 そして身体を休める時間は丸々『瞑想』に使っている。


「……」


 『瞑想』は精神修養というよりかは魔術調整に用いる物である。

 魔術はイメージで終始する為、それを保持する為にしばし用いられる。


 そして魔術的な変化も瞑想の中で見つけるのである。


(……ッ!?

 やはり、これは今の俺に全く合わない)


 イメージ内で樹影魔術(トンネル)を使い返し風(レフト)を喰らう。


 依代(パス)がランダムで出現し、使い物にならない。

 維持できる数秒以内ならあらゆる能力(ギフト)を砕けるが、それは本意ではない。


 それに一時間前に来てくれた辻守(つじもり)の言葉が蘇る。


『これは反転じゃないです

 多分ですが、形が似ているだけで全くの別物かと』


 彼の『反転』の闇属性電子魔術(グラムアンブラ)を掛けてもらった結果である。

 『前の2月』の記憶を持っており、話が早く済んだのも有難い。


 ただ、エリスについて『妙な事』を言っていた気がするが

 今の話題にそぐわない内容なので後で考えておくことにする。


(てっきり『邪悪の樹(クリフォト)』は対の存在と思っていたが……)


 天使に悪魔、パスの形が上下逆、組み合わせも継承されたが如く。

 これで両者が別物と言う方が奇特だが、先程の『瞑想』がそれを証明した。


 更に、それら二つの作られた目的を考えると話が変わって来る。


 『生命の樹(セフィロト)』は高次の存在との対話の為に作られた『道標』で

 『邪悪の樹(クリフォト)』は低次の存在から防護する為の『警告』なのである。


 能動・受動、似ているようでその実態は大きくかけ離れている。


(それじゃあコレは一体何なんだに戻るな

 もっとよく考えろ、熟考じゃなくて違う可能性の模索で……)


 何か見落としが無いのか記憶力を総動員して探る。

 だが集中力が長続きするはずもなく、やがて疲れ果てて寝転がる。


 ぼやけた視界の中にほっぽり出した端末(RAT)が見える。


(そう言えば『今回』は電子魔術(グラム)が広まっていないんだっけな)


 それどころか『辰之中』すら影も形もなく

 電子魔術(グラム)が使えたのは八朝(やとも)と同じく『記憶』がある者で……




(いや待て、それはおかしい

 アプリ(RAT_Vision)も無しにどうやって……?)




 八朝(やとも)が弾けたように端末(RAT)の画面を確認する。

 そして昨日の分析結果検索をなぞるように努めて自然に指を動かせる。


 その指の先はアイコンが存在しない領域に進んでいた。


「裏コマンド? いや、確かこのまま……」


 指で何も無い部分をタップすると見慣れたアプリ(RAT_Vision)画面が開く。

 忘れ去られた『怪現象』を前に震えるも、同時にある情報も浮かび上がる。


「……Mag型異能力」


 それはSln型でもNom型でもない幻の制御方式の名前である。


 噂によると『1つの事を極める』事で能力(ギフト)が生じる。

 有名な例では『調布事件』の犯人の『夢に侵入する異能力』がそうである。


 そしてその犯人とは『七災之弐(鳥居印の怪異除け)』で対面した人物である。


(奴はノートに書いた妄想を『自明』として相手に押し付ける

 新聞ではあのノートは異能力に目覚める前から使用していたが……)


 三刀坂(みとさか)を始めとして電子魔術(グラム)をあるものと信じて疑わず

 先程のように何もない領域をタップして設計外の画面を呼び出したとすれば……


 ……余りにも調布事件の犯人と状況が似ている。


(だったら、障壁魔術は……そう言えば!)


 それは先程関係ないと切り捨てた辻守(つじもり)の余談。

 そうしたのは余りにも回りくどい言い回しで、解釈できる余裕が無かったから。


 だが今なら意味を理解することができる。

 障壁魔術は最初から貴方一人で発動してましたよ、という証言の真意を。


(俺が障壁魔術を使える理由……

 それに転生して初めて使ったのは能力ではなく障壁魔術だった)


 居てもたってもいられず室内で障壁魔術を発動する。

 いつものハニカム構造の障壁だが、そもそもハニカム構造というのがおかしい。


(……確かにこれは並んでいる方向への衝撃には強い

 だが垂直方向、特にこの障壁の面の方向への緩衝効果は一回きりだ)


 それは戦車装甲においても報告されている弱点の一つである。

 この構造に対して連続で衝撃が入ると防御力が著しく低下する。


 だが障壁魔術の今までの成績を考えるとそれとは真逆。

 『強すぎる一発』よりも『連打による衝撃』の方が壊れにくい。


「敵に向ける方の面に何かがあるのか……?」


 障壁の反対側に回り込み、障壁にべったりと触ってみる。

 その手を離すと六角形の構造が分離し、違う形に変わっていた。


 掌が焼けるように熱いのでさっと手を放す。

 熱くなった理由でなく、分離した六角形が作っていた文様が異様であった。


 それは『上下逆』の……




「『邪悪の樹(クリフォト)』……なのか……?」



続きます


事件概要:Case6、Case98-5~Case99

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ