Case 98-4
2021年10月19日 完成(1日以上遅刻)
八雷神を用いた『呪い返し』で十宮を撃破する
だが霧は一向に晴れず、八朝は途方に暮れていた……
【TIMESTAMP_ERROR ARRAYINDEX_OUTOFBOUNDS】
「……おかしい」
八朝は未だ晴れぬ黒霧に呟く。
『七災』は倒した、ならばもう既に現世に戻ってもいいのだろう。
だが、心当たりはあった。
(……十宮と『七災之弐』
持ってた能力も依代と縁物に関連性が薄すぎる)
これまで『七災』と黒霧の中の人はほぼ同一人物レベルで特徴が一致していた。
だが、今回はこの両者が全くの別物。
強いて言えば、分析結果で十宮の縁物が『四つ葉のクローバー』とあった程度。
この程度の一致だと飼葉と大して変わらない。
(十宮って輩も偽物だったって事か?)
それならばと思い霧と端末アプリで黒霧の正体に迫る。
まず初めに霧が夥しい数の松明……即ち『目』が浮かび上がる。
目といえば『七災之弐』が化物を従える為に与えるものである。
あのクローバーでも楓でもなかった『栞』の正体であり、十宮の能力にも……
(やはり残ってたか
それにコイツが残ってるって事は……)
すると、予想通り端末からオーバーロードエラーを表すブザーが鳴り始める。
先程彼に送り付けた『分析結果』もこれのせいで難航してしまった。
『目』の証拠と貼り付けて使う『呪符』の要素から
旱魃と関係のある冥府の神、即ち八雷神の呪詛が『四つ葉』効くと思っていた。
だが、漸く届いた分析結果は先述の通り全くの別物で
それでも反撃した結果、纏わりついていた『声』が消えてなくなったのみ。
(今回の縁物は特に見つからないと思っていたが、まさかここまでとは……)
途方に暮れる八朝に、一人で来てしまった後悔が降り積もる。
集中切れによる疲弊も相俟って足取りが更に重くなっていく。
外では今頃『彼等』が自分の悪評を広めているのだろうか。
目生という政治的に有利な要素もある、伝播は予想以上になるだろう。
もう、ここから外に出ない方が良いのでは……?
(……いや駄目だ!
まだ、エリスすら見つけられていない!)
八朝は結果として初心まで立ち返る事となった。
自分が篠鶴市で死に物狂いで頑張っているのは一体何だったのだろうか。
身を挺して守ってくれたエリスを人間に戻すためじゃなかったのか?
気の迷いを振り払い、もう一度思案を巡らせる。
そもそも黒霧なら、このまま無視しても時間経過と共に雲散霧消する筈である。
八朝がじっと手のひらを見る。
暗くて見えない……いや、手のひらが予想以上に暗すぎる。
恐らくは背景色が透過し始めたからなのだろう。
(黒霧と一緒に消される
時間は無い、奴の能力の共通点は……)
必死で考えてみるも、どれもこれも既に解き明かした所の堂々巡り。
『符呪』を与える蚩尤やら、七災之肆やら、箱家の『絶滅命令』やら。
(待て、確か箱家は『†』で絶滅の意味を加えていた……)
この特徴は『符呪』とは似て非なるものである。
そもそも符呪は神仙や天帝へ歎願の証であり
貼り付けて意味を改変する『絶滅命令』のそれとは本質から遠い。
自分の『樹状呪詛』も似たような代物であったので、正に灯台下暗し。
(歎願……一体誰に?
それに書かれているのは鳥居と七つ丸、そして三か四の……)
その特徴に完全一致するのは蚩尤ではなく妙見菩薩の方である。
七曜と呼ばれる星を司る仏であり、盗賊や目を守る神と崇められている。
そして、似たような敵と一度だけ戦った事がある。
(これが『紫府大星』と同様ならマズい
この霧が化物のように『アレ』を目指して落ちて行ってるなら……!)
妖魔の主と称した『紫府大星』は、自らの正体を落として地上を焼き尽くした。
そして、それを示唆するように闇の中から星のような光源が現れる。
光は段々と広がり、それが神出来に見せてもらった『祇園宮』に。
いや……篠鶴市の『集合海の核』である立方体の都が広がっていく。
(どうする、このまま落ちたらそれこそ……!
俺は神出来の『扉宮之鍵』を模倣できないから……)
『祇園宮』に落下すれば、出る手段はゼロに等しい。
そして神出来の『後遺症』も考えると長居はできない。
だが、無情にも『祇園宮』の風景は急速に広がり近づく。
遂には黒霧が『祇園宮』と衝突爆散し、八朝もそちらへ落下していった。
続きます




