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Case 09-1:一晩で作り上げる能力

2020年5月29日 完成

2020年7月16日 Case 09より分割完了

2020年1月26日 ノベルアップ+版と同期


 篠鶴七不思議というものがある。

 初出は数十年前の雑誌からであった。


 ライターが遊びのつもりで書いた7つの記事は

 今や篠鶴市のインフラとして『実体化』した


 そして、唯一の実体無しである『笑う卵(ヴィヒテル・ドライ)

 篠鶴七不思議の第四は完成間近なのであった……




【4月30日|(木)・時刻不明 篠鶴学園高等部?】




「案外簡単だったんだね、■■ちゃん」

「そうだね」


 三脚台の上で沸騰する水の上を踊っている卵を見つめる二人の少女。


 事前に聞いていた噂と違い気を張り詰める程のものでもなく、イスに深く座り込む。


「ねー、これで私達解放されるんだね」


 何気なく『解放』という言葉が呟かれる。


 咎める者はおらず、異様な雰囲気が立ち込める。


「そうだね!

 私は受験勉強、■■ちゃんは課題(ノルマ)から、ね」


 異能力者は篠鶴学園に通い、化物(ナイト)を安定的に倒すための技術や知識を教え込まれる。


 その際に期末考査として、課題(ノルマ)という3か月間の規定化物(ナイト)討伐数が設けられている。


 これを満たさないと問答無用で退学となり

 後は化物(ナイト)が蠢くこの町を彷徨うしかない。


 だが非能力者も3年すれば受験勉強に囚われる。


 この■■■■■(■■■■■■■)という少女の家は、受験勉強について常軌を逸していた。


「どうする?

 解放されたら何したい?」

「私は……今までの鬱憤を化物(ナイト)にぶつけるわ」

「えー!

 こういっちゃ悪いけど私の能力って弱いよ?」

「そうでもないよ」


 隣で虚ろに画面を表示し続けるRAT(端末)を見やる。


 本当にこれのお陰で今こうして七不思議の第四が完成されようとする。


「でも嘘みたい

 『近づけば死ぬ』って噂だったのに」

「そりゃそうでしょ

 もう妖精(・・)を手に入れているんだから」


 二人の少女は机の上のものを見て無邪気に笑う。


 篠鶴七不思議の第四番・笑う卵(ヴィヒテル・ドライ)


 これを分けて食べた者同士の魂を入れ替えるというアイテムである。


 これに関する噂は残り二つ。


  ①不用意に近づくと死に至る

  ②妖精だけが在り処を知っている


 その噂を踏破した証なのか、ビーカーの中の卵が笑うようにゆらゆらと煮られている。


「それでね、私はやっぱり色んなことしてみたい!

 えっと……友達作って、放課後だらだら過ごして、時には恋もして……」


 嬉しそうに語る■■■■(私の友達)を眩しく思う。


 車寺は篠鶴学園で座学の成績は極めて良い。


 弱い異能力さえなければ、楽して学園生活を謳歌できる実力者(陽キャラ)なのである。


 互いに異能力者、及び非能力者に向いていない者同士なのである。


『……!』

「駄目よ、動いたら叩き割る」


 虚空に話しかけるように、牽制を掛ける。

 その様子を(わら)うように卵が見つめ続けている。


 七不思議のライターは書き上げた数日後に行方不明になっている。


 不用意に近づくと死ぬ

 その信仰(うわさ)はこの事実に集約されていた。




【4月30日|(木)・10分休憩|(10:46) 篠鶴学園高等部・教室?】




「早速だけど『鱗』の情報取ってきたよ!」


 三刀坂(みとさか)の天真爛漫な一声で教師中の喧騒が止む。

 異能力者にとって『鱗』とはそれほどまでに貴重なアイテムなのだから当然である。


■■(samek)


 八朝(やとも)が『幻惑(samek)』を使用したのと同時にクラス中の人間が集結してくる。


「鱗どこにあったの!?」

「頼む! 何でもするから!!」

「ちょっと待て

 俺が先だろ、下がってろ!」


 クラスメイト達が『幻惑(samek)』に釣られているのを

 逃げ果せた八朝(やとも)三刀坂(みとさか)が遠巻きに眺める。


「……次からは筆談で頼む」

「……ごめん」


 三刀坂(みとさか)が顔を俯かせる。

 クラスではいつも明るい彼女だが、その実繊細で傷つきやすく落ち込む時も凄まじい。


「いや、俺もあそこまでは予想できなかった」


「これでおあいこって事だ」


 三刀坂(みとさか)が突如目を見開いてこちらを見る。

 背筋が凍り付くような静寂に耐えきれずこちらから口を開く。


「そ、それで情報ってのは?」

「えっとね、隣のクラスの車寺(くるまでら)って人なんだけど」


 その口振りから察した内容通りの話であった。

 即ち『困っている事を解決した報酬に鱗がある』というもの。


 いつも通りの依頼で安心する。


「そうか、それでいつ会うんだ?」

「今日のお昼休み」


 調子が戻ったのかとんでもない事を口にする。

 とはいえ、エリスがいるので部長に連絡するチャンスは無くはない。


「だ、駄目かな?」

「少し部長に連絡してみる……エリス?」


 エリスを呼んでみるが反応が無い。

 胸ポケットから取り出して画面を確認しても、いつものFUI(顔表示)も無い


 珍しく留守である。


「おかしいな……すぐに反応するんだが」

「どうしよ?」

「すまない、俺だけ遅れるって無効に伝えてくれ」

「うん、分かった!」


 取り敢えず今後の予定を組んでみる。

 真っ先に部長に報告して、全速力で待ち合わせの『天文台』へと向かう。


(……異能力の身体強化を使えば何とかなるか)



お久しぶりです、斑々暖炉(DappleKiln)でございます


何とか間に合った……

しかし2週間のブランクは説明できぬ

申し訳ない


今回のお話はある童話を知っていると

ちょっとだけ楽しめるのかもしれません


知らない人も、謎かけまみれの今回のお話を楽しんでいただけると幸いです

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