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Case 98-1:【該当データが存在しません】

2021年10月16日 完成(2時間以上遅刻)


 『四つ葉』の栞が壊れ、『七災』も風前の灯火となる。

 そして、断末魔の如く現れた黒霧の中で狂った夢が始まった……




【TIMESTAMP_ERROR ARRAYINDEX_OUTOFBOUNDS】




「ここは……」


 一人の覚醒を皮切りに次々と目を覚ましていく。

 周囲を見渡すと、どこにでもありそうな暗い暗い夜の校舎裏。


 少し木が多すぎるか、いや最大の相違点は花火である。


「……綺麗」


 その一瞬だけ、彼等は憎しみを忘れて花火の色彩に心を奪われた。

 何度か、花火の放つ地響きにも似た音で漸く八朝(やとも)も起き上がった。


「……」


 八朝(やとも)は、その風景全体を忌まわしく思っていた。

 自分が島民皆殺しへと傾いた決定的瞬間、それを敵と共に迎える。


 余りの運命の皮肉に吐き気を催すほどである。


「……そうだ、そういえば!」


 一人が八朝(やとも)に近づき胸倉を掴む。

 花火の幻想から醒めた青年が、八朝(やとも)を睨みつける。


「お前のせいで……化物(ナイト)が屋内にも……ッ!」

「……いや、大丈夫だ

 それに、もうすぐ救いの手がやって来る」


 八朝(やとも)が戒めを振り払う。

 それと同時に校舎裏の勝手口が開かれた。


 向こうに元の黄昏の篠鶴市の光景が広がっていた。


「先に出て確かめてくるといい

 化物(ナイト)がひたすら入水自殺を試みようしている筈だ」


 そう言って全員を出口へと促す。

 一人ずつ、八朝(やとも)の言っていた光景を目の当たりにしていく。


 その理屈は終ぞ口にはできない。


 それが可能だったのが神出来(かんでら)のみで

 彼女の異能力が『集合海』の核を経由するものだった事が幸いしたことも。


 核に一つ目を書き入れた事で化物(ナイト)は核を喰らおうとする。

 だが、その核に至る道は無く、手掛かりとなる『水』に向かって進もうとする。


 よって化物(ナイト)は永遠に自死を繰り返すようになった。


「……」


 放心状態の飼葉(かいば)は既に外の世界に。

 最後の一人を案内したところで、その彼に力一杯突き飛ばされる。


「……ッ! おい!」

「お前だけは許さない

 お前だけこの暗闇の中で死ね」

「ふざけ……」


 全力で扉に縋りつくも、閉める力の方が強かった。

 弱小異能力者一人と十数人分、後者に分があって然るべきである。


 扉に出口を阻まれ何度か叩くが無駄であった。

 そして扉は元の姿を思い出して枠から外れ倒れた。


 向こうには何も無い、ただ後ろで花火の音が上がり続ける。


「……クソッ」


 頭がおかしくなりそうになる。

 突然の心変わりにでなく、延々と再生されるあの記憶に似た景色に。


 もう3度目だ、ここまで自分の記憶をなぞって来るなんて。

 しかも、今回はよりにもよって最悪の取り合わせであった。


(俺は私利私欲で■■を助けたんじゃない

 ○○の魔の手から救い出そうとして……救い出そうと……)


 すると記憶遡行(ギフト)に匹敵する頭痛が襲い掛かる。

 何かを思い出そうとしている、その筈だった苦痛に新しい意味が追加される。


 段々と、自分の記憶が先程の『幻覚』へと置き換わっていく。

 ■■を助けようとした悲劇から、女の子を恐怖で支配する異常者のそれへと……


 まるで夢から醒めるように、段々と……


「ふざけ……るな……ッ!

 俺は鷹狗ヶ島の人間だ! 決して調布に居た事なんか……!」


 『島が死んだ瞬間』が『同門を皆殺しにする復讐』へと

 『四宮に救われた時』が『死して怨念と化した口減らし達の記録』へ


 そして、今回もそのように塗り替わっていく……


「はぁ……はぁ……!」


 単純に自分の記憶が変わっていくのは恐怖以外の何者でもない。

 だが、既に2回も体験した八朝(やとも)は未だに恐怖に屈していない。


 その理由は単純に『記憶としては諦めて記録として覚える』という痛み分け。

 そうすることで自分のアイデンティティーを保とうとしたが大きな問題が残る。


 記録には体験が無く、時と共に急速に風化していく事。

 本当に恐ろしいのは忘れてしまう事に他ならない。


 それが、自分が不殺を願った根源の所となると抗いたくもなる。


「……」


 塗り替わりは終わった。

 自分の中で大事な何かが欠落したかのように感じる。


 それは、自分をここに閉じ込めた身勝手な『彼』への殺意……


(違う! 俺は……ッ!)




貍ク縺丈シ壹∴縺(ようやく会えたよ)

 荵?@縺?§繧?↑縺(久しいじゃないか)?°蜈ォ譛(、八朝)




 花火の音が終わり、静寂の林の中で明朗に響き渡る音。

 振り向いた先には、今まで会った事のない、本当に誰か分からない『彼』。


 伸ばし放題の長髪から覗く眼に、陰惨な悪意を湛えていた。


「誰だ」

「驟キ縺?§繧?↑縺?(酷いじゃないか、)°蜷後§螟「縺ョ遨エ蜈?シ(同じ夢の〇兄弟だろ)溘□繧

 縺セ縺ゅワ繝シ繝ャ繝(まあ、個人的)?縺ョ荳サ縺ョ蛟倶コ(にハーレム野)コ逧?↓螟ァ雖後>縺(郎な君は大嫌)?縺代←縺ュ(いだけど)

「お前何言ってるのか分からんよ」

「縺昴l縺ッ螟ア遉シ縺励(それは失礼した)

 蜒輔?蠕碁⊆逞(僕の後遺症)?↑繧薙〒閠舌(なんで耐え)∴縺ヲ縺翫¥繧(ておくれよ)


 人語ですらない呻き声を流暢に話すと、途端に一礼してくる。

 そして、次の言葉だけは明瞭に聞き取ることができた。


「僕の名前は十宮義朝(とみやよしとも)

 『魔王討伐』に選ばれながら今は『強深瀬』で縛られる、しがない病人さ」


続きます

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