表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
524/582

Case 97-1:【該当データが存在しません】

2021年10月11日 完成(2時間以上遅刻)


 地下遺跡群探索は失敗に終わった。

 歩いているうちに体調を戻し、ひとまず太陽喫茶に帰る事にする……




【4月25日(土)・昼(16:39) 太陽喫茶・商業スペース】




「……陸は無視していいってそういう事だったのかい」


 目生(めのい)が噛み締めるようにそう吐き捨てる。

 それは地下遺跡群で襲撃してきた敵についての事である。


「俺もここまでは予想外だったよ

 篠鶴機関の秘密組織が名乗っているだけと思っていたが……」

「そりゃ無いよ、俺はちゃんと言ったぞ

 七災之陸(天底に沈む交差点)の直下に『アイリス社』があるって」


 八朝(やとも)達は互いに想定外を吐き出す。

 各々の常識に囚われて、証言を十全に信用しなかった結果ともいえる。


 次回以降は陸は壱と同じく『回避対象』となるのは言うまでもない。


「でも、あの人強かったよね」

「……ああ、死体漁り(コープスピッカー)を持ち出されないだけマシだったけどな」

「な……死体漁り(コープスピッカー)だと!?」


 目生(めのい)が『死体漁り(コープスピッカー)』という言葉に驚く。

 曰く、『アイリス社』がそれを持つとは思えないという。


「『アイリス社』って言ったら

 端末(RAT)を作り、無主の篠鶴市を十死の諸力(テロリスト)から守った英雄だぞ」

「……俺達からしたら、篠鶴機関に寄生する死の商人なんだけどな」

「いやいやいや、死体漁り(コープスピッカー)って十死の諸力(テロリスト)側の武器だぞ!」

「……」


 ここでも派手な相違点が顔を覗かせる。

 死体漁り(コープスピッカー)を巡って篠鶴機関と正反対の勢力に渡っている。


 どうやら、数年以上前から分岐している可能性がある。


「にしてもあの異能力、どこかで見た気が……」

「ああ、アレは部長の『輪郭切断(ギフト)』だ」

「えっ……」


 その一瞬の逡巡で、心裡で反論が潰されていく。


 持っていた槍斧(アーム)に見覚えがあり過ぎる。

 それに自分の騎士槍(アーム)と一合して、余りにも既視感のある衝撃だったと振り返る。


 だが、最後に八朝(やとも)に対して発動したあの瞬間。

 彼曰く『盲点』でなぞったのだろうと証言しているが、そんな力は知らない。


「で、でも……!」

「……残念だが『分析結果』がそうなんだ」




 使用者(ユーザー)里塚真白(さとづかましろ)

 誕生日:12月19日

 

 固有名(スペル)Cshblv(チェーブル)

 制御番号(ハンド)Nom.238107(ウィンネッケ4)

 種別(タイプ)  :T.AQUAE(上級・水属性)


  STR:5 MGI:2 DEX:1

  BRK:3 CON:2 LUK:4


 依代(アーム)  :魔眼(盲点)※

 能力(ギフト)  :輪郭切断

 後遺症(レフト) :不明


 備考:依代(アーム)の適合率が20%を下回っています




「そんな……」


 いがみ合ってたとはいえ、身内が敵という事実に三刀坂(みとさか)が呆然とする。

 八朝(やとも)にとっても衝撃は甚だしく、表情が晴れない。


「その、部長って奴は一人だろ?

 んでこっちは3人、万全ならどうにでもなるでしょ?」

「いや、相手も3人だ

 あの暗闇の奥に閃光弾を放ったもう一人が必ずいる」


 目生(めのい)の楽観に八朝(やとも)が水を差す。

 とはいえ、これも無しに脅威評価すれば今度は全滅の可能性すらある。


 相手は『アイリス社』で訓練を受けた3人。

 その練度、連携の的確さ……あの一瞬だけでも段違いである。


「……了解した、陸を徹底的に避けるルートでも考えとくよ」

「助かる」


 マグカップを置いて目生(めのい)だけ先に帰る。

 そして、残されたのは気まずい八朝(やとも)三刀坂(みとさか)


 それは最後に放った『自爆技』に因んでいる。


三刀坂(みとさか)、早速約束を破って……」

「一つ聞いてもいいかな?

 あの時、柚月(ゆづき)ちゃんが守ってくれたよね」


「もしかして、それをアテにしてた?」


 相変わらず、恐ろしく容赦のない質問を投げる。

 そんな真剣な目をしているのだから容赦のしようが無いのだろう。


 この世界で自分はあくまで『本物』の身体を預かる者。

 あの時、三刀坂(みとさか)の『彼に会いたい』という願いを叶えたが、それと話は別。


 どちらにせよ咎めを避けられないのなら、正直に答えるしかない。


「……ああ、寧ろ期待してた」

「うん、だったら今回はこれのお代で不問にしてあげる」


 三刀坂(みとさか)が空になったパフェの瓶に匙を入れる。

 それは太陽喫茶の中で最も値段の高いメニューで、2000円近いお値段。


 だとしても、関係の破綻に比べたらマシである。


「それは助かるが、だが……」

「べ、別にいいじゃん! 折角許そうとしてたのに……」

「いや、何も無いのなら良い

 本当に助かった、ありがとう」


 三刀坂(みとさか)からの視線を合わせて感謝を述べる。

 だが、彼女からの返しは不明瞭なほどに小さくて聞き取ることができない。


 だが、不思議と表情は失望や照れというよりも『自責』に傾いているような……


「それじゃあ、また明日も頼む」

「うん」


 そう言って三刀坂(みとさか)も帰宅していった。

 マスターにお代を払い、懐から塵が出てくる様子を体験することになった。


続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ