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Case 96-4

2021年10月9日 完成(2時間以上遅刻)


 4人全員揃ったところで早速篠鶴地下遺跡群に潜って調査を始める。

 道中は柚月(ゆづき)による的確な攻撃で安全が確保されていた……




【4月25日(土)・昼(13:42) 篠鶴地下遺跡群・中層】




「……」


 目生(めのい)が面食らった顔で柚月(ゆづき)の戦いを眺める。


 数体の包囲も一太刀、奇襲は返し刀で、閉所の長柄武器なのに隙が無い。

 瞬きの間に目生(めのい)の背後を取ろうとした化物(ナイト)の頭がぼとりと落ちた。


 間近で見る表情に、初対面のあの臆病さは微塵もない。


「……君たちってあんな感じなのかな?」

「まさか、柚月(ゆづき)は別格ってだけだ」

「そうそう、流石は『学園五指』って所ですよね」


 目生(めのい)が初見の言葉を飲み込めず曖昧な返事を返す。

 その間にも柚月(ゆづき)は特殊防御を持つ化物(ナイト)もバターの様に引き裂いていく。


 敵の攻勢が止んだところで質問を投げるも、柚月(ゆづき)八朝(やとも)の陰に隠れた。


「何か気になる事でも?」

「……いや、さっき人型の化物(ナイト)も斬ってたじゃん、怖くないかって」

「え、化物(ナイト)を見逃す理由なんて……」


 三刀坂(みとさか)が異能力者として当然の意見を挟んでくる。

 柚月(ゆづき)も返しが分からずに目を閉じて悩んでいる。


 という事で助け舟を出すことにした。


「|聞き方をを変えよう

 俺が化物(ナイト)になって突然襲ってきたらどうする?」




「え? 『まっぷたつ』にするけど……」




 柚月(ゆづき)がいつもと同じトーンで恐ろしい事を口にする。

 八朝(やとも)は自分の思い違いに驚愕するも、少し考えれば分かる事である。


 金鼬銀狐の片割れで妖魔殺しを重ねた過去も。

 『巻き戻す前』で対峙してきた時の本気の『気迫』も。


 恐らくは『そうさせない』というのが本旨なのだろうが

 100年前の常識という『乖離』がここで浮き彫りとなってしまった。


「そ、そうか……頼もしいね」

「……えへへ」


 無論、目生(めのい)すらも肝を潰して冷や汗をかいている。

 とはいえ、このままでは結束が瓦解しかねないので一言入れる。


「俺は殺されるのか、それはそれで悲しいな」

「だいじょうぶ、そうさせないためにがんばるから、そのためだから」


 取り敢えず、省略された言葉を引き出させる。

 それだけでも他二人の動揺を抑える事には成功している。


 そこから更に歩いて、唐突に目生(めのい)が振り返る。


「おっと、そろそろ伍の付近だ」


 どうやらここが空中交差点付近であるらしい。

 何の変哲もない通路で拍子抜けも良い所である。


「……本当か?」

「いやいや、よく見てみろよ

 この壁の文様、篠鶴機関付近もこんな感じなんだよ」


 目生(めのい)が埃を払って、壁の表面に注目させる。

 僅かに金属光沢している点で、それまでと異質なものだと直ぐに気付く。


「……成程な で、その心は?」

「ああ、この空中交差点の直下には『アイリス社』の本社があるって噂だ」


 曰く、端末(RAT)の座標情報を調べた人物がいたらしい。

 その結果として、空中交差点付近で(0,0)の値が与えられていたらしい。


 そこから、端末(RAT)開発者の『アイリス社』が関わっている、との理屈である。


「よく知っているんだな」

「まぁな、篠鶴市と共に誕生した土と木の迷宮遺跡

 こう、なんかクるものがあるじゃん、何かよく分からないけど……」


 八朝(やとも)は何となく熱気に押されて頷くも、女性陣は疑問を浮かべる。

 2vs2、形勢がどっちにも転びそうなのを悟って目生(めのい)が咳払いする。


「まぁ、土と木だけの遺跡に異質な金属のエリア……気にならないわけがない

 どう考えても篠鶴機関と同じように後発で整備したエリアなのだろうけどな」


 故に、2つ目のスポットであるここが『アイリス社』の社屋だという事である。

 流石にこれには三刀坂(みとさか)達も頷いている。


「それで、ここを迂回するんですよね?」

「いや、このエリアの先が伍の直下なんだ」

「……避けて通れないって事か」

「そういう事だ、何が起こるか分からないってだけ言っておくよ」


 流石にそれは目生(めのい)の考え過ぎと思うが、用心に越したことは無い。

 物陰に隠れながら、少しずつ進む中で有り得ぬ影がちらほらと見え始める。


(おいおい、嘘だろ……本当に人間がいるじゃねぇか)

(次からはここを経由しないルートを調べる必要があるな)

(次からで頼むよ、時間が無いんだ)


 目生(めのい)が面を食らった様子になっている。

 それでも努めて冷静に、人間の視界から逃れるようにじりじりと。


 そして、ようやく壁の感触から伍のエリアから脱したことに全員安堵した。


「やっと出れたー!」

「あんまり大きい声出すなよ、追手が来るぞ」

「いやいや、そんな訳ないでしょ

 それより柚月(ゆづき)ちゃんも疲れたで……」


 日常の会話があまりにも大きな剣戟音で強制終了する。

 (アーム)と衝突したのは、同じく真っ黒な『ハルバード』。


「……!?」


 八朝(やとも)が駆け寄る間に人影が距離を取る。

 柚月(ゆづき)(アーム)は既に罅がびっしりと入っていた。


■■(Ifebeim)! ■■(taw)!』


 この瞬間に八朝(やとも)柚月(ゆづき)の回復に。

 そして戦闘担当が三刀坂(みとさか)へと変わり、銃剣(アーム)を構える。


三刀坂(みとさか)! 見えないなら制圧しろ!」

「あ……そっか!」


■■(Libzd)!』


 三刀坂(みとさか)は人影が消えた方向に弾圧(グラムアンブラ)を発動する。

 超重力で地べたを這いずり回る(taw)の動向に注目する。


「俺は下がった方が良いよな?」

「いや、寧ろ離れるな

 お前については俺達で守るから心配するな」


次でCase96が終了いたします

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