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Case 96-1:【該当データが存在しません】

2021年10月5日 完成


 『鎮圧』の発動により異能力の圧政が無くなった。

 だが、それと共に『ある大事件』が秒読み段階にまで迫ってきている




【4月24日(金)・朝(7:00) 太陽喫茶・共用ダイニング】




『えー、防衛省の発表によりますと

 近日中に発動する『作戦』の日時について、4月27日と……』


 八朝(やとも)がテレビのニュースを食い入るように見ている。

 流されているのは八丈島沖に固定した『ミチザネ(アルキオネⅢ)』に対するものである。


 だが、八朝(やとも)はこの結末を知っている。

 予期せぬ攻撃で『作戦』が瓦解し、『ミチザネ(アルキオネⅢ)』が篠鶴市にやって来る事を。


 これまでの『世界』であれば対抗し得る存在が篠鶴市にいた。

 篠鶴機関、七殺(ザミディムラ)、紫府大星、鹿室(かむろ)……誰一人としてこの世界にいない。


「お前にしては珍しいじゃねぇか

 高校生で社会に目を向けるとは感心感心」

「……そういうもんじゃねぇよ」

「じゃあどうして見ているんだ?

 ■■に変えられないと咲良(さくら)が怒っているぞ?」


 その指摘で咲良(さくら)のふくれっ面の理由に気付いた。

 机の上のリモコンに手を伸ばすと、■■のあるチャンネルへと切り替える。


 切り替えた瞬間に■■のタイトルコールが始まった、間一髪であった。


「お前さん、まさか『作戦』が上手くいかねぇとでも思っているのか?」

「……そんなことは無い

 それにこの話はもう終わりだ」


 マスターに有り得ない『未来(ひげき)』の話をしても意味は無い。

 それよりも重大な問題である『七災鎮圧』について考えを切り替える。


(残り10日、それまでに弐・伍・陸……そして壱を)


 それでも『ミチザネ(アルキオネⅢ)』の話が追いすがって来る。

 そして、たった10日如きで残り四つを倒すのは無茶である事に行きつくだけ。


 『|七災之肆《嘲笑う卵の子攫い』を鎮圧してかれこれ4日経つ。

 それまでに得られた情報とは以下の通り、何の進歩もないものである。




  ①『七災之弐(鳥居印の怪異除け)』らしき存在はあるが、情報が足りない

  ②(空中交差点)(旧篠鶴学園)も侵入点が一切見つからない

  ③『七災之壱(渡れずの横断歩道)』に至っては最早不可能に等しい




「ほら、これでも飲みな」


 ふと、目の前に湯気の立った飲み物を用意された。

 濃い色からして珈琲なのだが、残念ながら八朝(やとも)の舌では飲めない。


 そこに、何本かのシュガースティックも用意される。


「糖分だ、糖分が全てを解決する

 無論、朝飯を残すことは許さないが、そんな顔をしたお前が悪い」


「さっさと飲んで、顔でも洗い直してこい」


 マスターの気遣いなのか押し付けなのか微妙に困る提案を呑む。

 食べ終わって、更に顔を洗い直して、頭の中がクリアになったことに気付く。


(……マスター、助かった

 悩む暇はない、出来るところから崩していく)


 八朝(やとも)の中で今後3日間の行動方針が定まる。

 今日中に『ある人物』と出会い、それ以降は篠鶴地下遺跡群に挑む。


 即ち一番情報がある『七災之弐(鳥居印の怪異除け)』から対処する事にする。

 そして、この『七災』の影響は、特に篠鶴高校であれば身近なものである。


(択は二つ、掌藤(たなふじ)箱家(はこいえ)

 『前の2月』では死んでいないから記憶は引き継いでいる筈)


 双方に共通するのは行動力である、特に後者には苦しめられた。

 理屈は不明だが、高校を裏から牛耳るに『七災之弐(鳥居印の怪異除け)』は都合がいい。


 何故ならそれは……


「ふうちゃん、だいじょうぶ?」


 柚月(ゆづき)が心配そうな顔で見つめてくる。

 ふと、地下遺跡群にも潜る必要があったことに意識が向く。


 丁度良く条件を満たした人物なので、彼女の目線までしゃがんで話す。


柚月(ゆづき)、伍と陸の侵入経路を探したい

 土日の間俺と行動してくれると助かるが、どうだ?」


 柚月(ゆづき)は花開いたような表情で何度も頷く。

 彼女がいるだけで道中の危険度は嘘のように下がる、有難い話である。


「そうか、ありがとう」

「うん! あ、あとみーちゃん(三刀坂)もだよね?」

「ああ、乗ってくれたらの話だがな」


「面白そうなはなししてますなぁ」


 ふと、出口に咲良(さくら)が潜んでいることに気付く。

 ひょっこりと咲良(さくら)がこちらに近づいてくる。


「それも『七災』の事だよね?」

「そうなのだが、面白そうってのは?」

「うん、たぶんだけど地下遺跡群に潜るんだよね?」

「ああ、そうだ」


「うちの生徒会に地下遺跡群のオタクがいるんだよね」


 咲良(さくら)がその人物の真似をする。

 どうやら副会長の目生(めのい)がそうであるらしい。


「調整してあげるけど、どうかな?」

「昼休みだけは外してくれ、別件がある」

「おっけー! まかされよー!」


 咲良(さくら)が慣れた手つきで端末(RAT)に入力する。

 彼女の作業が終了したタイミングで重要なことを訊いてみる。


「……それで、その見返りに俺は何をすればいいんだ?」

「そうだね……まぁ、そのときが来たらはなすよー」


 咲良(さくら)が悪戯っぽい笑みで二人の頭を撫でて去っていく。

 お互い何が起きたか分からずしばらくぽかんとしていた。

続きます

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